台北ファッション・ウイーク2026-27年秋冬から

台北ファッション・ウイークは2026-27年秋冬シーズンから、産業基盤のさらなる強化を目指し運営体制を刷新した。コンデナスト・タイワンから新たに運営を引き継いだのは、パブリックデザインを専門とする半官半民の機関、台湾デザイン研究院(TDRI)だ。台北市内屈指の乗降客数を誇るMRT中山駅をはじめとする公共交通空間や公共ピクトグラム、学校・公園のリデザインなど、都市生活の課題をデザイン思考で解きほぐしてきた集団であり、多様な産業へのコンサルティング実績も持つ。

TDRIが手掛けた台北の中心エリア中山駅

改修前は、動線の分かりづらさや商業ブースの分散などが課題だった

改修後の様子

ファッションとは異なる文脈から来たTDRIが舵を取ることで、サステナビリティへのアプローチも変わりつつある。張基義(チャン・チーイー)TDRI院長に、ファッション・ウイークとサステナビリティを接続するための青写真を聞いた。

PROFILE: 張基義/台湾デザイン研究院(TDRI)院長張基義/台湾デザイン研究院(TDRI)院長

PROFILE: ハーバード大学デザイン大学院修士、オハイオ州立大学建築学修士。台東県副県長、陽明交通大学建築研究所教授を経て現職。世界デザイン機関(WDO)元理事。デザインを起点とした国家発展・産業変革・社会変革の推進を一貫したテーマとする。2020年設立のTDRIは台湾初の国家級デザイン研究機関で、デザイン政策、公共サービス、産業イノベーション、社会デザイン、国際協力を主な領域とする

WWD:TDRIから見た台北ファッション産業の課題は?

張基義=台湾デザイン研究院(TDRI)院長(以下、張院長):台北には、クリエイティブなデザイナーも強い独自性を持つブランドも、すでに十分存在している。個々の課題というより、システム全体が整理されていないことが問題だ。今後の焦点は、そうした個々の創造性をいかに持続的な成長力へと変換できるか。ブランドストーリーの言語化、メディアへの正確な伝達、市場とのマッチング、長期的な商機の積み上げ——こうした要素がひとつの軌道に乗ることが必要だ。

WWD:産業を発展させるうえで、ファッション・ウイークの意義をどう捉えている?

張院長:台北ファッション・ウイークは、単に「ショーを成功させる場」であってはならない。各ブランドが成長段階に応じた支援を得られるプラットフォームへと転換させていく。国内により成熟したファッション環境を育てていく役割も大きい。長期的な成長のためには、海外からの評価だけに頼るのではなく、現地の市場、メディア、消費者、そしてサプライチェーン全体が一体となって産業の基盤を支えていく必要がある。踏まえ、今季はすでにショー以外のプレゼンテーションを含めブランドの見せ方を多様化した。また合同展示会場を設けて国内外のバイヤーや業界関係者との接点を拡大、さらにより一般消費者に近い施策としてマーケットイベントやショーのライブ配信エリアの設置なども行なった。

ファッション・ウイーク会期中、メインのショー会場の隣では一般消費者に向けたマーケットスペースを設けたマーケットイベントをけた

バイヤーや業界関係者向けの合同展示スペース

TDRIが考案した新たなロゴ

WWD:ファッション産業のサステナビリティを推進していくために、台北ファッション・ウイークをどう活用していく?

張院長:私たちはサステナビリティを、「環境配慮型の素材を使っているかどうか」という点だけで捉えていない。設計、生産、展示、流通、使用、そして再利用に至るまで、プロセス全体に関わるものだ。

今後は大きく3つの方向性を考えている。まず「具体化」。サステナビリティをスローガンで終わらせず、コレクション開発、生地選び、ショーの演出、コンテンツ制作、サンプル管理など、各プロセスにおいて何をどう変えればよりサステナブルになるのか、具体的な手法を提示していく。次に「プラットフォーム化」。ファッション・ウイークを完成品の発表会にとどめず、解決策を持ち寄り、新しいやり方をともに試す場へと変えていきたい。そして「包摂性」。サステナビリティは、資金力のある一部のブランドだけが取り組める課題にしてはならない。中小規模のブランドも段階的に参加できる仕組みが必要だ。

WWD:例えば、コペンハーゲン・ファッション・ウイークは、サステナビリティについての参加基準を設けて、ファッションウィークを「啓蒙の場」として機能させている。

張院長:コペンハーゲンは、とても参考になる事例だ。資源が集中した巨大ファッションウィークではない分、限られた条件の中で自らのポジションをどう築くかという課題は、台北と近い。特に興味深いのは、サステナビリティの基準を定めたことそのものではなく、ファッションウィークというプラットフォームに明確なガイダンスを持たせた点にある。つまり、単に美しい服を発表する場ではなく、「これからの産業において、どのような手法がより重要になっていくのか」を業界全体へ発信する場にした。

ただ、現段階の私たちにとってより合理的なアプローチは、いきなり高いハードルを設けることではない。まず「共通の指標、事例、ツール、そして伴走型の支援」を整備し、基礎をしっかりと築く。その上で、段階的に特定の要件を参加条件へ組み込んでいく。国際的なトレンドを見ても、今や「理念」を語るだけでなく、「どの手法が実際に実行可能で、検証可能で、着実に着地できるか」が問われている。

意識変容より重要なのは「仕組みのデザイン」

WWD:循環型ファッションへの転換において、現在直面している最大の障害は何だと捉えている?

張院長:意欲の有無ではなく、各工程がまだ十分につながっていないことだ。たとえば、素材情報の透明性が低いこと、上流と下流の協業が難しいこと、循環型の実践にかかるコスト問題など。だからこそ、私たちは「ブランドだけにプレッシャーをかける」のではなく、「プラットフォーム側で解決する」という考え方を採っていきたい。

重要なのは、成功事例を整理し、手法を明確にし、素材や製造に関する情報へのアクセスを容易にすること。そして、サステナブルな展示、リユース、リメイクといったアクションが、ファッション・ウイークというプラットフォームの自然な一部となるようにしていくことだ。「こうあるべき」と要求し続けるのではなく、まず「これならできる」という環境を整えることを優先したい。

WWD:サステナビリティは、消費者の意識改革に訴えるだけでは根本的な解決にはならず、いかに“仕組み”として生活に組み込むかが重要だ。

張院長:まさにTDRIが日常的に考えていることだ。広報や意識向上だけでは限界がある。結局のところ、自発的に参加してくれるのは、もともと意識が高い人に限られてしまうからだ。

私たちが重視するのは、制度、プロセス、情報、空間を先んじて設計し、人々が特別な努力をしなくても、より良い選択を自然に行えるようにすることだ。ファッション産業に当てはめれば、製品情報の開示、原材料の調達、回収・再利用、展示資材の再活用、ブランドとサプライヤーの連携——こうした取り組みが、将来的により自然に行われるようになることを目指している。本当に意味のあるサステナビリティとは、人々に我慢を求め続けることではなく、システムそのものをより合理的にすることだ。

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