TOMORROW X TOGETHERが、日本3rdアルバム『Starkissed』を10月22日にリリースする。
昨年末は『第75回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)にK-POPボーイグループとして唯一の出場を果たし、今年11月からは日本ドームツアーも開催するTOMORROW X TOGETHER。勢いの止まらない彼らから届いた約2年ぶりの日本フルアルバム『Starkissed』には、アニメやTV番組とのタイアップも話題の「Rise」や「Step by Step」に加え、過去最多となる日本オリジナル新曲3曲を含む全12曲が収録されている。
リリースに先駆けて発表されたコンセプトはふたつ。「Alight」では白鳥の翼を脱ぎ捨て湖畔に背を向けるSOOBIN、YEONJUN、BEOMGYU、TAEHYUN、HUENINGKAIの姿が、「Uprise」ではシャンデリアを壊してキャンドルに火を灯すメンバーが描かれていた。どちらも、居心地のよい場所に別れを告げ、自らの力で未来を切り拓いていくことの象徴だ。
求められようとするのではなく、求めていくこと――。『Starkissed』から感じられたのは、傷みをも厭わずに進む勇気、決意、そしてMOA(ファンの呼称)への愛だった。本稿では、『Starkissed』の全曲解説を通して、本作に込められたメッセージを紐解いていきたい。


SPARK+Can’t Stop
無数の星が瞬くようなきらびやかなオープニングトラック「SPARK」に続く、本作のタイトル曲。冒頭から大胆に鳴り響くシンセが印象的なエレクトロファンクのナンバーで、〈君の名前は何よりも美しい〉という歌い出しから、〈Can’t stop calling you〉(君の名前を呼び続ける)という愛に満ちたフレーズが繰り返される。強靭なビートがラスト10秒ほどで鳴り止んでボーカルのみで締めくくられるのも、“君”への止まらぬ想いが表現されているようで鮮やかだ。“名前を呼ぶ”ということは、TOMORROW X TOGETHERがかねてから描いてきたテーマだが、これまでの「僕の名前を呼んで」から「君の名前を呼ぶ」と自発的なメッセージに変わっているあたりにも、彼らの成長が感じられる。そして、この変化は次曲の「Beautiful Strangers [Japanese Ver.]」でも見ることができる。

SOOBIN
Beautiful Strangers [Japanese Ver.]
今年7月にリリースされた4thアルバム『The Star Chapter: TOGETHER』のタイトル曲の日本語バージョン。〈Can’t stop calling you〉(君の名前を呼び続ける)と歌った前曲の「Can’t Stop」には〈唱えた呪文は just your name〉という歌詞があり、同様にこの曲でも〈君が僕を呼んだように/君を呼ぶ〉〈呪文解けた世界で〉と歌われていることから、この2曲がアルバムの核になっていることが読み取れる。かつて、TOMORROW X TOGETHERは「9と4分の3番線で君を待つ (Run Away)」で、“君”と“僕”を繋ぐために呪文を唱えた。一方で、この曲(または本アルバム)では魔法の力に頼るのではなく、自らの力で君と繋がろうとする姿が描かれているのだ。幻想的なシンセサウンドに乗るボーカルは儚さに加え、現実に向き合う力強さを併せ持っている。

YEONJUN
Where Do You Go?
「あなたはどこへでも行ける」という希望あふれるメッセージが込められた、ポップロックジャンルのナンバー。楽しそうな周囲と自分自身を比べて情けなく感じてしまう現代社会の生きづらさ、息苦しさを描きながら、そういった不安を抱える人たちに寄り添うように、5人は「誰になる必要もない」と自分らしく生きていくためのエールを歌う。メジャー調の明るいメロディと前のめりなバンドサウンドが自然と心を上向きにさせ、まるで手を差し伸べるような5人の凛々しいボーカルも相まって、聴き手を“自分”という物語の主人公に引き戻してくれる。誰の人生のテーマソングにもなり得るようなポジティブな一曲で、この曲をお守りのようにして聴く人も少なくないだろう。

BEOMGYU
Deja Vu [Japanese Ver.]
昨年4月にリリースされた6thミニアルバム『minisode 3: TOMORROW』のタイトル曲「Deja Vu」の日本語バージョン。『minisode 3: TOMORROW』では、過去に約束を交わした“君”を見つけ、再び出会うことで明日に進もうとする少年の物語が描かれていた。タイトルの「Deja Vu」=デジャヴは初めての経験にもかかわらず懐かしさを感じることを意味する言葉。そうした不思議な運命を手繰り寄せるような雰囲気を浮遊感のあるサウンドが引き立てており、〈逃げていた何度も/怖かったとても〉と弱さを曝け出しながら、〈誓える 何度廻っても/未来は君さ〉と、君とともにいる明日を願う5人の歌声もドラマチックに響いてくる。「ある日、頭からツノが生えた (CROWN) [Japanese Ver.]」を思わせる〈王冠〉のように、グループのこれまでの楽曲を連想させる歌詞が含まれていることも、過去と未来を結ぶような演出として活きている。

TAEHYUN
ひとつの誓い (We’ll Never Change)
昨年7月にリリースされた日本4thシングル『誓い (CHIKAI)』収録曲で、シンガーソングライターの大橋ちっぽけが楽曲制作で参加した一曲。流れるようなアコースティックギターとピアノの音色に乗せて歌われているのは、愛する人に向けた未来への誓いだ。〈例えば僕たちが あらゆることを/同じように感じて/生きていたら きっとこれほどまで/Ah 愛せなかった〉とお互いの違いを認め、相手に合わせて変わりながらも「永遠に一緒にいることは変わらないようにしよう」という想いが込められた歌詞は、「それぞれ違う君と僕がひとつの夢で集まってともに明日を作って行く」という意味を持つグループ名とも重なる。紐を楽器の弦に見立てて音を奏でるようなダンスパフォーマンスも注目を集めた。

HUENINGKAI
