2004年9月、ロサンゼルスのプライベート・ムービー・スタジオで写真撮影に応じるデヴィッド・リンチ。
Photo: Gilles Mingasson/Getty Images
1月16日(現地時間)、ダークでシュールな物語を得意とした映画界の巨匠、デヴィッド・リンチ監督が78歳で亡くなった。ミュージシャン、ビジュアルアーティスト、俳優でもあった彼は、その40年以上にわたるキャリアを通じて唯一無二の美学を確立し、不気味で不穏、そして何よりも夢のような世界観を表す「Lynchian(リンチ的)」という形容詞さえも生んだ。
そんな彼がこの世に送り込んだ作品──イザベラ・ロッセリーニがグラマラスな歌手を演じた『ブルーベルベット』(1986)や、ローラ・ダーンとニコラス・ケイジが逃亡中の恋人同士を演じた『ワイルド・アット・ハート』(1990)、そして彼のフィルモグラフィのなかでも一番の不朽の名作に挙げられる伝説のテレビドラマ「ツイン・ピークス」(1990-91年)が、数多くのファッションデザイナーたちに影響を与えたことはまったく驚くにあたらない。
リンチ的な世界観は非常に広く、そのインスピレーションはランウェイに実にさまざまな形で登場してきた。コム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)が2016年春夏「ブルー・ウィッチ」のショーで『ブルーベルベット』のサウンドトラックを流したように、あるいはクリーチャーズ・オブ・ザ・ウィンド(CREATURES OF THE WIND)が2017年春夏ショーで歌手のジュリー・クルーズに「ツイン・ピークス」のテーマ曲を歌わせたように、デザイナーたちはときに音楽の力を借りたりもした。
一方、ラフ・シモンズ(RAF SIMONS)や アンダーカバー(UNDERCOVER)の高橋盾といったデザイナーは、リンチの作品からアイコニックなシーンに目をつけ、プリントで服を飾った。MSGMの2017-18年秋冬ショーでは、マッシモ・ジョルジェッティが松の木やフクロウ、ローラ・パーマーにちなんだチュールスカート、そしてデイル・クーパー捜査官とチェスター・デズモンド捜査官のチーム名にもなった「青いバラ」など、「ツイン・ピークス」の細部にまで触れている。