『トップガン マーヴェリック』(2022)若手パイロットのコヨーテ役を演じた際、熱心に撮影現場見学を続けていた姿が評価され、クリストファー・マッカリー監督から『ミッション:インポッシブル』シリーズにも引き抜き起用されたのがグレッグ・ターザン・デイヴィスだ。前作『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング』ではイーサン・ハントを追う諜報部員ドガ役でデビュー。新作『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』で出番を大幅に増やし、メインキャストの一人としてトム・クルーズらと共にプロモーション来日した。
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本作のツアーは日本が初の地で、さらに取材はTHE RIVERがトップバッター。つまり、デイヴィスが本作についてインタビューにて語るのはこれが初の機会となっている。朝一番のデイヴィスは陽気に登場し、カメラが回るまでは雑談に興じてくれた。「『サンダーボルツ*』は観ましたか?」とデイヴィスから尋ねられた。『トップガン マーヴェリック』で共演したボブ役のルイス・プルマンの活躍が嬉しくてたまらないのだ。
「観ましたよ。プルマンが素晴らしかった。彼に泣かされましたよ」と筆者が答えると、デイヴィスも嬉しそうだ。「最高の映画だった」と友人の活躍をたたえた。スマホを取り出し、「いいかな?」と筆者と記念動画を撮影し、自身のInstagramアカウントのストーリーに投稿した。インタビュー準備は万端だ。
※インタビューの様子はTHE RIVER公式YouTubeチャンネルにて動画公開中。
1993年生まれ、現在31歳のデイヴィスにとって、このツアーが初めての日本となった。滞在中、Instagramでは食べ歩きの様子を随時更新していたのだが、中でも気に入った食べ物は屋台のイカ焼き。「あんなイカは初めてです!イカフライは食べたことあるけど、あれは食べたことがない。めちゃくちゃ美味しかった!」と大絶賛だ。
来日セレブへのお決まりの質問でもある「好きな日本のアニメや漫画」について何気なく持ち出してみると、デイヴィスは予想以上の熱量で食いついた。「アニメの話しますか?」と、オタクスイッチが入る。「まず『犬夜叉』でしょ、『トライガン』でしょ。知ってます?それから『金色のガッシュ!!』」と止まらない。「アニメが大好きなんです。最近観たのは『BLUE EYE SAMURAI/ブルーアイ・サムライ』。最高だった!シーズン2も待ちきれません!」
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日本ではアニメグッズが買える店に行きたいという。「おすすめのお店ありますか?」との逆質問に筆者が「後で教えますね」と返すと、インタビュー終了後も「さっきのおすすめのお店教えてよ」と追撃質問されるほどだった。(後の写真撮影時に別室で再会し、きちんと伝えることができた。デイヴィスはきっちりとスマホにメモを取っていたのだが、無事に行けただろうか?)
自身が演じるドガ役について、デイヴィスは「純粋な心を持つ男」と表現する。「常に人のために行動し、正しいことを選ぼうとする。でも、その選択がみんなに受け入れられるとは限らない。それでも人のために正しいことをしようとする姿が、イーサンによく似ていると思います。『ファイナル・レコニング』ではある意味、他の人が疑問に思わないようなことに疑問を持つ。最後の試練に挑む。彼はどんな人間か?正しいことを望み、世界を救う手助けを望む善人です」。
新作『ファイナル・レコニング』ではドガも葛藤を克服する。「前作では迷いがありました。これは正しいことなのか?進むべき道なのか?そして本作では、前作のラストに問いかけたことに決断を下すのです」。
若きデイヴィスにとって、トム・クルーズは最高のメンターとなった。『トップガン マーヴェリック』の頃から憧れている。現場ではとにかく彼の姿を追いかけた。プレッシャーものしかかる仕事だが、「僕たちにはトム・クルーズというリーダーがいる」と安心感を覚えている。
アクション指導にも身を委ねることができた。「『トップガン』でも『ミッション:インポッシブル』でも、彼は僕たちに厳格なプログラムを用意してくださった。まずは飛行を、次に演技との同時進行をきちんとできるようにしてくれたんです。『ミッション:インポッシブル』でも、スタントと同時に演じられるようにできた。彼がスタントをやる姿を見るだけでも、すごいものがあります」。
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『トップガン マーヴェリック』では、自分の撮影がない日も現場に出かけ、クルーズを追いかけた。「彼を現場で毎日見ています。彼は最高の映画を作るという多大なプレッシャーと闘っています。そんな撮影の最中でも、彼はファンと交流する時間を作っています」と、偉大な先輩からはスターとしてのあり方も学んだ。「ローマでのことですが、ロケ撮影中に立ち止まって、側に集まっていたファンの皆さんに話しかけに行っていたんです。とても刺激を受けました。彼を手本として、人と接する方法を学んだんです。僕も同じやり方を取り入れようとしています」。
それまで大作出演の経験を全く持たなかったデイヴィスが急激にキャリアを成長させているのは、彼の“見て学ぶ”姿勢によるものだろう。与えられた環境を最大限活用し、その価値を深く理解する。本作『ファイナル・レコニング』でも、オフの日だろうが構わずに「とりあえず毎日現場に行く」という日々を過ごした。「マッカリー(監督)とトムという二人の達人を見て学びたいからです。お金を払ってでも得られないような学びです。学校では学べないような知識を、僕は得られたわけですから、とにかく恵まれていました」。
トム・クルーズという稀代の挑戦者の精神がデイヴィスにも乗り移ったようだ。前作『デッドレコニング』と本作『ファイナル・レコニング』の間、クルーズに教えてもらったスタントを自発的に続けていた。ダートバイク、ドリフト、スカイダイビング、マーシャルアーツなどだ。「一度やると、ヤミツキになるんです」とデイヴィス。休止期間中に練習を重ねたので、いざ『ファイナル・レコニング』の撮影が開始されると「よっしゃ、やるぞ!」と、心身ともに準備万端だった。