円安や国際情勢の影響で、海外旅行のハードルが高い今、今年のゴールデンウィークは、家で韓国ドラマに浸ってみてはどうだろう。とくに、思いきり涙を流せる作品に身を委ねてみると、観終わったあとに、意外なほどに心がすっきりするはずだ。そんな“涙活”にぴったりな号泣必至の作品を、今回は筆者の主観たっぷりにお届けする。
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涙活とは
涙活とは、ドラマや映画などを通じて意識的に涙を流し、気分を整えるセルフケアの一つだ。涙を流すことで、緊張を司る交感神経から、リラックスを促す副交感神経へと切り替わりやすくなりる、心身の緊張をやわらげる効果が期待されている。
なみだ先生こと感涙療法士・吉田英史氏は自身のサイトで涙の効用として、「涙が一粒でも流れた時点で副交感神経が優位になり、脳はリラックス状態へと移行する。蓄積したストレスがリセットされ、その後もしばらくはストレスが溜まりにくくなる」と述べている。(参考:『なみだ先生~感涙教室~』)
日常的に感情を解放する機会が少ない現代において、意識的に涙を流す行為は、シンプルでありながら理にかなったストレスケアといえる。
ゴールデンウィークの涙活におすすめの作品
ひと口に泣ける作品といっても涙の質はさまざまで、切なさに胸を締めつけられる涙もあれば、温かさに包まれる涙もある。作品ごとに異なる感情の揺らぎを味わいながら、自分に合った涙のかたちを見つけてほしい。“涙の種類別”という視点で、涙活推奨作品を厳選した。
『おつかれさま』(Netflix/全16話)
三世代の親子の結びつきに「嗚咽」
【あらすじ】
済州島を舞台に、1950年代から現代まで三世代の人生を描くヒューマンドラマ。海女の娘エスン(IU)は、詩人を夢見る文学少女。過酷な現実に直面しながらも、その聡明さで人生を切り開こうとする。幼なじみのグァンシク(パク・ボゴム)は、不器用ながらも一途に彼女を支え、唯一最大の理解者として寄り添う。
(画像=Netflix)
【涙ポイント】
筆者はIU出演作と聞いただけで号泣必至と身構え、当初は視聴をためらうほどだった。案の定、毎話泣きすぎてぐったりするほど激しく心を強く揺さぶられ、視聴後には余韻と疲労が同時に残るほどの密度を持つ。
IUとパク・ボゴムという、韓国エンタメ界の宝であり、常に華やかな存在の二人が演じるのは、運にも恵まれず、貧しさに翻弄され続ける若い夫婦だ。二人が顔をぐしゃぐしゃにして涙し地団駄を踏む様子には、驚きとともに胸を打たれる。
父グァンシクを演じるのは、青年期をパク・ボゴム、中年期をパク・ヘジュンが担う構成だが、所作や視線まで見事にシンクロし、ひとりの人生として自然に繋がっていく完成度の高さがある。
象徴的なのは、娘クムミョン(IU/二役)の結婚式の場面である。バージンロードを前に、父がかける言葉は「違うと思ったら、いつでもバックしろ」という、昔からの変わらないひと言。その瞬間、娘の胸には幼い日の記憶が一気に押し寄せ、父の愛情の深さを理解し、
父の側にも、これまでの娘との時間が走馬灯のように重なり、言葉にならない感情があふれ出す。父と娘の想いが重なるこのシーンは、本作の中でも特に胸が締めつけられる。
『未知のソウル』(Netflix/全12話)
【あらすじ】
日常の延長線にある痛みと再生を丁寧に描くことで、長い余韻を残すヒーリングドラマ。
顔はそっくりでも、性格も生きる環境も異なる双子の姉妹ミレとミジ(パク・ボヨン/二役)。職場で追い詰められた姉を救うため、妹が姉の生活と一時的に入れ替わり、嘘を重ねながらも、それぞれが本来の自分と向き合い、愛と生き方を見つけていく。
(画像=tvN)
【涙ポイント】
感情を過度に煽る演出ではなく、人物同士の関係性と、言葉の積み重ねによって、静かに心を揺さぶる。核となるのは「家族のまなざし」だ。とりわけ母親世代の描写には厚みがあり、同じく二人の娘を持つ筆者は、本作をどうしても母親の視点で見てしまい、何度も
泣かされた。どの世代、視点で見ても、観る側の立場によって異なる涙を引き出すはずだ。
