通常は毎月末日に公開している、美術展ナビ×国立劇場コラボ連載「芸能資料定期便」。今回は番外編として、国立劇場おきなわ(沖縄県浦添市)で6月22日まで開催中の「国立劇場所蔵 上方浮世絵展」について、国立劇場調査資料課の中澤さんが展示準備を中心に「レポート」。普段は見られない展示の裏側もお楽しみください。

国立劇場おきなわでは、ユネスコの世界無形文化遺産「組踊」や、国の重要無形文化財「琉球舞踊」など沖縄の伝統芸能の公演を定期的に行っています。劇場内には沖縄の伝統芸能に関する資料等を中心に公開する展示施設があります。
2022年から23年にかけて国立劇場(東京)と国立文楽劇場(大阪)で開催した「国立劇場所蔵 上方浮世絵展」が、今年4月19日から国立劇場おきなわ(沖縄県浦添市)に巡回しています。(入場無料)

上方浮世絵は、大坂と京都で制作された浮世絵のことを指します。江戸の粋ですっきりとした画風と異なり、粘り強くまったりとした筆致が特徴です。国立劇場所蔵の浮世絵約9,000枚のうち、上方の版元や絵師による作品は約1,500枚に及び、国立劇場にしか所蔵されていない珍しい作品もあります。

本展は、上方浮世絵研究の第一人者である北川博子氏監修のもと、「濃いめ!上方の役者絵」、「推しの役者たち」、「動く舞台・魅せる演出」、「カタチでたどる」、「歌舞伎の文明開化」、「読む歌舞伎-絵入根本の世界-」といったテーマ別に展観します。

◇レポート 大阪で制作された独自の「濃い」浮世絵 「上方浮世絵展」国立劇場伝統芸能情報館(2022~23年開催)

さて、今回は東京から国立劇場の職員も沖縄に出向き、国立劇場おきなわの職員とともに展示の設営を行いました。
国立劇場おきなわに到着し、まずは浮世絵の額装です。いつもは業者さんにお願いしている作業ですが、今回は職員が額装します。

国立劇場ではブック型のマットを使っています。下のマットに浮世絵を取り外せるように固定し、窓のある上のマットで押さえ、額に入れます。今回の展示では24点の浮世絵を額装しました。

額装が終わるといよいよ設営です。ワイヤーフックに額をかけ、事前に作っていた展示図面を参考に大まかな位置を決めていきます。

大体の位置が決まったら、水平を取ります。微調整がたくさん発生するため、想像以上に大変な作業です…。

展示ケースの台にも浮世絵を置きます。斜めにした方が見やすいので、斜台の制作をお願いしました。

国立劇場おきなわの大道具さんに作っていただき、立派な斜台が完成しました!
これを展示ケースに入れ、浮世絵を置いていくと……

このようになりました!
このケースは全5章のうち第1章「濃いめ!上方の役者絵」。上方浮世絵らしい、「濃いめ」で色彩豊かな世界が広がります。

展示室中央にはのぞきケースを出しました。

のぞきケースに展示したのは絵入根本。絵入根本は、俳優の似顔で描いた挿絵を歌舞伎脚本に入れ、読み物として出版したものです。
今回の展示では絵入根本も含め、44点の資料を展示しています。

沖縄では浮世絵や歌舞伎を鑑賞する機会が少ないといわれており、浮世絵をこの規模で紹介するのは国立劇場おきなわでは初の試みです。
沖縄にお住まいの方、沖縄にご旅行予定の方、ぜひ国立劇場おきなわに足をお運びいただき、色鮮やかでまったりした上方浮世絵の世界をお楽しみください。(国立劇場調査資料課 中澤麻衣)

関連イベントとして、5月19日(月)14時から、国立劇場おきなわ小劇場で映像鑑賞と講座「上方歌舞伎の浮世絵」を開催予定です。本展監修者の北川博子氏が国立劇場所蔵上方浮世絵コレクションの魅力を語ります。

また、展示資料を含む解説付きの名品100点が掲載された図録『国立劇場所蔵 上方浮世絵展』は、国立劇場おきなわチケットセンターおよび美術展ナビオンラインストアで購入できます。ジャパンサーチのギャラリーでも、国立劇場が所蔵する上方浮世絵の一部が見ることができます。

令和7年度第1回企画展「国立劇場所蔵 上方浮世絵展」

会場:国立劇場おきなわ 1階 資料展示室
(沖縄県浦添市勢理客4-14-1)

会期:2025年4月19日(土)~6月22日(日)

休室日:なし

開室時間:10:00~18:00 ※夜公演の際は、閉館まで開室

入場料:無料

主催:公益財団法人国立劇場おきなわ運営財団 共催:独立行政法人日本芸術文化振興会(国立劇場)

国立劇場おきなわ公式サイト(https://www.nt-okinawa.or.jp/)

◇芸能資料定期便 最新回はこちら↓

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