【光る君へ】15話 まひろが写本した漢詩と定子の繋がりは?紫式部は女友達が多かった?源氏物語・枕草子・シナリオ解説

おつかれ様です
シネマリンです
このチャンネルでは
大河ドラマ光る君への
シナリオ解説
登場した源氏物語
和歌漢詩等の
文学作品をひも解き
ドラマをより深く
楽しめる情報を
お届けしています
それでは早速
今週の光る君へ
第15回
おごれる者たちを
振り返ってまいりましょう
前回に続いて
内裏では道隆の暴政が
更にエスカレート
しています
気の知れた
公卿の位を上げる
中宮が暮らす
登華殿の装束や室礼を
公費で賄うなど
摂政関白として
権力を振りかざし
道隆は自分の利のために
政を進めます
目の上のたんこぶ
一条天皇の母詮子は
内裏の外の職御曹司へと
遠ざけました
すれ違いざま
詮子に内裏での
長年の苦労をいたわる
言葉をかける
道隆でしたが
詮子は
心にもないことをと
半分呆れ顔でした
一方続く場面で
道兼から
心にもないことをと
言われたのが
道長でした
亡き父兼家に
言われるままに
汚れ仕事を
務めてきたのに
関白になれず
自暴自棄になった
道兼
自分はもう死んだも同然
摂政の道隆
兄でもある道隆ですが
その首を取ったら
未練なくこの世と
おさらばできると
穏当ではありません
そんな道兼に
まだこれからでは
ありませぬか
兄上は変われます
変わって
生き抜いてください
この道長が
お支えいたしますと
力強い言葉を
かける道長
道長の嘘偽りない言葉が
道兼の心に届いた
シーンでした
姉兄からの
心にもないことをという
フレーズを軸に
道隆と道長という
キャラクターを対比し
それと同時に
2人が相対する
勢力であるという構図を
視聴者に直感的に
伝えるという
大石さんの
脚本の妙でした
今回注目したいのは
まひろが写本していた
白楽天の漢詩
琵琶行です
長恨歌などと並ぶ
白楽天の代表的な作品で
平安貴族の間では
常識レベルでよく知られた
作品でした
この詩の内容ですが
季節は
今回のドラマと同じく秋
ある月の夜
白楽天は
かつて長安の都で
琵琶の名手と謳われ
いまは零落した
つまり
落ちぶれてしまった
女性に出会います
彼女の琵琶の
見事な演奏の
描写に続き
彼女の不幸せな
身の上話が
語られます
この時白楽天は
長安の都から
辺境の地に
地方官として
左遷された身
落ちぶれてしまった
女の境遇に
自分の境遇を
重ね合わせ
また美しい
琵琶の音を聴いて
白楽天が涙を流した
という内容です
紫式部は
源氏物語明石の帖で
この琵琶行を
引用しています
帝に入内する
予定のあった
朧月夜と源氏が密通し
その不祥事から生じた
失脚の危機を
回避するため
都から須磨へ
一時退去した
光源氏は
流れ着いたその地で
明石入道に
出会います
この入道が源氏に
自分の娘明石の君について
それは美しく琵琶を
奏でるのですよと
紹介する時に
この琵琶行が
引用されます
源氏が都から地方へ
流れ着いた先で
美しい琵琶を奏でる
女性に出会う
というのが
琵琶行の白楽天に
重なっていて
ここでこの漢詩を
引用するというのは
完璧にマッチ
してるんですよね
一方今回のドラマで
まひろはなぜ
琵琶行を写して
いたのでしょう
まひろはまだ何かで
人生の高みに登った
ということもないですから
この詩にある
落ちぶれてしまった
もの悲しさという部分に
共感しているわけでは
ないと思われます
この琵琶行
女がまだ若く美しく
人気の琵琶弾きだった時代
ただぼんやりと
毎日を過ごしていく内に
いつか年も取り
人気も衰えてきて
零落していったという
一節があります
また女の奏でる
琵琶の音は
志を得られぬ
身の上を訴えるかのようだ
という一節もあります
周りで弟惟規が
寮試に合格して
擬文章生になったり
ききょうが
出世していく中で
自分一人置いて行かれて
しまったように
感じているまひろ
これだという
自分の志を
見つけることもできず
一人立ち止まっている焦り
焦燥感というところで
まひろは琵琶行の女に
自分の心境を
重ねているのでは
ないでしょうか
そして今回出てきた
この琵琶行
実はまひろではなく
むしろ定子
そして中関白家にこそ
この詩にある
盛者必衰の
もの悲しさが
重ねられているように
私には思えて
なりませんでした
まずドラマの流れを
思い出して
もらいたいのですが
まひろが
琵琶行の女のように
弟惟規の前で
琵琶を弾く
琵琶を弾く
まひろから
横笛を奏でる
一条天皇
そしてそれをうっとりと
見つめる定子に
シーンが
切り替わりました
その後
高階貴子が定子に
後宮としての
心構えを指導する
その後
ききょうがまひろに
定子に仕える
ことになったと
報告しに来る
くだりがあり
そしてまひろが
琵琶行を写本する
という流れでした
当時の貴族の間で
常識レベルの
教養だった
琵琶行
もちろん枕草子にも
琵琶行が引用される
場面がいくつか
出てきます
その一つがこちら
月の明るい夜に
中宮定子のサロンで
定子が女房達と
おしゃべりしている中
清少納言は静かに
控えていました
そんな彼女に定子が
何か話してちょうだい
寂しいからと
声をかけると
清少納言は
秋の月の心を
じっくりと
眺めているので
ございますと
返します
定子も
そうも言えるの
でしょうねと
応えたという
場面です
清少納言が答えた
秋の月の心
という言葉は
琵琶行の
女が琵琶を
奏で終えると
辺りはしんと
静まり返り
川の中に
秋の月が光るのを
見るばかり
という一節からの
引用です
なぜここで清少納言は
琵琶行を
引用したのでしょう
皆さんご存じのように
今ドラマでは
栄華を誇る
中関白家ですが
これから没落していく
運命にあります
一度は圧倒的な
華やかさを誇った
中宮定子の
サロンですが
道長に権勢を押され
零落していく
彼女たちの状況は
琵琶行にぴったり
重なるものでした
枕草子に描かれた
この夜
定子たちは
この激動の時期に
訪れた
束の間の平穏な時を
大切に楽しもうと
していたのかも
しれません
だからこそ
琵琶行を引用した
清少納言に定子は
そうも言えるのでしょうねと
しみじみ感じ入って
答えた
こんなふうに読むと
とても豊かな場面です
清少納言が中宮定子の
サロンでの日々を
綴った枕草子ですが
この随筆は
中関白家が没落
していった
という事実を
微塵も感じさせない
内容となっています
そこに描かれた
中宮定子のサロンは
ただキラキラと
輝いています
清少納言は
定子を襲った
数々の悲劇
悲しみに耐えた毎日を
ひた隠しにし
彼女の素晴らしさを
世に知らしめるために
枕草子を書きました
そういった意味で
枕草子は
定子と清少納言の
シスターフッド
女性同士の強い絆に
支えられた作品であった
と言えるんです
今回15話で描かれた
定子とききょうの
初対面
定子の高貴さ
美しさに
衝撃を受ける
ききょうの表情は
インパクトが
ありましたね
これからの2人の
生涯にわたる強い絆を
予感させる出会いと
なりました
一方で今回は
まひろとさわの
熱いシスターフッドも
描かれました
 
