【インタビュー】10-FEET、アニメ『ウマ娘 シングレ』オープニング主題歌に常識の打破「概念をも塗り替えるような音楽作りを」

10-FEETが10月8日、アニメ『ウマ娘 シンデレラグレイ』第2クール オープニング主題歌にして新曲「スパートシンドローマー」をリリースした。新曲としてはシングル「helm’N bass」以来1年3ヶ月ぶり。アニメタイアップとしては2022年12月公開映画『THE FIRST SLAM DUNK』エンディング主題歌「第ゼロ感」以来となる。
「私もスポーツをやっていましたが、練習の記録以上の記録を試合で出せた事は一度もありませんでした。精神と思考をどれだけ研ぎ澄ませてストライドに伝えてスパート出来るかどうかが鍵なんだと思いますが、とても難しい事に私は思います。それをウマ娘達は楽しむかの様に心に巡らせて走る。その姿からイメージして10-FEETのメンバーと共有して作りました。ぜひとも聴いてみてください」とは新曲「スパートシンドローマー」に関するTAKUMAのコメントだ。
そして完成した「スパートシンドローマー」は、“シングレ”の風を切るようなストーリーに並走する比類なきミクスチャーロック。革新的な楽曲構成、研ぎ澄まされたアレンジ、ボーカルのハーモニーやその多重感など、聴きどころに事欠かない新曲について、3人にじっくりと語ってもらったロングインタビューをお届けしたい。
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■今の僕らの一番の音楽作りをすれば
■オーダーを超える音楽ができるんじゃないか
──10-FEETが、数年前から愛用する機材を見直していることは、先ごろBARKSで公開したパーソナルインタビューのとおりです。TAKUMAさん、NAOKIさん、KOUICHIさん、それぞれがストレスなく自分の求める音が作りやすくなっているようですが、楽器と接していて、フレーズやプレイのインスピレーションが活性化される感じも?
TAKUMA:あるんじゃないですかね。これまでも、“けっこういい音でできてるんちゃうか”とか“これ、ええんちゃう”って、あまり妥協なくやってきていたんです。ところが、機材を更新して気づくというか、“ええと思ってたけど、もっとええところがあった”みたいな。違うタイプも発見できますしね。“実はこういうことを自分はしたかったんや”という気づきもあるし、すごく良かったなと思う。
▲TAKUMA (Vo / G)
──音が変わるだけで、弾くフレーズも変えたくなったりしませんか。極端な話、歪んだ音なら攻めのリフを弾きたくなるだろうし。
NAOKI:クリーンだったら、ちょっと色気のあるフリーズを弾きたくなりますね。音的なことを言えば、昔よりも気になる箇所の幅は狭まったような気はします。たとえば、ライブ会場ごとの鳴りも含めて若干の違いはあるんですけど、気になるポイントが狭まっているから、微調整で済む。自分のベーシックな音が出来上がっていってるのかなと思ってます。
TAKUMA:だいぶ遅れて悪いけど、さっき「色気のある“フリーズ”」って言ったよな? “なんも言わんで話を続けやがったな”と思って聞いてたけど、もったいない気がして、一応ツッコんだ(笑)。
KOUICHI:ははは。
NAOKI:いや、“フリーズ”でも伝わってたなと思って、“フレーズ”と言い直さなかった流れ。
TAKUMA:聞いてる側もウンウンって感じやったし、“あ、二人ともあかんわ!”と(笑)。
──言葉がちょっとぐらい間違っても分かります。
KOUICHI:なんとなくね(笑)。
▲NAOKI (B / Vo)
──話を再開させて(笑)、KOUICHIさんはドラムを一新しましたが?
KOUICHI:ドラマーとして、叩いてて気持ちいいですよ。そこからインスピレーションが生まれるってことになっていたらいいですけど。とにかく単純に楽しいです。
──ミュージシャンとして音への妥協を許さない姿勢は大事です。さらに追求心も高まるし、同時に視野も広がりますから。その流れから今回の新曲「スパートシンドローマー」です。3分47秒の中に、やりたいことをやりたいだけやってますよね。
KOUICHI:やりたいことやってると思います。
TAKUMA:久保建英くんが、「メキシコやアメリカ相手にやりたいことやれないと、ワールドカップで優勝はできない」と言ってたんで、僕もやりたいことやっていこうかなと思って。
▲KOUICHI (Dr / Cho)
──コンパクトに3分台にまとめながらも、その時間内に収まらないぐらいのアイデアとフレーズとアプローチを展開しています。勢いのままに聴き流しちゃいけない曲ですが、きっかけは、どういうふうに生んだんですか?
TAKUMA:単純に出だしのハーフのAメロみたいな“♪瞑想シンクロ脳波”ってところと、いわゆるサビのアップテンポなリズムがあって。そこをベーシックに、Bメロをどうしようか、という感じでした。あと、『ウマ娘 シンデレグレイ』の主題歌でもあるので、スピード感をどこでどういうふうに出そうかってことは考えましたね。
──『ウマ娘 シンデレグレイ』側からのリクエストはありました?
TAKUMA:曲を作り始めた当初、先方さんが“アスリートが競争するような作品なので、スピード感を”ということを言ってくれたんですよ。でも、それはザックリしたイメージの共有くらいのもので。具体的に細かいオーダーをしないってことは、僕らに対して、創作を狭めないようにしてくれた気がしたんです。
──『ウマ娘 シンデレグレイ』主題歌ということに、作曲段階から変に縛られなくてもいいですよ、ということですか。
TAKUMA:そうだったと思います。作り始めのとき、メンバー3人の会話でよく言ってたのが、「とにかく好きなように、なにも考えずに作って、曲を渡したときに、“ちょっと待ってください。言ってたイメージと全然違うじゃないですか。でも、こっちのほうがいいです”と言ってもらえるような曲を」ということで。だから、イメージに沿う、沿わないじゃなくて、今の僕らの一番の音楽作りをすれば、オーダーを超えるようないい音楽ができるんじゃないかって。
──はい。
TAKUMA:あと、もともとオーダー通りに作れる器用さは、僕らにはないんじゃないかってことから始まったんですよ。だから今、僕らがワッと全力で音楽をやったとき、出てきたものが一番いい曲になる音楽作りをしようって。それで頭をひねって考えなあかん局面になったとき、原作のイメージを視野に入れたら、より良い音楽作りになるんじゃないかと思ってました。
