今から約3年前にマレーネ・マリングが立ち上げたラ バガテル(LA BAGATELLE)は、ヴィンテージなどの貴重なテキスタイルを用いたユニークピースを展開するレーベルだ。初参加となった2025年春夏コペンハーゲン・ファッション・ウィークでは、ラズベリーやチェリーといったフルーティーなカラーパレットにゴールドの煌めきを添えた最新コレクションを披露し、その表情豊かなラインナップでインサイダーたちの心を射止めた。
「デザイナーになりたいと思ったことはありません。でも、服がほかの何よりも好きでした」と話すマリングは、デンマーク生まれ。10代の頃にロンドンへ移り住み、そこでファッション史の修士号を取得した。
「衣服を通じて物語を語ることにいつも惹かれていた」という彼女は、デンマーク版『ELLE』とボニエ・パブリケーションズの『COSTUME』誌の編集長として、さらにはファストファッションブランドのヴェロ モーダ(VERO MODA)のクリエイティブディレクターとして、多彩な視点からその物語を紡いできた。また、広告会社のオーナーでもある彼女は、2005年から2017年までデンマークのスタイル誌『Cover』とその関連誌である『Cover Kids』、『Cover Man』、『The Horse Rider’s Journal』の発行を手がけた経歴も持つ。こういった多岐にわたる編集の経験が、ラ バガテルでのクリエイションに影響していることは驚くには当たらないだろう。
すべての始まりは、パンデミック中に出合った日本とネパールのテキスタイル
Phoro: Emilie Holm / Courtesy of La Bagatelle

Phoro: Rasmus Skousen / Courtesy of La Bagatelle
ラ バガテルのアイデアがまとまり始めたのは、パンデミックにより外出が規制されたときのことだった。マリングが本の企画から気を紛らわせていたとき、ある男性から買い取った70年代のネパールと日本のヴィンテージ生地に目が留まったという。
「オフィスに小さなファブリックロールがあったんです。(企画に)締め切りなどはなかったから、ある日これを使って何か美しいものを作ったらいいかもと思い立ったんです。ネットに『誰かテーラーを知りませんか』と投稿したら、いろんな人が返信をくれて……。それがやる気になったというか。みんなに聞いたんだから、実現しなくちゃいけない、という気持ちで始めました。とても直感的でしたし、パーソナルなことをやりたいという想いがありました」

Phoro: Emilie Holm / Courtesy of La Bagatelle

Phoro: Emilie Holm / Courtesy of La Bagatelle
ラ バガテルのデザインは、すべてテキスタイルから始まる。ジャケットは100年前の日本製生地で仕立てられ、ドレスはスペインのウエディングレースで縁取られるなど、世界中から入手した多様な素材がそれぞれのアイテムに用いられている。一方のシルエットは伝統的で、重ね着しやすいよう考えられており、全体的に70年代のリヴ・ゴーシュやボーホーを想わせる雰囲気だ。
