リラックスして本を読む時間をどう確保するか。写真はイメージ(写真:Dasha Petrenko/Shutterstock.com)
読書の秋。「そう言えば最近、本を手に取っていない」という方が多いのではないか。日本人が本を読まなくなったと言われる中で、近年、各地に増えているのが本をテーマにした旅館やホテルだ。図書館並みに豊富な蔵書に囲まれ、好きな時に好きなだけ本を読む贅沢に浸る。この秋はそんな“読書リトリート”体験をしてみませんか?
(森田 聡子:フリーライター・編集者)
半年に読む本、「1冊未満」が過半
デジタル化が急速に進行する中、日本人が本を読まなくなったと言われるようになって久しい。
クロス・マーケティングが全国20~69歳の男女を対象に行った「読書に関する調査(2025年)」(1100サンプル)によると、週刊誌や漫画を除いて半年に読む本が「1冊未満」という人が51.6%と過半を占めた。とりわけ40代は男性が51.8%、女性に至っては61.8%と「1冊未満」の比率が高い。
2024年には、ビジネスパーソンから読書の時間を奪っている「全身全霊で働く社会」の危うさを問う『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(三宅香帆著、集英社新書)が話題となった。この調査結果も、仕事や子育てに忙しい世代ほど本を手に取る機会が減ってしまう現実を証明した形だ。
都内在住の50代の管理職の男性は、子供が大学生になって妻と2人で国内のリゾートホテルや温泉旅館巡りを始めた。旅行鞄の中に必ず詰めていたのが、書店で目に留めて購入しておいた本だ。
「ウィークディは仕事があるし、週末もゴルフが入ったりすると、じっくり本を読む余裕がない。その点、旅先では移動中も含めてたっぷり時間が取れるので、常に4~5冊は本を持っていくようにしていた」
旅の友は主としてビジネス関係の書籍や新書。そればかりだと気分転換にならないので、趣味の海外ミステリーも1~2冊入れるようにした。
荷物を減らすためにタブレットで電子書籍を読もうとしたこともあったが、「老眼のせいか、長時間タブレットを見るのはつらい。やはり、紙の本のページを繰るのが読書をしているという気にもなる」という。