2026年1月18日(日)にスタートした日曜劇場『リブート』(毎週日曜よる9時)。妻殺しの罪を着せられた平凡なパティシエ・早瀬陸(はやせ・りく)が、愛する家族を守るため、事件を捜査している刑事・儀堂歩(ぎどう・あゆみ)に“顔を変える=リブート(再起動)”し、真実を追い求めるという“エクストリームファミリーサスペンス”です。
本作の協力プロデュースを務めるのは、TBSテレビの國府美和。挑戦に満ちた制作の裏話や自身のキャリアについて話を聞きました。

國府さんが担当している「協力プロデュース」とは、どんな役割でしょうか。
國府 「『リブート』を面白くするために、あらゆる業務を担う役割」です。このドラマを企画した東仲恵吾プロデューサー(※以降「東仲P」)が、作品にまつわる意思決定に集中できるように、いろいろなプロデュース業務をアシストしています。具体的な業務は、台本作りからキャスティング、撮影、プロモーションなど、多岐に渡ります。
これまでの作品ではアシスタントプロデューサーとして撮影や編集など現場のサポートや調整を主に担当していましたが、今回は東仲Pと共に作品全体に関わる業務を進めています。「協力プロデュース」として作品に携わるのは今回が初めてです。
私が制作に参加した2024年の冬ごろには、すでに台本の初稿が途中まで作られていました。脚本の黒岩勉さんと東仲Pが約3年前から構想されていて、「なりすまし」という題材と「究極の家族愛」というテーマを掛け合わせた作品を作りたい、という話から始まったそうです。

脚本作りはいかがでしたか?
國府 本打ち(※台本制作の打ち合わせ)の段階から、チャレンジングな作品になるだろう、という予感がありました。
5話の早瀬陸(リブート後)と儀堂歩が対峙する場面で、「一人二役を演じる、鈴木亮平さんが鈴木亮平さん自身の姿を殴るシーン」は、技術的にとても難易度が高いものでした。ですが、坪井敏雄監督の「亮平さんが、亮平さんを殴るシーンを絶対に撮りたいんだ」という演出家としての強い挑戦心に、黒岩さんが「絶対実現させましょう!」と応えてくださって。このシーンは黒岩さんが「人生で一番長いシーンを書きました」と語るほどで、5話の台本の約3分の1を占めています。初めて読んだときは、皆で感動しました。

また、並行してロケ地選定やキャスティングを行いましたが、ハヤセ洋菓子店のロケ地の写真を黒岩さんにお見せして「屋根から出てアーケードの上を走れるような構造です」とお伝えしたところ、黒岩さんは「絶対にここから走らせます」とおっしゃって、松山ケンイチさん演じる早瀬陸(リブート前)が走る1話のシーンにつながりました。
リブート後の早瀬と儀堂役の亮平さん、幸後一香(こうご・いちか)役の戸田恵梨香さんは当て書き(※俳優をあらかじめ決めて脚本を執筆する手法)されたそうですが、ほかの人物もキャストさんが決まると、その方の雰囲気に合わせて変わっていきました。
こうして皆でアイデアを出し合って作り上げていく過程は刺激的で、この議論に参加できてとても勉強になりました。黒岩さんと東仲Pのやりとりで、『リブート』という作品に対する明確な共通認識が構築されていくのを感じましたし、坪井監督の演出家ならではの意見でドラマがより一層色づく瞬間がたくさんありました。黒岩さんが皆の意見も取り入れてくださって台本が稿を重ねていくのが待ち遠しかったですし、完成した台本は本当に面白いものになりました。
制作発表などで使用したお面、鈴木亮平さんがキャスト・スタッフにプレゼントしてくださったというTシャツ、台本には「ハヤセシュークリーム」の絵が
1話の無料配信再生数が、全局の歴代ドラマ初回放送1位を記録する快挙となりました(※)。何度も見てもらうために、どんなところを意識しましたか?
國府 スピード感ある展開を重視しました。回を重ねるごとに真実と嘘がひっくり返っていく構成のため、最初から見返したくなるのではないでしょうか。二度目に視聴することで新たな発見があったり、同じシーンでも違う見え方に感じたりできるように作られています。
放送期間中、視聴者の方々に次の週を心待ちにしていただき、ドラマ全体を通して楽しんでいただきたいという制作陣の思いを込めています。何度も視聴することで、深く楽しんでいただけると思います。
※〈無料配信動画サービス「TVer」と「TBS FREE」での本作第1話の見逃し再生回数が478万回を突破。[※TVer DATA MARKETINGにて算出、配信期間2026年1月18日(日)~1月25日(日)]〉

