国立西洋美術館(東京・上野公園)で10月25日に開幕する「オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語」。開幕前日の24日、ひと足先に会場を訪れた展覧会アンバサダーの上白石萌音さんが、ルノワールの《ピアノを弾く少女たち》を背に、同展の魅力をぎゅっと凝縮してお話してくれました。

上白石さん 「作品の周りに当時の空気が漂っている」

上白石さんは「会場の絵を通して、人の居住空間には独特の空気感がある、独特の趣きがある、ということ感じました。そこには生活の匂いがあったり、人々の思惑があったり、交流があったり。それらが織り成す空気を、印象派ならではのやり方で、ぎゅっと閉じ込めた作品がたくさん来日しています。その作品の周りには、当時の空気が漂っているような感覚も覚えました。ぜひ、そうした空気に触れに、そうした空気を吸いに、上野まで足をお運びください」。普段から美術館に通い、絵画鑑賞を趣味にしている上白石さんらしく、的確に表現してくれました。

音声ガイド「一緒に色々なものを発見できるように」

上白石さんは音声ガイドも担当。「音声ガイドを利用してくださる方と一緒に絵を見て、一緒にいろんなものを発見していけるような空気感が出せるように、意識しながら収録しました」。音声ガイドも楽しみです。

(左)エドガー・ドガ《家族の肖像(ベレッリ家)》1858‐1869年 オルセー美術館、パリ
室内画や肖像画中心でも大型の作品が多く、展覧会場は壮観な雰囲気です
人々の思い、暮らしぶり伝わる名品

印象派というと私たちは「戸外の光」を連想しがちです。しかし印象派の殿堂、オルセー美術館から来日したマネやドガ、モネ、セザンヌらの肖像画や市民の日常を描いた優品を目の当たりにすると、そのイメージは一変します。人々の繊細な心理や丁寧な暮らしぶりが浮かび上がってきます。

エミール・ガレやウジェーヌ・ルソーらによる当時の室内装飾も展示され、絵画との響きび合いが効果的です。

「オルセー美術館所蔵 印象派ー室内をめぐる物語」国立西洋美術館(東京・上野)で来年2月15日(日)まで。今秋の西洋絵画展のクライマックスでしょう。オルセーのコレクションを中心に室内画に焦点。若きドガの大作《家族の肖像(ベレッリ家)》など約70点が来日。詳しくは下記のプレビュー記事をご覧ください。(美術展ナビ編集班 岡部匡志)

(以下はプレビュー記事です)
国立西洋美術館(東京・上野公園)で「オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語」が10月25日(土)から開催されます。

本展では「印象派の殿堂」ともいわれるパリ・オルセー美術館所蔵の傑作約70点を中心に、国内外の重要作品も加えたおよそ100点により、室内をめぐる印象派の画家たちの関心のありかや表現上の挑戦をたどります。

モネ、ルノワール、セザンヌ、ドガらの名品ずらり

オルセー美術館の印象派コレクションがこの規模で来日するのはおよそ10年ぶり。さらに今回、若きドガの才気みなぎる代表作《家族の肖像(ベレッリ家)》が日本で初めて展示されます。マネ、モネ、ルノワール、セザンヌらの名品も一堂に会するこの機会に、室内というテーマを通して印象派のもうひとつの魅力をぜひ堪能してみてはいかがでしょうか。

オルセー美術館所蔵 印象派ー室内をめぐる物語

会場:国立西洋美術館(東京・上野公園)

会期:2025年10月25日(土)~2026年2月15日(日)

休館日:月曜日、11月4日(火)、11月25日(火)、12月28日(日)~1月1日(木・祝)、1月13日(火)
※ただし、11月3日(月・祝)、11月24日(月・休)、1月12日(月・祝)、2月9日(月)は開館

観覧料:前売券 一般2,100円/大学生1,300円/高校生900円
当日券 一般2,300円/大学生1,400円/高校生1,000円

公式サイト:https://www.orsay2025.jp

問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)

本展の見どころ

1.「室内」をテーマに、「戸外の光」だけではない印象派のもうひとつの魅力に焦点を当てて紹介します。

2.「印象派の殿堂」パリ・オルセー美術館から、日本初公開作品を含む約70点が来日!マネ、ドガ、モネ、ルノワール、セザンヌらの優品が勢ぞろい。オルセー美術館の印象派コレクションがこの規模で来日するのはおよそ10年ぶりとなります。

3. 若き日のドガによる、才気みなぎる代表作《家族の肖像(ベレッリ家)》が日本初公開!

