竹内は、その前後で“演じること”について、立ち止まって深く考えた時期があるのではないだろうか。というのも2020年以降演じるキャラクターがぐっと複雑化しているからだ。底知れぬ絶望感を抱えていたり、物語の最初と最後では別人級の変貌を遂げる(成長する、または別の顔を見せる)など、事前の作り込みの困難さが想像できる役が徐々に増えている。

 例えば、『君と世界が終わる日に』(2021~2024年/日本テレビ系・Hulu)は4年に渡って続いた大人気シリーズ。ゴーレムと呼ばれるゾンビに占拠された死と隣り合わせの“終末世界”を舞台に、竹内演じる主人公の間宮響が生存をかけて恋人や仲間たちと共に敵対組織と闘う。竹内は役のイメージに合わせるために体を鍛え上げて臨み、シリーズを追うごとに変化していく響の心情や成熟感も見事に演じきっている。

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 また、湊かなえの小説が原作の『落日』(2023年/WOWOW)でも竹内の演技は卓越していた。15年前、高校生の妹・沙良(久保史緒里)を刺殺後、自宅に放火した引きこもりの男性・立石力輝斗を演じているのだが、服役中の現在と15年前を行き来する設定で、2役とも言える役づくりが実に見事。事件の真相に近づいた時のシーンでは、人間の一番深いところが剥き出しとなる瞬間を偶然カメラが捉えてしまったのではないかと思えるほどの衝撃を見る者に与えた。

 そして『ペルソナの密告~3つの顔をもつ容疑者~』(2023年/テレ東系)では、連続誘拐事件の容疑者の青年・元村周太を怪演。元村は「解離性同一性障害(DID)」を抱えており、気弱な本来の人格以外に、暴力的な“バク”、天才的な知能を持つ自称7歳の“カブト”が何かの拍子で入れ替わるという設定であり、竹内はこの3つの人格を目つきから口調や動作、さらにはその空気感に至るまで完全に切り替えて表現。元人格の時は背が小さく、“バク”の時は大きく感じられたりと、場の占有率や支配力まで変化しているように演じ分けている。

竹内涼真、主演でも助演でも変わらない感覚 “心待ちにしていた”木村拓哉との共演を語る

テレビ朝日系木曜ドラマ『Believe-君にかける橋-』では、木村拓哉扮する土木設計家・狩山が過酷な逃走劇を繰り広げている。

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 木村拓哉主演ドラマ『Believe-君にかける橋-』(2024年/テレビ朝日系)では刑事と被害者の2役を熱演。メインの役どころである刑事・黒木はかなり実験的に試行錯誤を重ねて人物造形を行ったように感じられた。黒いロングコートにサングラスでいかにも“ダークヒーロー”的なたたずまい。不敵な笑いを見せた後、優しそうな表情に、かと思えばいきなり激昂し煽るなど、独特な間合いと緩急のある演技は、サスペンス感を大いに盛り上げた。

 常に“ラクではないほう”を選び、“まだ見ぬ竹内涼真”の開発を積極的に推し進め、結果的に “存在感を自在に操る力”をも得たのだろう。もはや、“爽やか”や“好青年”だけでは形容できない多層的な演技の幅と深さを手に入れている。

 果たして『看守の流儀』では、どんな竹内が見られるのか。 “情熱あふれる若き刑務官・宗片”を、どう演じてくれるのか。今の竹内だからこそ演じられる世界を存分に味わいたい。

■放送情報
ドラマプレミアム『看守の流儀』
テレビ朝日系にて、6月21日(土)21:00~放送
出演:竹内涼真、木村文乃、北村一輝、星野真里、小沢真珠、渡辺大、寺島進、内藤剛志、柄本明、山田純大、近藤公園、濱津隆之、山口祥行、ロザリーナ、井上祐貴、阿佐辰美
原作:城山真一『看守の流儀』(宝島社)
脚本:橋本裕志
監督:深川栄洋
音楽:福廣秀一朗
エグゼクティブプロデューサー:内山聖子(テレビ朝日) 
プロデューサー:山川秀樹(テレビ朝日)、和佐野健一(東映)、高木敬太(東映)
制作:テレビ朝日、東映
©テレビ朝日

星野悠実

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演劇ユニットVOICE Lab.主宰、ライター、インタビュアー、マーケティングリサーチャー(定性)。湘南在住。

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