さらに、祖母の存在が物語にやわらかな温もりを添えている。死を前にした祖母が、過去のトラウマに苦しむミジへ「生きようとすること自体が勇敢だ」と語りかける場面には、この作品の核となるメッセージが端的に表れている。各話に感情の核となる場面やセリフが丁寧に配置され、全体を通して「あなたはあなたのままでいい」と背中を押され、温かい涙とやさしい余韻がいつまでも残る。
『涙の女王』(Netflix/全16話)
【あらすじ】
財閥クイーンズグループの孫娘ヘイン(キム・ジウォン)と弁護士ヒョヌ(キム・スヒョン)は、結婚3年目にしてすっかり冷え切った関係に。ある日、ついにヒョヌが将来を左右する大きな決断をした日に、ヘインから思いもかけない病の報告を受け、二人は再び愛を取り戻していく。真実の愛と別れの狭間で、ふたりが関係を取り戻していく過程を描く、サスペンス色のあるヒューマンロマンス。
(画像=tvN)
【涙ポイント】
本作で最も印象に残るのは、ヒョヌの涙である。『涙の女王』というタイトルの印象とは異なり、物語を通して感情を大きく揺さぶるのはキム・スヒョンの涙だ。Netflix公式が、ヒョヌが40回泣いたカウント動画をまとめたことでも大きな話題になった。
象徴的なのは、ヒョヌが、「記憶がなくなっても生きてほしいから手術を受けてくれ」と懇願し、二人が号泣するシーンは、本作の感情の頂点のひとつといえる。さらに、ドイツでの交通事故をめぐる誤解や、幼い頃の出来事が明かされる展開など、過去と現在が交錯しながら感情が積み重なっていく構造も、韓国ドラマのお約束がてんこ盛りで見逃せない。各話のエンディング後に配置されたエピローグは、パク・ジウン作家の得意芸で、『愛の不時着』や『星から来たあなた』でもおなじみ。本編のシーンが別視点が提示されることで、感情理解が深まり、いっそう涙を誘う仕掛けになっていて、わかっていても二度泣かされてしまう。
主軸のロマンスだけでなく、ヒロインの弟夫婦のサブカップルのエピソードや、周囲の人物のエピソードにも厚みがあり、多面的に涙を引き出す構成は見事。最終話に至るまで、段階的に感情を高めていく設計が際立っている。
『39歳』(Netflix/全12話)
実際にすぐそこにいそうな女友達同士の世界観に「共感」
【あらすじ】
40歳を目前にした親友3人、ミジョ(ソン・イェジン)、チャニョン(チョン・ミド)、ジュヒ(キム・ジヒョン)。高校時代から続く関係のなかで、ある日、ひとりが余命宣告を受ける。限られた時間を共に過ごしながら、友情、恋愛、別れと向き合う中でさらに絆を深めていく。「自分の人生をどう生きるか」という誰もが直面するシンプルな人生の課題を、やさしく問いかけるヒューマンドラマ。
(画像=JTBCスタジオ)
【涙ポイント】
本作の核にあるのは、特別ではない日常のなかに潜む感情だ。長く連れ添った友人との時間、言葉にできなかった思い、そして避けられない別れ。それらが積み重なり、静かに涙を引き出していく。
なかでも印象的なのは、長年愛してきた女性が余命宣告を受けたと知った恋人が、感情を抑えきれず膝から崩れ落ちて号泣するシーンは、男性もこんなふうに泣くのだと思い知らされもらい泣きしてしまう。
また残された時間のなかで交わされる率直な言葉の数々、愛情や後悔が交錯するその瞬間は、観ている私たちの側の記憶とも重なり、強い共感を呼ぶ。
そしてチョン・ミドが演じるチャニョンという人物像も、本作に奥行きを与えている。長く報われない関係に身を置きながらも、どこか人間らしい弱さを抱えた姿は、ただ悲しいだけで終わらず、現実味のある人物として描かれている。
今回紹介した作品は、ドラマティックに感情を揺さぶるものから、共感を通して静かに余韻を残すものまで、涙のかたちはさまざまだ。そうした作品に身を委ねる“涙活”は、忙しい日常のなかで心を整えるひととき、心のデトックスになるはずだ。
(文=田名部 知子/Xで気ままなソウルの日常を発信中:@t7joshi)
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