2025年10月4日、テアトル新宿にて、映画『アフター・ザ・クエイク』公開記念舞台挨拶が行われ、鳴海唯、渡辺大知、佐藤浩市、のん、井上剛監督が登壇。また、岡田将生からのビデオメッセージも紹介された。
原作は村上春樹氏の傑作短編連作『神の子どもたちはみな踊る』をベースに、一部時代設定を変更し、1995年から2025年の30年にわたる物語として生まれ変わった作品。
1995年から2025年までの30年間を舞台に、阪神・淡路大震災以降に喪失感を抱える4人の主人公の人生が、時空を超えて繋がっていく希望の物語。NHKドラマ「地震のあとで」(2025年4月放送)に新撮シーンを追加し、映画版として再編集・再構築された。
舞台挨拶レポート

奥浜レイラ(MC)/渡辺大知/鳴海唯/佐藤浩市/のん/井上剛監督
■トークノーカット動画レポート

■フォトレポート
鳴海唯(順子 役/2011年パート)
昨日無事に公開を迎えることができ、安堵の気持ちと、この映画が皆さんにどう受け取っていただけたのかというドキドキした気持ちでいっぱいです。撮影の舞台裏などを聞きたくなるような映画でもあると思うので、この時間で少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。

鳴海唯

渡辺大知(善也 役/2020年パート)
この映画は、ドラマ版もありましたが、こうして映画という新しい形で公開されることがすごく嬉しいです。
見た人によって様々な感想が湧き、人と言いたくなる、話したくなる映画だと思います。
見終わった後、皆さんが「僕はこう思った」「私はこう思った」という話をたくさんできる作品になっていたらいいなと願っています。

渡辺大知
佐藤浩市(片桐 役/2025年パート)
今日は(雨で)お足元の悪い中、お越しいただきありがとうございます。この映画は、見終わって外に出たらカラッと晴れているというような映画ではありません。
しかし、雲の合間、隙間からふとした晴れ間を覗けるような、一縷(いちる)の望みを感じていただく、それを探す、そういう作品だと思います。ぜひ気に入っていただけたら、ご家族や友人に勧めてください。

佐藤浩市
のん(かえるくんの声)
かえるくんの声を演じました、のんです。私は現場にいなくて、全部撮り終わってから参加したので、今日この場に参加できてとても嬉しく思っています。本当に素晴らしい作品だと思っているので、たくさんの方に見ていただきたいです。

のん

井上剛監督
昨日公開になったばかりですが、やっと皆さんの前で見ていただけるということで、すごく嬉しいです。今見終わったばかりの皆さんにすぐ感想を聞きたいぐらいなのですが(笑)、またいろんな人に口づてで伝えていただけたらと思います。

井上剛監督
監督に聞く、映像化のきっかけ
‐25年前に刊行された村上春樹さんの原作を、今改めて映像化しようと思われたきっかけを教えてください。
井上剛監督
今年(2025年)が阪神・淡路大震災から30年という節目の年であるためです。以前、震災を題材とした作品を作った経験があり、今年何か自分にできることはないかと考え、プロデューサーの山本晃久さんからこの原作を渡されました。
村上春樹さんの作品と聞いてまず驚きましたが、実は約15年前に別の映画を撮る際に非常に参考にさせていただいた本だったので、強い縁を感じて映像化しようと決心しました。
‐今回、ドラマ版から映画に再構築されていますが、脚本のプロセスは先にドラマ版を書き上げてからだったのですか?
井上剛監督
脚本は、ドラマ版と映画版の両方を同時に考えて進めていました。

