おしゃれなファッションがシニアの脳を動かし社会的孤立を防ぐ? 認知症への備え

認知症見守り

心と身体の健康につながる? 高齢者にこそおしゃれが必要
いくつになってもおしゃれを楽しむ人は、性別を問わず若々しく見えるものです。身だしなみを整えて清潔を保つことは、自分自身を価値ある存在として尊重するセルフエスティーム(自尊感情)を高めるだけでなく、生活における認知機能の維持や社会参加への意欲を引き出す一助となります。
こうしたことから、スキンケア、ヘアケアなどの「身だしなみ」、ファッションなどの「おしゃれ」に対して向けられるシニアの関心が心身の健康とどのように関係するのか、近年注目され、研究が進んでいます。
それに伴い、理美容サービスを提供する介護施設が増えてきました。何らかの美容サービスを導入する介護施設は、2021年から2025年で約13倍に急増したというデータもあります。現在は利用者の楽しみのひとつとして受け入れられ、広く浸透しつつあるようです。
「身だしなみ」と「おしゃれ」は認知症の早期発見における重要なポイント?

「身だしなみ」と「おしゃれ」。この2つは似ていますが、実際は少し異なります。「身だしなみ」の主な目的は他の人に不快感を与えないことであり、服装や化粧、ヘアスタイルなどを清潔に整えることです。一方で「おしゃれ」は、自分の好みや個性を大切にする行為であり、自分らしさや楽しさを表しているともいえます。
認知症の「早期発見」では、この身だしなみやおしゃれの変化が、重要な手がかりとなるケースがあります。例えば、気候に合った服装ができなくなる、汚れたままの衣類をずっと着ているなど、清潔感や服装に対する関心が薄れ、急に外見を気にしなくなるという変化は、認知機能の低下を示すサインのひとつとされています。
*参考:知っておきたい認知症の基本(政府広報オンライン)
また、身だしなみに気を使わなくなった結果、「外出を控えるようになる」「人と会う機会が減る」など、生活意欲や社会性の低下を招くこともあります。
内面や生活状況の異変を映し出すこうした変化は、日常生活の中において比較的把握しやすく、周囲の人が異変に気づくきっかけにもなります。
おしゃれへのチャレンジが脳の良質な刺激に QOLの維持や社会的孤立防止にも
身だしなみやおしゃれは、認知症を早期発見するカギになるだけでなく、認知機能の維持にも役立つと考えられています。
例えば、その日の装いを決めるには、天候を考慮して、気温に合った服を選ぶ必要があります。また、身だしなみやおしゃれは手指を細かく動かしながら次に何をすべきか考え、記憶を呼び起こすプロセスを伴います。衣服をきちんと整えたり、寝癖を直したり、髪をセットしたりと、当たり前として認識している日常的な作業が適度なトレーニングになるのです。
もし心身の機能が低下してセルフケアが難しくなったとしても、介助の工夫次第でおしゃれを楽しむことは可能です。
認知機能が低下すると、服を着る手順がわからなくなったり、たくさんの衣類から着るものを選べなくなったりするケースが見られます。そんなときは、衣類を着る順番に1枚ずつ手渡す、あるいは2種類のコーディネートを用意してどちらか好きなほうを選んでもらう、という方法で、本人の尊厳を守りながらおしゃれのサポートができます。
さらに、アメリカの研究では、新しいことや未経験の物事への前向きなチャレンジは、高齢者の記憶力や脳の活性化に役立つ可能性があると報告しています。
年を重ねてからのチャレンジは簡単ではありませんが、毎日の生活に密接にかかわっている、ファッションやスキンケア、高齢者にとって身近なヘアカラー(白髪染め)などであれば、男女を問わず、踏み出しやすい一歩といえるでしょう。
「仕事をしていた頃の延長でジャケットとワイシャツにモノトーンのボトムス、と同じようなスタイルになってしまっている」「シンプルなトップスにカーディガンを羽織り、スカートを合わせるのがいつものスタイル」というような場合は、まずはカラフルな靴下、帽子やストール、デザイン性の高い眼鏡といったファッション小物をプラスするおしゃれにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
さらに、顔まわりを華やかにする明るい色や柄物のトップスをチョイスしたり、若々しい配色のスニーカーを合わせるのもおすすめです。鮮やかなパンツを選べば、アクティブなイメージになります。「シニアファッション」という枠にとらわれず、孫の服を着てみたら思いがけず似合って気に入った、という高齢の方もいます。
また、白髪をすべて隠すのではなく、あえて活かす「グレイヘア」に整えたり、爪やすりで爪をきれいにしたりすることも、チャレンジしやすい身だしなみのひとつでしょう。
「もう歳だから…」「70・80代だから…」と思わずに、おしゃれという名の冒険をしてみたら、それが脳への刺激となるかもしれません。
おしゃれから生まれるコミュニケーションの好循環


