【舞台裏インタビュー】<山人音楽祭2025>閉幕。G-FREAK FACTORY「ありがとうで三つ巴になったら、もう絶対悪いものにならない。10年目にしてそれができたのかな」

<山人音楽祭>2日目のG-FREAK FACTORYはすごかった。いや、いつだってすごいかもしれないけれど、この日は特にすごかった。

「G-FREAK FACTORY始めます」と茂木洋晃(Vo)が静かに言って、「jam (APPLAUSE)」からバンドがなだれこんだのは、アップテンポのレゲエロックナンバー「SOMATO」。タイトルをコールするメンバーのシンガロングが演奏に勢いをつける。その演奏がいつも以上にアップテンポに聴こえるのは、メンバー達の演奏が気迫に満ちているからか。早速ダイブを始めた観客を、茂木が煽る。「もういっちょ来い!」

あまりにも攻めたオープニングに気持ちが持っていかれた。この日のG-FREAK FACTORYは神がかっていたんじゃないかとも思った。「これだけ強い奴らの中で、よく最後まで生き残った」と茂木は観客を称えたが、同じことがG-FREAK FACTORYのメンバー達にも言えるはずだ。フェスの主催者として、2日間1日中、会場を駆け回ったり、出演バンドのステージに上がったりしてきた彼らは誰よりも疲れきっていたと思うのだが、それなのに、どうしてこんなにもキレキレのライブを繰り広げることができるのだろうか。そこに震えた。頭がぶっ飛んだ。

彼らのライブには欠かせないアンセミックなロックナンバー「Too oLD To KNoW」では、「<山人>に来たって証の声を!」と求めた茂木に応え、観客がシンガロングの声を上げた。

これもまた彼らのライブには欠かせないバラードの「ダディ・ダーリン」は、BRAHMANのTOSHI-LOWと茂木が歌声を重ねた。本編の最後を飾ったのは、アンセミックなロックナンバー「Fire」。曲を演奏し始める前に茂木が声を上げた。

「<山人音楽祭>に点いた火をどうか消さないでくれ!」

そして「Fire」を演奏しおえると、茂木は付け加えた。「ようやくみんなに点いた火を消さずに、忘れずにまた会おう!」G-FREAK FACTORYのライブを締めくくる「ローカルバンドの最高傑作、俺たちがG-FREAK FACTORYだ」という勝鬨が何時にも増して誇らしげに聴こえた。終演後、その理由を茂木が語ってくれた。

   ◆   ◆   ◆

──すごいライブでした。

茂木洋晃(Vo):あ、ほんとですか。よかった。

──あんまりこういう言葉を軽々しく使うのはよくないと思うのですが、ライブを見た直後の興奮のせいにして言わせてもらうと、神がかっていたんじゃないかと思いました。なので、まずはバンドマンとしての今日のライブの感想から聞かせてもらえないでしょうか?

茂木:悔しい部分はやっぱりあって。

──えっ、あるんですか!?

茂木:あるあるある。それはもう尽きないと言うか、もっとやれるなって思うところはやっぱりあるんだけれども、困憊して乳酸がたまりまくってる体で絞り出した、ぼろ雑巾みたいなライブが今日はできたかなって思います。マイクを持つ握力すらもうなくなっちゃって、声も全身で出さないと届かねえなって思った瞬間があって、そのあとにボーンって立ちくらみみたいになって、会場はこんなに広いのになぜか酸欠になってるみたいな。いい意味で、そういう重たさっていうか「最後まで生かすぞ、こいつを」みたいなフロアの熱に自分が応えていくっていうか、それ以上に行かないとみたいなところのせめぎ合いっていうか。久々に、そういうちっちゃなライブハウスでよけられるものなんて1個もねえぞ、みたいな感じの試合が大きな会場でできたんだなって思います。

──困憊とおっしゃったんですが、まさにそこなんですよ。「これだけ強い奴らの中で、よく最後まで生き残った」とお客さんのことを称えていましたけど、それはG-FREAK FACTORYのメンバーにも言えるんじゃないですか。当然フェスの運営で忙しいから、ライブに多少綻びがあってもしょうがないと思う気持ちは、もちろんこれっぽっちもないわけですし。

茂木:結局ステージの裏なんて見えないし、お客さんには関係ない話で、もちろん出演者にも関係ない話だから。今日もほぼ座ってないんだけど、昨日は飯を食わずに1日過ごしちゃったから、さすがに今日は途中で飯は食ったけど。ずっと動いてたから、なんだか1日があっという間に終わっちゃったな。2日間が、リハから数えたら3日間が。あっという間に終わっちゃったなっていうのが正直な感想です。

──フェスの主催者からバンドマンに気持ちが切り替わる瞬間が、どこかであるんですか?