渡辺大知/鳴海唯/佐藤浩市/のん/井上剛監督
焚き火のシーンの苦労
‐2011年のパートで、家出少女の順子が焚き火を趣味とする三宅(堤真一)と交流する浜辺でのシーンは印象的ですが、CGではなく実際の炎での撮影で大変だったことはありますか?
鳴海唯
本物の火で全てのシーンが成り立っています。
火に助けられた部分もたくさんあるのですが、浜辺で火を焚いているため、風向きがすぐに変わってしまうのが大変でした。
その風に合わせてカメラのセッティングを変えながら撮影しなければならず、「自然には敵わないんだな」と度々思わされました。
スタッフさん含め、私たちも苦労したところだと思います。


‐(監督へ)やはり本物の火でないとだめだったのですか?
井上剛監督
そうですね。お芝居にリアリティを与えるものですから。監督やスタッフみんなで「焚き火台本」というものを作り、このぐらいの心情の時にはこれぐらいの炎がいいな、という理想形を記していました。でも、当然ながら炎は我々の感情の起伏に合わせては聞いてくれませんでしたね。
田端役・渋川清彦との共演
‐2020年のパートで、神の子どもとして育てられた善也を演じられた渡辺さんは、指導者である田端(渋川清彦さん)と再会するシーンで印象的だったことはありますか?
渡辺大知
渋川清彦さんとはプライベートで兄貴のように慕っていますが、今回が共演デビューでした。
久々に田端と対面するシーンの前に、僕が16歳の時(黒川想矢が演じた時代)に信仰を辞めると言った時の渋川さんの映像を見せていただいたんです。
そして現代で対峙した時、本当に10年どころか20年、30年も時が経ったような重みを感じ、一気に歴史を背負った渋川さんが目の前にいらっしゃいました。
実際は1~2日前に撮っていたらしいのですが、まるでタイムスリップしてきたかのように重厚感を覚えました。演技する前にまず圧倒されて、「さすがの兄貴だな」と思いました。

‐(監督へ)善也は言葉数が少ない役ですが、監督からはどのような演出がありましたか?
井上剛監督
大知くんとは、終盤の「踊る」シーンにどう繋げていくかを話し合っていました。
ベッドから起き上がる時など、普通だとスッと起き上がるところを、大知くんが少しコリオグラファー(振付師)のような動きを工夫していて、黒川くんにも似た動きをつけてもらいました。
‐ご自身で、動きに工夫された意図は?
渡辺大知
言葉数が少ない役だったので、善也が「神から操作されているような不安定さ」や「自分の意思では動いていない体」をどうやって作れるかと考えました。
試してみたところ、監督に「その感じで」と言っていただいたんです。作中のどのパートも、無意識化や悪夢の中に入る、あるいは地下に潜るなど、無意識の中に入っていく場面が多いので、その一つの表現方法を試させていただきました。

オリジナルストーリーとかえるくん
‐佐藤さんが演じられた片桐のパートは、原作から時を経て2025年を描いた完全オリジナルストーリー『続・かえるくん、東京を救う』です。身長2メートル以上のかえるくんとの共演で印象に残っていることはありますか?
佐藤浩市
声はのんさんが担当されてますが、現場では実際に声を出して演技を当ててくれる方がいました。
CG補正前の着ぐるみのかえるくんもいて、中には1メートル90センチか2メートルぐらいあるバスケットもできる俳優さんが入っていました。
で、質問の答えとは違うかもですが、最初、監督から渡された僕のパートの短編(『かえるくん、東京を救う』の続編)を読んだ時は「ちんぷんでさっぱりわからない」状態でした。
でも、その後に原作の連作全体を読ませていただいて、初めて「ああ、なるほど、そういうことか」と納得ができたんです。この続編という形や、他の3編と全体を通して理解した結果、かえるくんと共演する状況がどうであれ、僕は動じずに臨めました。

「かえるくんは救いになる役。責任重大だけど頑張ってみようと思った」
‐かえるくんの役が来た時の率直な感想は?
のん
かえるの役は初めてだったので(笑)、どんな声なんだろうとすごくびっくりしました。
新作の物語(続・かえるくん、東京を救う)の原作を読ませていただいた時、かえるくんの役が救いになる役だと感じ、意外と責任重大かもしれないと思いました。
井上監督とは以前、朝ドラ(『あまちゃん』)で大変お世話になっていた繋がりもあり、安心感から「飛び込んでみよう」と思って、やろうと思いました。