本作は、監修者が多いことも特徴です。
國府 「主人公が顔を変えて別人になりすます」という設定はファンタジーですが、物語により集中して楽しんでもらえるように、それ以外の部分はしっかり取材して、リアリティーに徹して作り込みたいと考えました。そこで、各ジャンルの方々に監修をお願いしました。
裏社会監修の丸山ゴンザレスさんは、『クレイジージャーニー』に出演されているご縁で依頼したところ、快く引き受けてくださいました。
丸山さんから聞いたリアルな裏社会事情は衝撃的なものばかり。北村有起哉さん演じる合六亘(ごうろく・わたる)の組織のありようについてだけでなく、「札束をまとめるのは100万円ごとに丸めて輪ゴムでとめておく」、「拘束するのはガムテープを使うのが主流」といった細かなディテールまで教えていただき、それもドラマに反映されています。
丸山さんから聞いた話は本打ちで黒岩さんにお伝えし、さらに制作チームから出た疑問を私が引き取り、再び丸山さんに取材して、それを持ち帰るというやりとりを続けました。他の監修者の皆さんにも、本当にたくさんのお力添えをいただいています。
TBSドラマ初となる「コンセプトデザイン」という取り組みも行ったそうですね。
國府 TBSのデザインセンターに所属するデザイナーやTBSアクトのデザイン本部のメンバーの方々に、かなり早い段階から合流していただき、映像のトーンやキャラクター設定などの議論を重ねました。
「コンセプトガイド」というドラマの世界観をビジュアル化した資料も作成していただきました。キャラクターや各シーンのイメージを絵に起こしたり、台本を家族・裏社会などのシーンごとに色分けして物語の構成をグラフ化したりしたものです。
作品の世界観を作る作業は、これまでプロデューサーや監督を中心に議論して考えていましたが、今回はコンセプトガイドをもとに、撮影前の準備段階からスタッフ全員で『リブート』の世界観をビジュアルで共有することで、自然と頭にイメージが刷り込まれ、同じゴールに向かってぶれずに取り組むことができましたし、迷ったときに立ち返る指針にもなりました。
ドラマは「二面性」がテーマなので、「照明による陰影を効果的に使おう」、「ガラスの映りを利用して、顔が重なる演出をしよう」といった具体的なアイデアを事前に共有しました。1話などで登場した鶏舎のシーンも、事前にイメージを見せながらVFXや撮影、照明チームに伝え、お互いにアイデアを出し合って撮影を進めることができました。初の試みでしたが、プリプロダクション(※撮影前の準備、以降「プリプロ」)の重要性を改めて実感し、TBSドラマとしてとても有意義な取り組みだったと思います。

撮影は、2025年夏ごろには終えていたそうですね。
國府 今回はたまたま撮影スケジュールと放送時期が離れていたため、準備から撮影、ポストプロダクション(※仕上げ作業、以降「ポスプロ」)、宣伝と各工程に十分な時間を割くことができました。特にVFXシーンに力を入れることができるなど、そのメリットが大きかったです。通常のドラマ作りでは、これらを全て同時進行することが一般的ですが、海外ではプリプロからポスプロまでそれぞれ時間を分けて進める方法がスタンダードだそうです。
特に思い出深いシーンは?
國府 やはり、先ほどもお話した5話の亮平さんが2人いて対峙するシーンは強く印象に残っています。同じ人同士が触れ合うところを表現するのは技術的にとても難しいのですが、どうしてもこのシーンを実現したかったので、キャスト、スタッフ皆で意見を出し、話し合いました。その結果、「モーションコントロールカメラ」というカメラの日本に一台しかない機材が北海道にあることがわかり、はるばる船で運んでいただきました。
亮平さんには早瀬と儀堂、それぞれの役でお芝居をしていただき、それぞれのお芝居を、機械に記憶させた同じカメラワークで撮影することで、2つの動きのある映像を合成することができるという手法です。1シーンを丸2日かけて撮影しました。
また、亮平さんの特徴的な耳の形を再現するため、特殊メークで亮平さんの耳を多数作成し、それをボディダブル(※実際の俳優の代わりに後ろ姿などを演じる俳優)の方に装着していただいて、「亮平さんの背中越しの亮平さん」という画も撮りました。
撮った映像でそのシーンが成立するかを検証するため、VFXチームも立ち会い、撮影するそばから作業に取り掛かってくれました。現場のモニターで亮平さんが亮平さんの顎を持つシーンの仮合成映像をみんなで見たときは、全部署のスタッフから拍手が起こりました。「すごいシーンを撮ったんだ」という高揚感と、現場の一体感は忘れられません。
現場には技術・美術チームや俳優陣、スタッフ陣ら、さまざまなプロフェッショナルの方々がいらっしゃいましたが、「こんなシーンは撮ったことがない」と口をそろえていたのも印象的です。