茂木:切り替えるのは、今日だったらBRAHMANのライブの時だったかな。それまではやっぱり頭の片隅にずっと、主催者としての不安とか心配とかがあって。お客さん、出演者、スタッフ、みんな不便にしてないかなって──俺は心配性だからあれだけ動いてるけど、恐らくはもっと任せてよくて。ステージからステージのアクセスはどう考えてもバックヤードからのアクセスが一番いいはずなのに、これだけ疲れるってことはお客さんはその何倍ものエネルギーを使ってこの会場を楽しんでくれてるんだって思えば、俺なんてまだまだだなって思う。自分のフェスに限らず、離れたステージや会場に行くときは、俺いつも歩くんですよ。このステージまで来てくれたお客さんって、どのくらい時間かかるんだろうって知るために。普通はハイエースでステージまで直で送ってくれるから、それに乗って行けばはもちろん楽だしいいライブができるのかもしれないけれども、お客さんに対して「あ、この坂道を登ってここまで来てくれたんだ」みたいな気持ちを持ったほうが、やっぱりいいライブができるって信じてる。今日も会場の外周を歩いてみたりとか、会場の前の公園に行ってみたりとか、ずっと動いていた結果、そういうライブになったんだなって信じてます。

──BRAHMANのライブを見ている時にバンドマンの気持ちになったという話をもう少し聞かせてほしいんですけど、それは負けられねえなという気持ちがきっかけになるんですか?

茂木:いや、負けられないっていう気持ちはどのバンドに対してもなくて。とにかくもう、みんなものすげえライブをするんですよ。

──そう思います。

茂木:その中で、昨日だったら、10-FEETが自分たちの前をやってくれて、バンドマンにならせてくれた。何だろう、安堵感なのかな。「ここまででもう大丈夫。おまえはもうライブにちゃんと集中しろ」って言われてるように感じる瞬間があるんだよね。ほんとに。

──いつもすごいですけど、今日のG-FREAK FACTORYは本当にすごかったですよ。

茂木:いや、もうギリギリでしたよ。ほんとに。だから、できるんじゃないのかな。余裕なんかこれっぽっちもなかった。久々に必死にやらないと何も届かないよなって思いました。出演者やスタッフに対してもそうだけど、お客さんに対しても、ありがとうっていう気持ちが欠落してしまうと、一瞬でぶっ壊れる。やっぱりオーガナイザーとしては、お客さんと出演者にありがとうって気持ちをずっと持っていたいし、お客さんにもね、出演者とオーガナイザーにありがとうって気持ちを持ってもらいたいし、出演してくれたバンドにも、お客さんやオーガナイザーにありがとうって気持ちを持ってもらいたい。ありがとうで三つ巴になったら、もう絶対悪いものにならないんですよ。でも、見てやってるってお客さんがいたりとか、やってやってるよっていうバンドがいたりとか、出してやってるっていうオーガナイザーがひとつでもあると何か違和感をめちゃくちゃ感じるので、利益とかプロモーションとかそういうことじゃないものがやっぱりやりたいし、10年目にしてそれができたのかなって思います。

──「来年もやる責任があると思った」とMCでおっしゃっていましたけど、それは今回初めて感じたんですか?

茂木:いや、むしろ前のほうが感じてましたけど、できない約束はしたくないなって思っていて。正直楽じゃないし、ある程度の時間をかけないとこんな大きなことを無責任にはできないわけだから、10年やったときにどういう気持ちになるのかまったくわからなかったけど、今日はもう言ってしまった。毎年、当たり前のようにあるフェスと思ってもらっても困るし、自分たちも毎年動ける体制やモチベーション、エネルギーを持ち続けられるのかということだって、正直もうわからないなと思ってて。でも自分が燃えていれば、きっとその周りも同じように燃えていくし、自分が冷めてたら一瞬で終わっちゃうから。

──本編最後の「Fire」を歌い終えてから、「ようやくみんなに点いた火を消さずに、忘れずにまた会おう」とおっしゃっていましたね。

茂木:そういうところの確認を今日してしまって、ただ、会場がもしかしたらここじゃなかったりするかもしれないけど、やっぱり<山人音楽祭>というものを来年もやる責任はあるなって思いました。

──「大きなことがいいわけじゃなくて、もっと濃くなればいいんじゃないか」ともおっしゃっていましたね?

茂木:濃くなっていくことが目的だと、勝手に大きくなると思っていて。要は、大きくするための順序をまちがえると、とてもインスタントなものになるなって思うんですよ。たとえばライブで演奏するってことも、お金のためにやるんじゃなくて、やったことがお金になればいいだけの話で。その順番が大事だと思うから、やっぱり大きくなることが一番の目的ではないな。もちろん、大きくなることは悪いことじゃなくて全然いいことで、これから先ももっと大きくしていきてえなって思うけれど、それが一番の目的ではないから、「いや、もうこれじゃキャパが足んなくなっちゃった。どうしよう」っていう悩みに早く行きたい(笑)。それには濃い奴がやっぱりいないとね。単純に、ただでかくしていこうっていうのは、なんだかとても寂しいし、そんなものは長く続かないと思う。

──「強くて好きな人しかオファーしてないです」ともおっしゃっていましたけど、“濃い奴”となると回を重ねるごとに出演者のブッキングは難しくなっていくんじゃないでしょうか?

