芥川なおの小説を原作に、余命を告げられた少女の恋と友情を描いた映画『ストロベリームーン 余命半年の恋』が10月17日(金)より公開される。本作で主人公・萌(當真あみ)の親友・麗を演じた池端杏慈さんにインタビューを敢行。撮影現場で感じた青春のきらめきや演技に込めた想いを語ってもらった。(取材・文:ばやし)
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「高校生が全力で駆け抜ける姿に“青春”を感じた」
脚本を読んだときの印象

池端杏慈 写真:武馬怜子
池端杏慈 写真:武馬怜子

―――映画『ストロベリームーン 余命半年の恋』は、芥川なおさん原作の純愛小説を映像化した作品です。このストーリーに最初に触れたとき、どのような印象を受けましたか?

池端杏慈(以下、池端)「この物語は高校1年生が毎日を全力で駆け抜けるお話だと感じました。私は今、高校3年ですが、学校でのちょっとした出来事やささいな会話、友達と恋バナしたりする姿はまさに『青春だなぁ』と思いましたし、萌(當真あみ)や麗が高校の日常生活を全力で楽しんでいる姿が本当にかわいらしいなって。

原作では私が演じる麗が登場するシーンはそこまで多くないので、映画ではどんなふうに彼女が描かれるのかとドキドキしていました。それで、台本を初めて読んだとき、麗がちゃんとそこに存在していることに感動したんです。

萌を演じる(當真)あみちゃんとも親友という関係性でお芝居ができたので、台本を読んでいるときも、お芝居をしてるときも、麗として自分の中で生きられたと感じています」

―――池端さんはファッションやCMの現場でもご活躍されていますが、お芝居の仕事をしているときと感覚の違いはありますか?

池端「普段の広告やファッションのお仕事は自分のままでいられますが、お芝居は誰か別の役やキャラクターがあって、自分自身がその人物を演じることになります。自分として出ているときの感覚とはぜんぜん違っていて、すごく難しさもありますが、別の誰かの人生を生きられるお芝居はとても楽しいです」

「萌と日向、どちらも大切な存在に」
萌の親友・高遠麗を演じて

池端杏慈 写真:武馬怜子
池端杏慈 写真:武馬怜子

―――池端さんは萌の親友であり、日向(齋藤潤)の幼なじみでもある高遠麗を演じました。実際に彼女を演じているときは、どのような気持ちを抱いていましたか?

池端「麗は萌のことをずっと大切に思っていて、彼女が誰よりも幸せになってほしいと願っている人物です。そんな麗の思いはお芝居してるときも忘れないようにしていました。萌に出会うまではずっと日向のことが大切で、自分にとってかけがえのない存在だったのが、萌と出会ってからは2人とも大切な存在になる。

物語のラストに向かっていくにつれて、さまざまな感情が麗の中に芽生えていきます。でも、大切な人が2人もできたことは演じていてもすごく楽しかったですし、麗みたいな友達が実際に私にもいたらいいなと思いました」

―――麗は萌と日向の関係性に、複雑な思いを抱く役柄でもあります。麗という人物を演じる上で、心がけていたことはありますか?

池端「麗はいちばん葛藤が大きいキャラクターだと思っています。やっぱり本音を言えば、萌と日向が2人でいる時間が増えるにつれて、麗もどこかで寂しい気持ちを抱えていたのかもしれません。その本心を萌と日向に打ち明けるわけでもなく、心の中で大切に2人を応援し続ける彼女の思いをお芝居でどう見せるのかは難しい部分でもありました」

―――萌と日向がそれぞれ抱えている事情を知っている麗は、観客にとって最も身近な存在ですよね。

池端「だからこそ、麗は観ている人がいちばん共感できるキャラクターでもあるのかなと思います。彼女が複雑な葛藤を抱えているからこそ、観ている人も麗を応援したくなる。そして、麗がそういう気持ちでいるのを知って、観ている側も萌と日向のことが大切な存在になっていく。少し心苦しいかもしれないですが、みんなが共感できる役柄なのかなと思います」

「すごく刺激をもらいました」
當真あみと挑んだアドリブシーン

池端杏慈 写真:武馬怜子
池端杏慈 写真:武馬怜子

―――池端さんは萌を演じる當真あみさんや、日向を演じる齋藤潤さんとの共演シーンが多かったと思います。お2人との芝居はいかがでしたか?

池端「2人とも同年代ですが、本当に真面目で尊敬できる部分が多くて、すごく刺激をもらいました。あみちゃんとは、萌が麗から『どうすれば手をつなげるのか』『どうやって相合傘をするのか』という恋愛テクニックを学ぶアドリブのシーンがあったんです。

酒井麻衣監督から『大体こんな感じで、あとは2人に任せるので』と言われたとき、最初は『どうしよう!』ってなりました(笑)。でも、あみちゃんと現場の空き時間に話して、段取りを相談しながら本番に挑みました。潤くんは同い年ですが、すごく大人です。周りへの気遣いも同い年とは思えないぐらいでした」

―――萌と麗のあのシーンはアドリブだったんですね!2人とも本当に楽しそうでした。

池端「あのシーンは麗ちゃんを演じながらも、半分は麗で、もう半分は自分が出ていました(笑)。これまでアドリブの指示を受ける機会がなかったので、今回の作品でまたちょっとだけ成長できていれば嬉しいです」

―――ちなみにアドリブシーンの相談では、當真さんとはどんな話をされましたか?

池端「全体の流れやアドリブのきっかけとなるセリフだけ、最初にあみちゃんと一緒に決めておきました。そのあと『じゃあ、ここでこうやってツッコミを入れる』とか、『もうちょっとここは話し続けたほうがいいんじゃない』とかを話し合いました。アドリブのシーンは難しかったですけど、最初にあみちゃんと2人で入念に話し合えたのもあって楽しかったです」

「萌の部屋に憧れた」
酒井麻衣監督の美術へのこだわり

池端杏慈 写真:武馬怜子
池端杏慈 写真:武馬怜子

―――本作で監督を務めた酒井麻衣さんの作品は美術やアートワークも特徴的ですが、特に萌の部屋が凄かったと思います。直にあの空間に入られた池端さんから見て、いかがでしたか?

池端「あの部屋は本当に憧れますね。初めて萌ちゃんの部屋に入ったとき、本当にメルヘンで、女の子の憧れやかわいいを詰め込んだ場所になっていて…あんなところで生活してみたいなと思いました(笑)」

―――最後に、本作の見どころを教えてください。

池端「映画『ストロベリームーン 余命半年の恋』はただの恋愛の映画というだけでなく、ヒューマンドラマでもあると思っています。萌と日向の恋愛模様はもちろん、萌と麗の友情や萌の家族の関係性も含めて、みんながいろんな部分でそれぞれを大切に思っている映画です。だから、きっと映画を観た人は登場人物たちの優しさや温かさに心を動かされるんじゃないかなと思います。1人でも、大切な人とでも、ぜひ観にきてほしいです」

【著者プロフィール:ばやし】
ライター。1996年大阪府生まれ。関西学院大学社会学部を卒業後、食品メーカーに就職したことをきっかけに東京に上京。現在はライターとして、インタビュー記事やイベントレポートを執筆するなか、小説や音楽、映画などのエンタメコンテンツについて、主にカルチャーメディアを中心にコラム記事を寄稿。また、自身のnoteでは、好きなエンタメの感想やセルフライブレポートを公開している。

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