私たち
このままずっと
夫を持てなければ一
緒に暮らしません
石山寺では
殿御との縁ではなく
私たちの末永いご縁を
お願いしましょうよ
実は紫式部が
自ら編んだ家集
紫式部集には
男性と交わした
和歌よりも
女友達と交わした
和歌の方が
多く収められています
例えば
紫式部の有名な和歌
めぐりあひて
見しやそれとも
わかぬまに
雲がくれにし
夜半の月かなは
一見恋人に宛てた
歌のように見えますが
実際は親しい女友達へ
宛てたものでした
また紫式部は
周りの女友達から
頼られ
悩み相談を受けることも
多かったようです
ある時は
夫の地方赴任に
付いていくかどうか
悩んでいる友人から
悩み相談されました
この悩み相談が
和歌の応酬で
されているのが
さすが
平安時代だなって
思います
この子
悩んでいるけど
下向する以外ないって
本当はわかってるんじゃ
ないかな
友人の心の機微を
感じ取った
紫式部は友人に
夫に付いていく
ことを勧め
彼女の背中を
押してあげます
きっと紫式部は
若い頃から
相手の心の機微が
わかる人だった
のでしょう
残っている記録から
見えてくる紫式部は
男性には割と
淡白に接する一方で
男性より弱い立場にある
女性に対して
思いやりをもって接する
愛情深い女性です
彼女の人生は
女性同士の絆
豊かなシスターフッドに
支えられたもの
だったのかもしれません
さて今回第15回は
ラストに
非常に重要な
シーンがありました
石山寺で
蜻蛉日記の作者である
藤原道綱母こと
寧子に
偶然出会ったまひろ
寧子がまひろに
語った言葉が
私は日記を
書くことで
己の悲しみを
救いました
というものでした
まだ若いまひろですが
その半生を通して
すでに母の死
直秀の死
道長との実を結ばぬ恋
民をないがしろにする
政への憤りなど
抱えきれぬほどの
悲しみを
経験しています
いずれ源氏物語を
執筆することになる
彼女にとって
この寧子の言葉は
運命的なものと
なっていくのでは
ないでしょうか
寧子が兼家の妾として
経験してきた
苦しい思いを
作品に昇華した
蜻蛉日記
結果それが
後の世にも残る
文学作品となりました
そんな寧子の言葉が
まひろの進むべき道を
照らし出すというのは
非常に説得力のある
素晴らしい脚本でした
財前直見さんが
演じられた寧子の
重みのある言葉が
素晴らしかったですね
しかも
石山寺というのは
紫式部がここで
インスピレーションを得て
源氏物語を
書き始めたという
言い伝えが
残っている場所です
そういった意味でも
まひろがこのお寺で
運命的な言葉を
授かるという筋書きは
巧みなものでした
史実としても
紫式部が源氏物語を
書きはじめた時
彼女は夫を亡くし
娘を一人抱えた
シングルマザーでした
家集紫式部集によると
母姉親友と
身近な人を次々亡くし
その挙句
夫にも先立たれ
深い悲しみを経験した
紫式部は
人生を鋭く深く
見つめる人間に
なっていたといいます
そんな彼女が
悲しみを癒すために
はじめたことこそ
物語を書くという
ことでした
紫式部は
光る君へで寧子が
まひろに告げた言葉
そのもののような文章を
その日記に
綴っています
物語は
取るにたりないものだが
私にはそれを
話題に話せる
友達がいた
私はただこの
物語というもの
ひとつを素材に
様々の試行錯誤を
繰り返しては
慰み事に
寂しさを紛らわした
石山寺詣での前に
私たちの末永いご縁を
お願いしましょうと
言い合って
いたように
強い絆で結ばれた
まひろとさわでしたが
道綱のとんでもない
やらかしによって
その関係性に
若干ひびが入って
しまいました
ちなみにこの
男が夜這いに
やって来て女性を
間違えるという
このお話は
源氏物語の
空蝉帖にある
エピソードですね
石山寺からの帰り道
取り乱したさわが
走り着いた川辺で
一行が目撃したのは
疫病で
死んでしまった
人たちの遺体でした
実資が
内裏の中が乱れれば
世も乱れると
言っていましたが
この言葉が
予言のように
当たってしまいました
この疫病が
内裏の政にも
影響を与えるのか
そして
まひろや道長の運命に
どんな影響を与えるのか
世の中が不穏に
なってきましたが
次回のエピソードも
ドキドキしながら
待ちたいと思います
これからも
できる限り毎週
光る君への動画を
投稿していきますので
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お待ちしております
今回も最後までご視聴
ありがとうございました
それではまた次の動画で