茂木:もちろん、36組のアーティストをブッキングするってすごく難しいですよ。遊びじゃないし、でも遊びたいし……みたいなところが難しい。新鮮さももちろん必要だけど、だからってまったく関係性のないアーティストをぶっこんでいくのも違うし。やっぱり難しいですね、そこは。ただ、やっぱりちゃんと好きな人たちにしっかり正面からオファーしていくって形は変えずに、どうやったら新しさを入れてブラッシュアップしていけるのかなって考えると、俺は地元のバンドかなと思ってます。もちろんさっき言ったように遊びじゃないんで、正直あり得る話なのかわからないけど、そこは諦めずに群馬のバンドと1ページ刻めるようになったら、このフェスももっともっとかっこよくなるような気がします。それはずっと思ってたことなんだけど、10年やってきて、それができる時が来たんじゃないのかなって思ってます。

──では、最後に2日目の総括をお願いします。

茂木:そうだなぁ。

──「ローカルフェスの最高傑作にようこそ」と言った後、「昨日を含め、今のところ1つも問題があったって届いてない」とおっしゃっていましたね。

茂木:去年は、たった数人の奴のために壊されて、本当に悔しい思いをした。夢にまで出てくるくらいにね。バンドだけじゃなくて、<山人音楽祭>に名を繋いでくれてる俺の仲間すら、全員ナメられちゃったな。とんでもなくいいライブをしてくれてるのに、それがこういう結果になって返ってくるんだって、正直もう悔しさしかないっていうか。例えば、めちゃくちゃきれいな景色の場所で立ちションしないでしょ(笑)。

──しないです、しないです(笑)。

茂木:それと同じ感覚なのかな。こういうところでそういうことをするってことは。今年はそういうメッセージが、たとえば女性限定エリアっていうのを設けただけで、そいつらにも届いたんじゃないのかな。そういうことも含めて、<山人音楽祭>の挑戦だったと思うけど、その意味ではもう大成功だったと思います。だから、今はもう安堵感しかありません。

取材・文◎山口智男
写真◎淵上裕太
ライブ写真◎HayachiN

■G-FREAK FACTORY主宰<山人音楽祭 2025 ~10th Anniversary~>
9月20日(土) 群馬・日本トーターグリーンドーム前橋
9月21日(日) 群馬・日本トーターグリーンドーム前橋
〒371-0035 群馬県前橋市岩神町1-2-1
open9:30 / start11:00 / 終演20:00※予定

▼9/20(土)出演者
Age Factory / ENTH / かりゆし58 / 氣志團 / KOTORI / G-FREAK FACTORY / SHANK / 上州弾語組合 / SKA FREAKS / 高木ブー / DJダイノジ(大谷) / 10-FEET / TOTALFAT / 花冷え。 / HAWAIIAN6 / The BONEZ / locofrank / ROTTENGRAFFTY(※五十音順)
“能登半島応援企画 MAKE A PROMISE TO NOTO (Tokyo Tanaka×バカビリー×高橋ちえ)”
▼9/21(日)出演者
片平里菜 / G-FREAK FACTORY / J-REXXX BAND / JUN SKY WALKER(S) / 上州弾語組合 / 四星球 / 竹原ピストル / NakamuraEmi / バックドロップシンデレラ / ハルカミライ / Hump Back / BANYAROZ / 04 Limited Sazabys / FOMARE / BRAHMAN / HEY-SMITH / 山嵐 / LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS PLUS(※五十音順)

『山人MCバトル×戦極MCバトル』※開催は9/21(日)
Armadillo / bendy / DOTAMA / FCザイロス / GOMESS / KOOPA / 溝上たんぼ / NAIKA MC / 歩歩 / risano / Sitissy luvit
DJ:R da Masta
司会:K.I.G

『上州弾語組合』
9/20(土) 清水 明夫 / KIE Anderson / garb / 16号。 / 横山 ナオ / 上原梅弦
9/21(日) 高平 悠 / 山口 貴大 / 茂木 拳 / 鹿山 音楽 / ジュンペイ / 藤井 トモカズ

▼チケット
・各1日券 9,500円(税込)
・2日券 18,000円(税込)
・駐車場付 1日券(9/20)※SOLD OUT
・駐車場付 1日券(9/21)※SOLD OUT
・駐車場付 2日券 ※SOLD OUT
(問)DISK GARAGE https://info.diskgarage.com
主催:DISK GARAGE/BADASS/上毛新聞社
企画・制作:DISK GARAGE/BADASS

Leave A Reply