[Book Review 今週のラインナップ]
・『サルとジェンダー 動物から考える人間の〈性差〉』
・『点字新聞が伝えた視覚障害者の100年 自立・社会参加・文化の近現代史』
・『陽だまりの昭和』
『サルとジェンダー 動物から考える人間の〈性差〉』フランス・ドゥ・ヴァール 著/柴田裕之訳(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)
評者・医療社会学者 渡部沙織
類人猿やその他のサルなど霊長類を研究対象とする動物行動学者が、性差をテーマに執筆したのが本書だ。
男性優位は自然の秩序か? 霊長類の性差を再考する
著者自身も警鐘を鳴らすように、かつて類人猿のジェンダー役割に関する行動研究には、人間社会の家父長制ステレオタイプを強化し不平等を擁護する、オス優位の考え方が投影された。動物の行動を引き合いに出した、男性=オスのボスによる支配で動物の集団生活が成り立つ、という言説は、2000年代に至るまで欧米社会の知識人の間に広まっていた。
近年、ジェンダー平等の影響を受けて注目の対象となっているのがボノボだ。チンパンジーとボノボは双方が遺伝的にヒトに極めて近い類縁種だが、行動は大きく異なる。チンパンジーは、縄張りを持つオスが群れの序列の上位に位置し、攻撃性が際立つ。オス同士が殺し合うことも稀(まれ)ではない。それに比べて、ボノボの行動と彼らの社会は平和そのものに見える。
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