大河ドラマ『光る君へ』第15回「おごれる者たち」をネタバレで解説します。

●取扱い作品
大河ドラマ「光る君へ」(2024年)
主人公は紫式部(吉高由里子)。 平安時代に、千年の時を超えるベストセラー『源氏物語』を書き上げた女性。©NHK
公式サイト:https://www.nhk.jp/p/hikarukimie/ts/1YM111N6KW/

●参考文献
中国語学習サイト「中国語スクリプト」 http://chugokugo-script.net/
道長ものがたり 「我が世の望月」とは何だったのか ― 山本淳子 朝日新聞出版
紫式部ひとり語り (角川ソフィア文庫) ― 山本淳子 KADOKAWA
平安貴族サバイバル ― 木村 朗子 笠間書院

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8 Comments

  1. 千年の時を軽々飛び越えて今も読み継がれる文学作品の作者達が、実際にはどんな関係性を築いていたのかは知りませんが、偉大な作品が産まれる瞬間に立ち会っているかのような感動があります。
    書くことで自分の悲しみを救う、と言うのは今回の大河ドラマでのテーマなのでは、なんて思いました🤔

  2. 琵琶行の詩の引用に、中宮定子の運命に対する暗喩が込められてたのですね。
    いつも鋭い着眼点に感心することしきりです😊
    (上から発言お許しください🙏)
    「光る君へ」は紫式部主人公のドラマなので、清少納言がどのような気持ちから「枕草子」を書くことになったのかは詳しくは描かないでしょうね。
    いつか清少納言と中宮定子、中関白家を中心とした枕草子ドラマを制作してほしいなと思ってしまいます。

    次回の動画も楽しみにしています。
    ありがとうございました😊

  3. 歴史好きです。
    分かりやすく解説してあるのでたのしいです。
    学生の時に知っていたら、もっと興味深く勉強できたかと思っています

  4. 紫式部は気難しくてネガ思考、ちょっと陰険なとこもあるイメージ(特に清少納言への悪口がインパクトあってw)でしたが
    和歌や逸話や紫式部日記の内容を見ていくと、女性同士の交友に長け、シスターフッドの精神性が強そうな一面も感じられますね。
    この根暗さと愛嬌をあわせ持った雰囲気、親しくなった人との繋がりを大事にする気質を、ドラマのまひろちゃんというキャラは
    うまく体現してるなと思います。

  5. シネマリンさんの的確でとても文学的な解説は落ち着いた穏やかな語り口と音楽で心に深く染み入ります。
    ドラマの解説チャンネルでこんなにも癒されるなんて思ってもみませんでした。
    これからも奥深い解説楽しみにしています。

  6. 光る君へ を見るたびに、出てくる和歌や漢詩の解釈が気になって仕方なく、ドラマが終わる度にネットで調べようとしていましたが、まとめてあり、分かりやすく、とても感激しました。写本の内容まで分かり、ドラマを何倍も楽しめます🙇

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