4. 国立西洋美術館やフランスのジヴェルニー印象派美術館のほか、国内外に所蔵される重要作品も一堂に展示されます。

エドガー・ドガ《家族の肖像(ベレッリ家)》1858-1869年 油彩/カンヴァス 201×249.5cm オルセー美術館、パリ © photo:C2RMF / Thomas Clot
展示構成

第1章 室内の肖像

19世紀のサロン(官展)や美術市場を席巻した肖像画は、印象派にとっても重要な表現手段となります。彼らにとってこの絵画ジャンルは、人物を日常的な環境のなかに描き出し、その人となりや社会的な属性を表す試みでもありました。

アトリエを筆頭に、画家や文筆家の創作の場を舞台とする仲間内の肖像画では、交友関係や芸術理念を示唆する道具立てが随所にみとめられます。一方、より公的な肖像画の場合、当世風の衣装や上質な家具調度品の巧みな描写によって、室内はモデルの「良き趣味」や社会的ステータスの表明にうってつけの空間となります。

さらに家族を描いた集団肖像画に目を向けるなら、家庭を満たす親愛の情だけでなく、心理的なドラマまで垣間見ることができるでしょう。それらには子どもを中心にすえる近代的な家族観も表れています。ときに風俗画との境を曖昧にしながら、同時代の人々を生活空間のうちに描くこうした肖像画は、印象派が志向する現代性のテーマに深く関わる絵画ジャンルだったのです。

フレデリック・バジール《バジールのアトリエ(ラ・コンダミンヌ通り)》1870年 油彩/カンヴァス 98×128cm オルセー美術館、パリ © GrandPalaisRmn (musée d’Orsay) / Gabriel de Carvalho / distributed by AMF
エドゥアール・マネ《エミール・ゾラ》1868年 油彩/カンヴァス 146×114cm オルセー美術館、パリ© GrandPalaisRmn (musée d’Orsay) / Adrien Didierjean / distributed by AMF
ジェームズ・ティソ《L. L.嬢の肖像》1864年 油彩/カンヴァス  23.5×99cm オルセー美術館、パリ© GrandPalaisRmn (musée d’Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF
クロード・モネ《ルイ・ジョアシャン・ゴーディベール夫人》1868年 油彩/カンヴァス 216.5×138.5cm オルセー美術館、パリ © GrandPalaisRmn (musée d’Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF
クロード・モネ《アパルトマンの一隅》1875年 油彩/カンヴァス 81.5×60cm オルセー美術館、パリ © GrandPalaisRmn (musée d’Orsay) / Martine Beck-Coppola / distributed by AMF
ポール・マテ《室内の子どもと女性》1890年頃 油彩/カンヴァス 48.5×38cm オルセー美術館、パリ© GrandPalaisRmn (musée d’Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF
エドガー・ドガ《家族の肖像(ベレッリ家)》1858-1869年 油彩/カンヴァス 201×249.5cm オルセー美術館、パリ © photo:C2RMF / Thomas Clot
第2章 日常の情景

身の回りの暮らしに画題を求めた印象派の画家たちは、家族や仲間内での奏楽会、あるいは読書、針仕事といった、家庭での楽しみや息抜き、手すさびの情景をしばしば描きとめました。そこでは彼らの人間関係が示されるほか、外界から守られた室内特有のくつろぎや、部屋を満たす音楽を視覚的に喚起させる造形表現がみられます。こうした安逸な家庭表象を主に担ったのは女性たちでした。

エドゥアール・マネ《ピアノを弾くマネ夫人》1868年 油彩/カンヴァス 38.5×46.5cm オルセー美術館、パリ© GrandPalaisRmn (musée d’Orsay) / Tony Querrec / distributed by AMF
ピエール=オーギュスト・ルノワール《ピアノを弾く少女たち》1892年 油彩/カンヴァス 116×90cm オルセー美術館、パリ © GrandPalaisRmn (musée d’Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF
ピエール=オーギュスト・ルノワール《読書する少女》1874-1876年 油彩/カンヴァス 46.5×38.5cm オルセー美術館、パリ © GrandPalaisRmn (musée d’Orsay) / Adrien Didierjean / distributed by AMF
ピエール=オーギュスト・ルノワール《大きな裸婦》1907年 油彩/カンヴァス 71×156cm オルセー美術館、パリ© GrandPalaisRmn (musée d’Orsay) / Stéphane Maréchalle / distributed by AMF
エドガー・ドガ《足治療師》1873年 油彩、エッサンス/紙(カンヴァスで裏打ち) 61.5×46.5cm オルセー美術館、パリ © GrandPalaisRmn (musée d’Orsay) / Tony Querrec / distributed by AMF
第3章 室内の外光と自然

