【朗読】江戸川乱歩:白い羽根の謎 原作「化人幻戯」児童向けリライト版より(5)
アバ 調べ美浦刑事は待っていましたとばかり 手帳をめくっ た大川さと少女君と自動車に運転手は熱海 の別荘へ行っていましたそれを除くと後に 10人残ります支配人の黒岩老人夫人の ウバ種田富玄関版の少年小遣い2人お 手伝い2人料理女庭番の老人 それから運転手の妻ですこのうち半分は1 日うちにいましたしかし半分は23時間 以上外出していますそしてさらに5時間 前後うちにいなかったものはごく少なく 黒岩老人と種田富というおばあさんと婦人 好きの小遣いの3人です小遣いは根岸市の 実家へ帰っていて十分にありいがあります 黒岩老人は大川の近くに1軒家を持って別 に住んでいるのですがあの日は朝家を出て 小田原の知人を訪ねています私は小田原の 警察に頼んでその知人というのにも当たっ てみました訪ねたことは確かで一緒に料理 屋へ行って食事をしたり後を囲んだりして 1日を過ごし夜遅く帰ったと言うんですが 何しろ熱と小田原では目と花の間ですんで このありは私自身でもっと深く調べて見 なければ何とも言えません婦人のUBだっ た種田富は昼から夜遅くまで外出し1人で 歌舞伎座行っていますところがこの人には 偶然に証人が現れました夕方の5時頃 歌舞伎座の廊下で村越ひとばったりであっ て立ち話をしたというんです私は2人から これを聞きたたしましたですからこの2人 には完全なありいがあるわけです村越と いうのはは大川原さんが重役をしている 上北製薬の青年社員で大川原系よく出入り している姫田の友人ですこれで大川原県の 人たちは全部ありが揃ったわけ です大川原を夫と正司君はあの時別荘にい たことは分かっているが運転手はどこにい たか調べてみたかね ええやはり別荘にいました大川さんが1人 で自動車を運転してゴルフへ行ったんで その間体が空いて遊びに出かけていました しかし事件の起こった5時頃には戻って いって勝手で別荘版の夫婦や娘と一緒に話 をしていましたこれは別荘版や娘が証言し てい ますそれじゃあ東京の姫田の友人関係に ついて君が調べた結果を聞かして くださいこの調べは随分時間がかかりまし たしかし結果はいっって簡単です全部 ありいがあるのです姫田の両親から聞い たり日記に記されれた友人など全部 まとめると11人でしたしかし11人とも あの日は東京にいたのです熱海へ往復する のにはどうしても34時間はかかりますが
その間誰にも見られずに1人で行動してい た人物は1人もなかったのです東京で誰 かしら一緒に行ってその人々の証言も取っ てあり ますつまり田君の周囲には権者は1人も ないというわけだね明地探偵は頭に手を 突っ込んで妙な笑いを浮かべながら独り言 のようにつぶやい た足の探偵と言われる私が一月の間 歩き回った結果が今お話ししたようなわけ なんですしかし私は諦めません仕事はこれ からなのですどんな小さな隙でも見つけ たら飛びついてくんですよ入り口は目に つかないような小さなものでもその奥は どんな大きな穴に続いているのかもしれ ませんからねおお君はその隙間を見つけた らしいね明智探偵はニコニコ笑い出した ええ見つけましたまだそれがどんな穴に 続いてるか検討もつきませんがその他に 隙間らしい隙間はないの です私はこれから村越ひを探ってみようと 思っています実はこれは今先生のお話を 伺ってるうちに気づいたのです 姫田と村越がなんとなく睨み合っていた ことは正司君から聞いております庭で 殴り合いさえしたということですなