入り口すぐのメインの平台に平積みで展示する(丸善日本橋店)

入り口すぐのメインの平台に平積みで展示する(丸善日本橋店)

本はリスキリングの手がかりになる。NIKKEIリスキリングでは、ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチし、本探し・本選びの材料を提供していく。

今回は、2、3カ月に一度訪れている準定点観測書店の丸善日本橋店だ。ビジネス書の売れゆきは好調だという。そんな中、書店員が注目するのは、コミュニティをベースに様々なビジネスを展開してきた著者が、会社に頼らず「幸せなお金持ち」になる方法を説いた自己啓発本だった。

持続可能な経済基盤をつくるには

その本は嶋村吉洋『人生100年時代を生き抜くための億万長者のコミュニティ資本論』(プレジデント社)。嶋村氏は本書の略歴によれば、10代で起業し、ソーシャルビジネスコミュニティ「ワクセル」を立ち上げて、コミュニティメンバーと共に100以上のプロジェクトを生み出しているという。起業時から数えれば、活動実績は30年を超える。それで築いた資産は株式だけで時価数百億円というから億万長者の看板に恥じない。

先の見えない時代に個人が力を発揮するには、「自分の価値を自由に発揮しつつ、他者とも協力して持続可能な経済基盤をつくることが必要」と言い、自らの経験を基にそんな持続可能な経済基盤のつくり方を説いたのが本書だ。

例えば料理好きの人がいて飲食店を開くとする。コミュニティ=仲間がいれば、開店初日からお客として来てくれ、続いて友人や知人を連れて来てくれる。さらにPRをなりわいにしている仲間が店の宣伝を手伝ってくれて、一般のお客も増えていく。信頼関係のある仲間とのコミュニティさえあれば、ビジネスの形は何であれ、うまくいくのではないか。著者はコミュニティの利点をこんなふうに語る。

そんなに絵に描いたようにうまくいくとは思えないかもしれないが、著者自身が100を超えるプロジェクトを実行し、ビジネスとしても成功させているだけに、納得せざるを得ない。ポイントとなるのは「信頼関係のある仲間とのコミュニティ」という部分だ。

価値観の合う3人を見つける

著者は将来ビジネスを成功させたいなら、会社員でいる間に「自分を応援してくれるコミュニティをつくっておくこと」を勧める。「コミュニティづくりの第一歩は、とにかく価値観の合う人を3人見つけることです」と言い、最初は「質より量」で多くの人に自分のコミュニティの価値を伝えよと説く。

コミュニティをベースにビジネスを興し発展させる生き方は決して楽な生き方ではない。著者はコミュニティをフィットネスクラブに例える。体を鍛える施設だが、適当にやっていても体力はつかない。施設を利用して自ら努力することで初めて理想の肉体に近づいていく。これと同じく、コミュニティにも本人の地道な努力が不可欠なことを何度も重ねて説いていく。

どのようにコミュニティに参加し、どのようにして自分を中心としたコミュニティをつくっていくかから、コミュニティを強くする方法やコミュニティを成功させる習慣術まで、実例と自身の経験を交え語っている。習慣術の中には「即レスを心掛ける」「定時後の自分の時間をどう使うかが重要」など、仕事の基本とも言えるアドバイスもあり、会社員生活を送る上でも参考になりそうだ。

「この店だけかもしれないが、入荷直後から反応が良く、今もよく売れている」とビジネス書を担当する石田健さんは話す。投資術の本もよく売れているだけに、タイトルにある「億万長者」という言葉がビジネス街の読者に刺さったのかもしれない。

1位にサイバー藤田氏のマネジメント論

それでは最新のビジネス書ランキングを見ていこう。

(1)勝負眼藤田晋著(文芸春秋)(2)人生100年時代を生き抜くための億万長者のコミュニティ資本論嶋村吉洋著(プレジデント社)(3)世界の新富裕層はなぜ「オルカン・S&P500」を買わないのか宮脇さき著(KADOKAWA)(4)科学的に証明された すごい習慣大百科堀田秀吾著(SBクリエイティブ)(5)異動する人はうまくいく長倉顕太著(すばる舎)

(丸善日本橋店、2025年11月13~19日)

1位は先ごろ2026年の社長退任を発表したサイバーエージェントの藤田晋氏の本。週刊文春の連載を加筆修正してまとめた一冊で、自らの経験を基につづった実践的マネジメント論だ。今回紹介した『人生100年時代を生き抜くための億万長者のコミュニティ資本論』は2位だった。

3〜5位には息の長い売れ筋が並んだ。3位の元手ゼロから純資産を4億円まで増やした投資術を明かすマネー本は8月刊、4位のスキル本は、本欄の記事〈「すごい習慣」で仕事や人生を変える 科学的根拠に基づく小さなメソッドの大百科〉で紹介した7月刊の本だ。5位には、本欄の記事〈移動する人はうまくいく 行動を変え、人生を変えるアクションプランを提示〉で紹介した24年4月刊の自己啓発本が入った。

(水柿武志)

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