三菱一号館美術館(東京・丸の内)から、2025年度の展覧会スケジュールが発表されました。
2025年度は、「ルノワール×セザンヌ―モダンを拓いた2人の巨匠」「アール・デコとモード 京都服飾文化研究財団(KCI)コレクションを中心に」「清親から巴水まで―ミュラー・コレクションにみる浮世絵・新版画(仮称)」と全部で3つの展覧会を予定。そこで、各展覧会の概要や注目作品をまとめました。
三菱一号館美術館
所在地:〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-6-2
開館時間:10:00~18:00
※祝日・振替休日除く金曜、第2水曜、展覧会会期中の最終週平日は20:00まで
※入館は閉館時間の30分前まで
※臨時の時間変更の場合あり
休館日:毎週月曜(祝日・振替休日・展覧会会期中最終週の場合は開館)年末、元旦、展示替え期間
※臨時の開館・休館の場合あり
美術館公式サイト
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ルノワール×セザンヌ―モダンを拓いた2人の巨匠
2025年5月29日~9月7日
パリのオランジュリー美術館が、ルノワールとセザンヌという2人の印象派・ポスト印象派の画家に初めて同時にフォーカスし、企画・監修をした世界巡回展です。ルノワールの代表作《ピアノの前の少女たち》やセザンヌの代表作《画家の息子の肖像》をはじめとし、2人の巨匠による肖像画、静物画、風景画、そして、2人から影響を受けたピカソを加え52点の作品から、モダン・アートの原点を探ります。
また、この世界巡回展はオランジュリー美術館とオルセー美術館の協力により、ミラノ、マルティニ(スイス)、香港を経て来日し、三菱一号館美術館が日本唯一の会場となります。
ルノワールとセザンヌの交遊と合わせて、自在で多様な表現が生み出されるモダン・アートの誕生前夜に立つ2人の巨匠の、卓越した芸術表現を存分にお楽しみいただけます。
ピエール=オーギュスト・ルノワール《風景の中の裸婦》1883年 油彩・カンヴァス、オランジュリー美術館© GrandPalaisRmn (musée de l’Orangerie) / Franck Raux / distributed by AMF
ポール・セザンヌ《セザンヌ夫人の肖像》1885-1895年 油彩・カンヴァス、オランジュリー美術館 © GrandPalaisRmn (musée de l’Orangerie) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF
アール・デコとモード 京都服飾文化研究財団(KCI)コレクションを中心に
2025年10月11日~2026年1月25日
1920年代に世界を席巻した装飾様式「アール・デコ」。生活デザイン全般におよんだその様式は、「モード」すなわち流行の服飾にも現れました。ポワレやシャネル、ランバンなどパリ屈指のメゾンが生み出すドレスには、アール・デコ特有の幾何学的で直線的なデザインや細やかな装飾が散りばめられています。それは古い慣習から解放され、活動的で自由な女性たちが好む新しく現代的なスタイルでした。
2025年は、パリで開催された装飾芸術の博覧会、通称「アール・デコ博」から100年目にあたります。この記念の年に、世界的な服飾コレクションを誇る京都服飾文化研究財団(KCI)が収集してきた選りすぐりの服飾作品約60点を展観します。また、国内外の美術館所蔵の絵画、版画、工芸品などを加え、現代にも影響を与え続ける100年前の「モード」を紐解きます。
ツィママン/ラウル・デュフィ(テキスタイル)ドレス 1922年頃 京都服飾文化研究財団(KCI)所蔵 ©The Kyoto Costume Institute, photo by Takashi Hatakeyama
ジュール・パスキン《ギカ公女》 1921年 油彩/カンヴァス 72.5×60.0cm ひろしま美術館
清親から巴水まで―ミュラー・コレクションにみる浮世絵・新版画(仮称)
2026年2月19日~5月24日
最後の浮世絵師のひとりと呼ばれる小林清親が1876(明治9)年に制作を開始した『東京名所図』は、明治期の風景版画へ大きな変革をもたらしました。黄昏どきの表情や闇にきらめく光の様相を描いた作品群は「光線画」と呼ばれ、深い陰影により江戸の情緒まで捉えています。
このような視点は、失われゆく江戸の風俗を惜しむ人々の感傷や、それらを記録しようとする写真の意欲とも重なっており、同時代の浮世絵師たちが文明開化により変貌していく都市を、艶やかな色彩によって楽天的に捉えた開化絵とは一線を画するものでした。明治末期に浮世絵の復興を目指した新版画は、その技術ばかりでなく清親らが画面に留めようとした情趣を引き継いで、新しい日本の風景を発見しようとしました。清親から吉田博・川瀬巴水らに至る風景版画の流れを、アメリカのスミソニアン国立アジア美術館が所蔵するロバート・O・ミュラー・コレクションの作品によって辿ります。
川瀬巴水《春のあたご山》 1920(大正9)年 スミソニアン国立アジア美術館(Robert O. Muller Collection, S2003.8.623)
三菱一号館美術館の2025年度は、印象派/ポスト印象派、近代の服飾、浮世絵の系譜に連なる木版画と、いずれも過去に同館が強みを発揮してきた分野に光を当てた3つの意欲的な展覧会が予定されています。同館ならではのクラシカルな展示空間とそれぞれの作品がどのように響き合うのか、今から各展覧会の開幕がとても楽しみです。(美術展ナビ)