戸外で自然に向き合い、移ろう光や大気を研究した印象派。その自然や光への関心は、彼らが作品のなかで巧妙に戸外の風景や外光を室内に挿入し、ときに両者を浸透させていることと無縁ではないでしょう。画家たちは室内空間の延長にして周縁にあるバルコニーやテラス、あるいは温室といった、室内(内部)と戸外(外部)のあわいを少なからず絵画の舞台に選んでいます。

とくにガラス温室は、19世紀に都市部で人気を博し、やがてブルジョワたちの邸宅にも設置されて室内装飾の一部となっていました。技術的に最先端の「インテリア」が温室であるならば、伝統的に自然による室内の装飾を担ってきたものに花々の静物画があります。

画家たちは生計を立てるためにも、この需要の尽きないジャンルに取り組みました。そして印象派世代を巻き込んで展開したジャポニスムもまた、自然を最大の着想源として、斬新な装飾美術を生み出すことになります。

アルベール・バルトロメ《温室の中で》1881年頃 油彩/カンヴァス 235×145cm オルセー美術館、パリ © GrandPalaisRmn (musée d’Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF
エドゥアール・ドゥバ=ポンサン《エドゥアール・ドゥバ=ポンサン夫人》1885年  油彩/カンヴァス 117×73cm オルセー美術館、パリ© GrandPalaisRmn (musée d’Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF
エミール・ガレ 花挿:湖水風景 1878年頃 ガラス 24×22×14cm オルセー美術館、パリ 🄫 GrandPalaisRmn (musée d’Orsay) / Tony Querrec / distributed by AMF
ポール・セザンヌ《大きなデルフト陶器に生けられたダリア》1873年頃 油彩/カンヴァス 73×54cm オルセー美術館、パリ© GrandPalaisRmn (musée d’Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF
第4章 印象派の装飾

印象派による室内への自然の取り込みは、壁面装飾のかたちで新しい芸術形式を生み出すことになります。それが行き着く先に、モネによる「睡蓮」の大画面が四方を取り囲む、瞑想的な空間の創出があるといえるでしょう。

19世紀後半には絵画や彫刻を筆頭とした「大芸術」と、それまで下位とみなされていた装飾芸術との区別が大きく揺らぎ、室内装飾に対する画家たちの関心が高まりました。印象派の画家たちも例にもれず、さまざまな経緯や目的のもと、居住者の生活空間に精彩をそえる装飾画を制作し、また室内装飾用のオブジェを手がける者もいました。

世紀転換期からモネが着手する睡蓮の池をモティーフとした作品群は、やがて水面に覆われた巨大な絵画パネルによって観る者を囲うことで、室内ならではの自然没入を可能にします。室内装飾を介して自然と室内は究極的に浸透しあうことになり、ここで印象派と室内をめぐる物語もまたクライマックスを迎えます。

クロード・モネ《七面鳥》1877年 油彩/カンヴァス 174×172.5cm オルセー美術館、パリ © GrandPalaisRmn (musée d’Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF
クロード・モネ《睡蓮》1916年  彩/カンヴァス 200.5×201cm 国立西洋美術館(松方コレクション)
ギュスターヴ・カイユボット《ヒナギクの花壇》1893年頃 油彩/カンヴァス  205×116cm ジヴェルニー印象派美術館 © Giverny, musée des impressionnismes / photo: François Doury

本展では、「印象派の殿堂」ともいわれるパリ・オルセー美術館所蔵の傑作約70点を中心に、国内外の重要作品も加えたおよそ100点が登場。初来日となる若きドガが描いた大作《家族の肖像(ベレッリ家)》を筆頭に、「室内」をキーワードとして、印象派の画家たちがどのような表現を目指したのか、じっくりと堪能できるでしょう。日本でオルセー美術館の印象派コレクションをまとまって見られる機会はおよそ10年ぶり。この秋必見の西洋絵画展として、まもなくの開幕がとても楽しみです。(美術展ナビ)

オルセー美術館所蔵 印象派ー室内をめぐる物語

会場:国立西洋美術館(東京・上野公園)

会期:2025年10月25日(土)~2026年2月15日(日)

休館日:月曜日、11月4日(火)、11月25日(火)、12月28日(日)~1月1日(木・祝)、1月13日(火)
※ただし、11月3日(月・祝)、11月24日(月・休)、1月12日(月・祝)、2月9日(月)は開館

観覧料:前売券 一般2,100円/大学生1,300円/高校生900円
当日券 一般2,300円/大学生1,400円/高校生1,000円

公式サイト:https://www.orsay2025.jp

問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)

(美術展ナビ編集班)

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