1話で松山ケンイチさん演じる早瀬の顔が、鈴木さん演じる儀堂に変わっていく過程も話題になりました。
國府 美容整形外科の医師に取材したところ、顔の整形にはおすすめの順番があったり、ダウンタイム中はストローを使って飲み物を飲んだりすることなどを教えていただきました。本打ちでその話をすると、「ダウンタイムというのがあるんだ、それは興味深いね」という意見が出て、顔が変化していく一連のシーンが生まれました。実際に聞いた話をもとにしているので、リアリティーあるシーンになったのだと思います。
顔が変わる過程は、亮平さんと松山さんに包帯を巻いて同じ動きをしていただきながら撮影し、「ここはすでに顎を整形した後だから、顎だけ鈴木さんに」というように、合成しながら作っていきました。そこに坪井監督の演出力が加わり、素晴らしいシーンが完成しました。
なりすましのドラマで、顔が変わっていく過程を描いたのは珍しく、チャレンジングな取り組みだったと思います。視聴者の方も、あまり見たことのないシーンになったのではないでしょうか。


合六の鉄板焼きの調理シーンも印象的です。
國府 合六のキャラクターを作るときに「裏社会組織の審判が下される状況で目の前に高温の鉄板があったら、ちょっとぞっとするよね」という話が出たことがきっかけで、このシーンが生まれました。食べることは生きることであり、一般的なドラマでは「食事=温かい」というイメージがあるかと思いますが、鉄板焼きのシーンは粛清の場として描かれ、必ず何かが起きます。その「生と死」のコントラストがとても効果的に表現できていると思います。
赤を基調としたセットは、コンセプトガイドの時点で出ていたアイデアです。セットに座ると緊張感が走ります。
丸山ゴンザレスさんに、こうした合六の振る舞いについて相談したところ、「よくありますね。裏社会の人の中には、ごはんを作って食べさせたがる人がいます」とおっしゃって、設定を裏付けてくださいました。ちなみに撮影時は、余ったステーキなどをスタッフがおいしくいただけるので、楽しみにしていました(笑)。

合六の仲間、安藤役として津田篤宏さん(ダイアン)が登場したのも話題になりました。
國府 裏社会の緊張感あるシーンに、津田さんがうまくマッチしていましたよね。津田さんのユニークなたたずまいを見て、戸田さんがずっと笑っていて雰囲気を和ませてくれました(笑)。安藤は4話にも登場し、早瀬が「儀堂が生きているのではないか」という疑念を膨らませるきっかけになるので、強く印象に残るキャラクターにしたいという思いがありました。津田さんが出演してくださったからこそ、効果的なシーンになったのではないでしょうか。

撮影現場でのキャストの皆さんの様子は?
國府 通常のドラマ撮影は待ち時間が長いので、キャストの皆さまは楽屋に戻られたり、自分一人で集中されたりする方が多いのですが、今回は常にディスカッションが繰り広げられていたのが印象的でした。監督ベース(※監督がモニターで映像チェックをする拠点)に集まり、「このシーンはこういうことですよね?」、「この感情はどの程度見せますか?」というような議論が日々繰り広げられていたので、毎朝、現場に着いたら、キャストやスタッフがいつでも作戦会議ができるよう、監督ベースに2~3脚の椅子を用意していました。
そうした日々の作戦会議によって、現場で演技やシーンなどがよりブラッシュアップされていったと思います。亮平さんや戸田さんはその役を生きているからこそ鋭い洞察をされますし、監督やプロデューサーがそれに応えていく様子を間近で見られたことは非常に貴重な経験でした。話を聞いているだけでも毎日脳のトレーニングをしているような感じで、少し頭が良くなったような錯覚に陥りました(笑)。
鈴木亮平さんはじめ、キャストの皆さんの演技を間近で見ていかがでしたか?
國府 亮平さんは、松山さんの撮影を見に来られていたのも印象に残っています。松山さんの映像やナレーションの素材を集めてお渡しすると、亮平さんは二人で同じ早瀬陸を演じる役者として、ずっとお芝居や話し方などを確認されていて、そのひたむきな姿勢に圧倒されました。
1話、松山さん演じる早瀬と息子・拓海(たくみ/演・矢崎滉)の別れのシーンの撮影も、鈴木さんは間近で見守られていたそう
戸田さんの、一香という役に対するあまりに深い理解と愛情には、ただただ痺れる毎日でした。一香がどんな人物であるかは戸田さんから教えていただいたというほど。
一方、とても気さくな方で、こんなにシリアスなシーンの多いドラマにも関わらず、現場で度々笑いが起こる中心にはいつも戸田さんがいらっしゃったように思います。

亮平さんと戸田さんのすさまじいお芝居の応酬に、編集室で映像を見ながら、スタッフ一同「この亮平さんやばいね」、「この戸田さんやばいね」と語彙力を失って感嘆のため息を漏らしてしまうこともしばしば。このお二人でなければ『リブート』は成立していなかったと、制作チームの全員が心から感じていると思います。
冬橋航(ふゆはし・こう)は、制作陣の中でも人気のキャラクターです。簡単に人を殴ったり銃口を向けたりするような悪者なのですが、闇の隙間からにじみ出る憂いや彼なりの信念に思わず共感させられてしまいます。これまで永瀬廉さんが演じられてきた役とはかけ離れた役だったと思いますが、新鮮でありながら真骨頂とも言えるような一面で物語に奥行きを与えてくださいました。
霧矢直斗(きりや・なおと)役の藤澤涼架さんは、連続ドラマに出演されるのは、今回が初めてです。永瀬さん演じるクールな冬橋に対し、霧矢は陽の雰囲気を持つキャラクターで、よい化学反応を起こしてくれるバディになるように、とオファーさせていただきました。初めておふたりがそろったときは、「これが私たちが思い描いていたバディだ」と感じたほど。現場でもよくお話されていたようです。
藤澤さんは、ご自分の撮影がない日も永瀬さんの撮影を見に来られていました。

撮影現場では、キャストやスタッフに軽食や飲み物を提供する「クラフトサービス」を導入したそうですね。
國府 東仲Pの提案で、今回初めて導入しました。日本のテレビドラマ界では珍しい取り組みだそうです。セットの日もロケの日も、バナナやコーヒー、おやつ類がたくさん用意されているほか、ホットサンドの提供もありました。皆さまがとても喜んでくださり、私も毎日、ここで朝ごはんを食べるのが楽しみで、それがチーム全体のモチベーションアップにつながったのではないかと思います。自分も作品に関わってくださる一人一人のことを考えられるプロデューサーになりたいと改めて思いました。
裏社会の仕組みの説明などで、イラストを使ったシーンが登場します。
國府 取材を通し、裏社会のビジネス形態はとても複雑だということが判明しました。わかりやすく説明するために、坪井監督から「アニメーションを入れたい」と提案がありました。
そこで、私が元々好きで、Instagramでフォローしていたイラストレーターのカケハタリョウさんが頭に浮かび、オファーさせていただきました。何十回も電話でやりとりしながら作っていただきましたが、おかげさまで皆さんから「かわいい」と反響をいただいています。緊張感のあるストーリーの中に、親しみやすさや抜け感を表現できていたらいいなと思います。
今回は音楽を大間々昂さん、木村秀彬さんのおふたりで担当されています。
國府 とても珍しい試みだと思います。大間々さんの曲は心の琴線に触れますし、木村さんの曲は気持ちが奮い立ちます。劇伴のレコーディングにも同席させていただきましたが、オーケストラの皆さんが演奏される音に、ただただ感動しました。
素晴らしい曲が映像と合わさると、物語が何倍にも広がり膨らみます。MA(※映像に音楽・ナレーションなど音を加えて調整する作業)のときも、音楽がついた映像を見ると、さらに登場人物たちのいろいろな感情が迫ってきました。
一流のお二方ですので、こうして一作品でタッグを組むのは初めてとおっしゃっていました。きっと、制作陣の熱量を感じ取って引き受けてくださったのだと思います。おふたりとも楽しんで作ってくださったので、とてもありがたいです。
まもなく放送する7話から第2章が始まります。最終回に向けて、見どころを教えてください。
國府 私が『リブート』で好きなのは、顔が変わっても「その人の芯となる、愛や情熱、希望は変わらない」と感じられることです。7話以降はそのメッセージを感じていただける、さらに面白い後半戦になっています。

物事には必ず二面性がありますし、私たちも社会で生きていく上でいろいろな顔を持っていて、立場や見方によって「何が正しいのか」というのは簡単にひっくり返ってしまう。一方で「大切な人への愛情は正しいとか正しくないとか、そういうものを全て突き破ってしまうぐらいのパワーを持ちうる」ということを、このドラマは証明します。その力強いメッセージを感じて、初めて最終話を見たときは私も編集所で思わず号泣してしまいました。
亮平さんも、「今からこのドラマを見られる皆さんがうらやましい」とおっしゃっていたほど。登場人物たちが巻き込まれていく運命の渦に一緒に飲み込まれつつ、楽しんでいただければ幸いです。

ところで、國府さんはどんな経緯でTBSに入社されたのでしょうか。
國府 幼少期からドラマや映画、本が大好きでした。子どもの頃からずっと作品に影響を受けてきたので、いつしか「物語に関わる仕事がしたい」と思うようになりました。
大学では比較文学を専攻し、国内外の文学作品に加え、映画や演劇、漫画など多様なコンテンツを題材に学んだほか、ドラマの話題を通して友人ができたり、『オレンジデイズ』(2004年)をきっかけに手話の授業を受けたりと、ドラマの存在が日常にワクワクをもたらしてくれました。
けれども映像制作の経験はなく、そもそも地元の関西にはエンタメ業界で働く人はほとんどおらず、東京で働くイメージもなかったので、大学生のころは「国語の先生になって、物語に触れる楽しさを生徒に伝えたい」と、教員採用試験の勉強を進めていました。ですがドラマを作りたいという気持ちもやはりあって、テレビ局数社だけを受験しました。今、この仕事をさせていただいてるのは奇跡のようです。自分にはドラマ作りの才能があるのか、向いているのかもわかりませんが、ドラマと過ごしてきた日々のおかげで頑張れているのかなと思います。
ドラマ制作部の雰囲気を教えてください。
國府 TBSのドラマ制作部は、全員が「4th AD」という一番若手の役職からキャリアを始めることが特徴です。基礎から順番に時間をかけて学べるのはとても恵まれた環境だと思います。この経験のおかげで、のちのち違う役職になっても現場のスタッフの方々と同じ目線で話すことができますし、説得力を持ってお願いすることができるようになるのだと思います。新人AD時代から現場で一緒に走り回ってきたドラマ部や各部署のアシスタントスタッフの方々は、共に頑張ってきたTBSの仲間であり、一生一緒に働いていきたい「戦友」のような存在です。
また、部員全員がドラマや映画が大好きなので、普段から「あのドラマ見た?」という会話で盛り上がりますし、話題の映画の公開初日に見に行ったら先輩がいた、という話もよく聞きます。コンテンツが好きという点で、共鳴しあえると思います。
特に転機になった作品は何ですか?
國府 入社4年目に初めてチーフプロデューサーとして企画した単発ドラマ『すっぴんヒーロー』(2024年)です。それまではアシスタントディレクターやアシスタントプロデューサーとして働いていましたが、自分の企画が通り、一連の制作プロセスに深く関わったことで、ドラマ制作にはこんなにも多くの段階があり、こんなにも多くの人によって作られていることを改めて思い知りました。
同時に、初めて感じる責任感やプレッシャーもあり、「先輩方はこれを背負ってドラマを作られてきたんだ」とその重みを感じ、衝撃を受けました。
特に強く感じたのは、「伝えることの難しさ」です。国語は得意な方だと思っていましたが、自分の意図を正確に相手に伝えるコミュニケーション能力は別だと痛感しました。ドラマは絶対に一人では作れないので、各セクションの担当者との円滑な意思疎通が不可欠です。自分の考えを「説得力」を持ってしっかりと伝える力が自分には足りないと感じたことが大きな課題となり、それ以来「相手に伝えるためには、どのような言葉を選び、どのように話せばいいのか」を意識するようになりました。まだまだ修行中で、今でも毎日のように自分の言葉のつたなさに悔しくなりますが、目の前の仕事との向き合い方が変わる転機になったと思います。
最後に、國府さんのように、ドラマ制作の仕事を目指す就活生に向けてメッセージをお願いします。
國府 この仕事は、ドラマに夢中になった思い出や、ドラマに対する思いがあれば、特別な経験がなくてもできると思います。もしドラマの仕事をしたいと思ってくださるなら、その気持ちを大切に、ぜひ夢を叶えていただきたいです。
自分もドラマには心から恩義を感じていますし、『リブート』の制作を経て、面白いドラマを届けられるプロデューサーになることが一番の目標だと改めて思いました。私がいろいろな作品にそうしてもらってきたように、いつか「誰かの毎日を少しだけでも彩れるようなドラマ」を企画して作りたいです。
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國府美和
2020年TBSテレビ入社。ドラマ制作部。『日本沈没ー希望のひとー』(2021年)、『クロサギ』『マイファミリー』(ともに2022年)、『ラストマンー全盲の捜査官ー』(2023年)などの助監督やアシスタントプロデューサーを経て、『すっぴんヒーロー』でプロデューサーデビュー。日曜劇場『リブート』では、自身初の協力プロデュースを務める。