‐かえるくんは、他の戸惑いを抱えるキャラクターと異なり、ヒーローのように一直線に進んでいる印象ですが、声で意識したことは?
のん
色々な鳴き声を試しました。以前、井上監督とご一緒した作品とはムードが全く違ったので、最初は緊張感を持ってレコーディングに臨みました。
でも、現場では「変わらず井上監督ワールドで、警戒で明るい演出」をいただいたので、すごく楽しくノリノリでやりました。
あとは、佐藤さんの演技に集中することをとても気をつけました。映像を見ながら演じることができたので、佐藤さんの演技の間や息遣いを敏感に感じ取りながら演じられるよう集中していました。

のん/かえるくん

佐藤浩市/のん
‐(佐藤さんへ)のんさんの声が当てられたかえるくんをご覧になっていかがでしたか?
佐藤浩市
彼女がどういう覚悟を持ってやるかなっていうのは最初に思っていたましたが、そこの中で、やっぱり自分がこれではいけないんだってことを色々気づきながらやったなってことを感じられるぐらい、「かえる=のん」になっていたのは、「あ、頑張ったな」っていう、上から目線で申し訳ないけど(笑)でも、それぐらいの覚悟を感じられたんで、すごくよかったと思いましたね。


‐(監督へ)かえるくん役にのんさんを起用された理由は?
井上剛監督
スタッフみんなで話していて、一致した意見でした。かえるくんだけがブレない生き物であり、その一直線の強さと、イノセンス(無垢さ)な感じを声に求めていたからです。また、ユーモアの要素もあって、それは「のんさんじゃないか」という話になりました。


岡田将生ビデオメッセージ
舞台挨拶の後半では、残念ながら欠席となった岡田将生からの映像コメントが上映された。
岡田将生(小村 役/1995年パート)
小村役を演じました岡田将生です。今日、皆さんと一緒に登壇することが叶わなかったんですが、無事に公開2日目を迎えられたこと本当に嬉しく思っております。
見た人の数だけ解釈が分かれる作品だと思いますので、皆さんの感想が本当に楽しみです。村上春樹さんの唯一無二の世界観を、最後まで楽しんでいただけたら幸いです。

岡田将生
締めのメッセージ
最後に、佐藤浩市さんと井上剛監督から、作品を代表して改めて観客へメッセージが送られた。
佐藤浩市
なぜ今回の作品がこの4本の短編なのか、なぜかえるくんは続編なのか。僕はそこはかとなく井上監督の思いを感じたんですが、これは岡田(将生)君が言ったように、見る人にとって、再生の話なのか、蘇生の話なのか微妙に解釈が分かれると思います。そのニュアンスを楽しむというか、自分の中で感じていただきたい、そういう映画だと思います。

井上剛監督
この日本の30年の節目を、4つの章で描かせていただきました。この4つのエピソードはたまたま並んでいるのですが、多分見た人それぞれの中で個人個人の節目があると思うのです。ぜひ、この4つの物語の間なのか、この後のお話なのか、ご自分の中にある物語を感じて、想像していただけたら嬉しいです。

