東京都稲城市にあるコーチャンフォー若葉台店。撮影:三ツ村崇志
「うちは書店ではないんです」
東京都稲城市・若葉台駅から徒歩数分の場所にあるコーチャンフォー・若葉台店を運営する、リラィアブル社で取締役専務を務める佐藤唯人さんは、Business Insider Japanの取材にこう話す。
コーチャンフォーとは、北海道釧路市に本社を構えるリラィアブル社が運営する、書籍や文房具、CD/DVD、カフェなどが混在した「大型複合施設」だ。
1997年に1号店(北海道札幌市清田区美しが丘)を開業すると、その後道内を中心に拡大。若葉台店は2014年に東京初の店舗としてオープンした。2022年にはつくば市にも展開し、現在全国で10店舗運営している。
「書店ではない」と言いつつも、この春には若葉台店で実施した岩波文庫やちくま新書など、出版社にある新書の在庫を全て揃えた“攻めた”書棚作りがSNSで大きな話題に。関東圏でも知る人ぞ知る存在になりつつある。
さらにさらに、本気の本気の本気、出しました。岩波新書、岩波ジュニア新書、出版社在庫全点揃えました。
岩波文庫、岩波少年文庫、岩波新書、岩波ジュニア新書の『出版社在庫全点』がコーチャンフォー若葉台店に揃いました。
知のストリート…いいえ、『知の海』に
飲み込まれてください。 pic.twitter.com/3TEza8Aeyx— コーチャンフォー📚️若葉台店@東京 (@cf_wakabadai) April 27, 2026
出版不況が叫ばれるなかで、経営面でも健闘している。2021年度に141.4億円だった売上高は、2025年度には156.3億円と緩やかに伸び続けている。同社のあり方は、書店の生存戦略における一つの答えを提示してくれているようにも思える。
都内に存在する「北海道モデル」の店舗
若葉台店の中に入ると、広々とした店内の左右に書籍売り場と文具売り場が広がっていた。撮影:三ツ村崇志
コーチャンフォー若葉台店は、京王相模原線若葉台駅北口から歩いて数分。駅近ではあるが、「郊外のロードサイドに広々とした駐車場を構える大型店」という北海道で培われた成功パターンは崩さない。立体駐車場の収容車数は605台。売り場面積も約2000坪(約6600平方メートル)とサッカーコート1面分ほどの広さがある。
店舗の約半分が書籍売り場で、蔵書数は日々変動するものの取材時は約60万点。2026年3月に開業して話題となった三省堂神田神保町本店の約50万点とほぼ同規模だ。書籍以外にも、「文房具」とくくるには幅広すぎるラインナップの文具売り場や、今どきめずらしいCD/DVD売り場を設置。さらにカプセルトイコーナーや北海道の御当地商品を取り扱う食品売り場、さらにフランチャイズで自社運営するドトールも併設されていた。
コーチャンフォー若葉台店の書籍売り場。店内に入ると、奥まで広がる書棚にまず圧倒される。撮影:三ツ村崇志
北海道・札幌市のベッドタウンである江別市で育った筆者も、かつてコーチャンフォー1号店美しが丘店によく足を運んでいた。
巨大な駐車場に圧倒的な広さの店内。「欲しい本が必ず見つかる」期待と、棚を眺めているだけで新しい世界に出合えるようなワクワク感——。筆者にとって、当時から「なんでもあるお店」として、休日に親に連れられていく“レジャー施設”のような存在だった。
若葉台店に足を運んだ際にも、「都内でここまで同じモデルでやり切れるのか」と素直に驚いた。
郊外の大規模複合店「需要がある」と確信
文具売り場には筆記用具やペンケース、便箋といった文房具だけではなく、画材やキャラクターグッズ、プラモデル、レザー商品など、ラインアップは多岐にわたる。撮影:三ツ村崇志
「欲しいものが全てある、お客様のニーズにしっかり応えられるような店舗を作りたい」
この思いが大型複合店としてのコーチャンフォーの原型だったと佐藤さんは言う。店舗づくりにおいては、親子3世代をターゲットにすることを意識してきた。
店名の由来は、「4頭立ての馬車(coach and four)」。書籍・文房具・音楽(CD/DVD)・飲食の4事業を4頭の馬に見立て「それぞれがしっかり事業として立ち上がり、4頭の馬が馬車を引っ張っていくモデル」と佐藤さんは説明する。これが事業としての柔軟さ、リスク分散にもつながった。
「開業当時から、自分たちのことを本屋とは言わないようにしていました。本屋と言ってしまうと、どうしても『本を買いに行くお店』になってしまいます。本屋でもあるし、文房具屋でも、カフェでも、今では食品を置いている北海道物産店でもあります。それぞれが独立して店舗として成り立つ形を取っています」(佐藤さん)
いずれもテナントとして誘致するのではなく、仕入れから販売まで自社事業として展開する。
若葉台店に併設されるドトールをはじめ、各店舗にあるカフェも基本的にフランチャイズで自社運営している。「その方が収益性が高いから」(佐藤さん)と理由はシンプルだ。自分たちで運営しているからこそ、売り場の増減や店内クーポンによる相互送客など、「複合店」の強みを最大限生かせる。
来店動機を多角化することで集客を増やし、本を買いに来た客が文具やカフェも利用する構造がコーチャンフォーの成長を支える強みだ。
札幌市北区にあるコーチャンフォー新川通り店。全店舗の中で最大の売場面積を誇る。札幌の中心部から少し離れた場所に立地している。駐車場は全780台分を完備。道内では札幌市内に3店、釧路に2店。旭川、北見、根室に1店ずつ展開している撮影:田中真紀子
書店やカフェなど、個別に見れば大都市ではどこかに必ずあるお店ではある。ただ、1997年に1号店である札幌・美しが丘店を開業すると、2001年には釧路店、2004年には札幌2号店となるミュンヘン大橋店と店舗を増やしていくなかで、「郊外の大型店」への確かな需要を実感した。
北海道以外でも同じモデルが成り立つのではではないかとの仮説から、2014年の東京進出へ踏み切った。若葉台店を開業する際には、通路の幅こそ多少狭くしたものの、店舗運営の基本的な考え方はほとんど変えなかった。
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本屋なのに、食品やカプセルトイ売り場も