■フォトギャラリー
[動画・写真・記事:三平准太郎/写真:金田一元]
映画『アフター・ザ・クエイク』
《INTRODUCTION》
世界的作家・村上春樹の傑作短編連作『神の子どもたちはみな踊る』にオリジナル設定を交え映像化!一流の製作陣が集結し、新しい村上ワールドを創造する。
25年前の作品とは思えないほどますます現代性を帯び、今も世界中で愛読されている村上春樹の短編連作『神の子どもたちはみな踊る』(新潮文庫刊)。全6編からなる原作から「UFOが釧路に降りる」「アイロンのある風景」「神の子どもたちはみな踊る」「かえるくん、東京を救う」の4編を元にオリジナル設定を交え再構築。
監督を務めたのは連続テレビ小説「あまちゃん」や大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」など数々の話題作を手掛けてきた井上剛。天災を描き続けてきた井上が、ドラマ・映画共に高く評価された『その街のこども』制作時に指針として常に読み返していたという原作の映像化に満を持して挑んだ。
脚本を『ドライブ・マイ・カー』の大江崇允、音楽を『花束みたいな恋をした』の大友良英、気鋭の撮影スタッフが集い新たな村上ワールドを創り上げた。
本作はギャラクシー賞を受賞したNHKドラマ「地震のあとで」(2025年4月放送)と物語を共有しつつ、4人を結ぶ新たなシーンが加わり、30年という時代のうねりを映し出した1本の映画として生まれ変わった。
<日本映画界屈指の豪華俳優陣が集結!
岡田将生、鳴海唯、渡辺大知、佐藤浩市が主演を務め、のんが“かえるくん”に命を吹き込む!>
小村を演じるのは『ドライブ・マイ・カー』に続き2度目の村上作品となる岡田将生。旅先で出会う女性たちに翻弄されながら、自身と向き合っていく様を真摯に演じ切る。
順子を演じるのは連続テレビ小説「あんぱん」への出演が決まり今勢いを増す鳴海唯。か弱いながらも芯の強さを秘める役柄を、確かな演技力で瑞々しく表現する。
善也を演じるのは俳優として活躍の場を広げる一方で、音楽活動など多方面で才能を発揮する渡辺大知。特殊な家庭環境に育った戸惑いと葛藤を見事に演じ切った。
片桐を演じるのはその圧倒的な存在感で物語を牽引する名優・佐藤浩市。かえるくんと対峙することで、蓋をしていた過去に向き合う様を全身全霊で体現する。
脇を固めるのは堤真一、唐田えりか、吹越満、黒崎煌代、黒川想矢、津田寛治、井川遥、渋川清彦、錦戸亮など幅広い年代の豪華俳優陣が集結。
そしてかえるくんの声をのん、小村の妻・未名を橋本愛が演じ監督が絶大な信頼を寄せる「あまちゃん」コンビが重要な役割を担い、奇妙で美しき物語世界を彩る。
《STORY》
1995年、妻が姿を消し、失意の中訪れた釧路でUFOの不思議な話を聞く小村。
2011年、焚き火が趣味の男と交流を重ねる家出少女・順子。
2020年、“神の子ども”として育てられ、不在の父の存在に疑問を抱く善也。
2025年、漫画喫茶で暮らしながら東京でゴミ拾いを続ける警備員・片桐。
世界が大きく変わった30年、人々の悲しみや不幸を食べ続けたみみずくんが再び地中で蠢きだした時、人類を救うため“かえるくん”が現代に帰ってくる―。
出演:岡田将生 鳴海唯 渡辺大知 / 佐藤浩市
橋本愛 唐田えりか 吹越満 黒崎煌代 黒川想矢 津田寛治
井川遥 渋川清彦 のん 錦戸亮 / 堤真一
監督:井上剛
脚本:大江崇允
音楽:大友良英
プロデューサー:山本晃久 訓覇圭
アソシエイトプロデューサー:京田光広 中川聡子
原作:村上春樹『神の子どもたちはみな踊る』(新潮文庫刊)より
製作:キアロスクロ、NHK、NHKエンタープライズ
制作会社:キアロスクロ
配給・宣伝:ビターズ・エンド
©2025 Chiaroscuro / NHK / NHKエンタープライズ
予告編

2025年10月3日(金)より、テアトル新宿、シネスイッチ銀座ほかにて全国公開!

ポスタービジュアル
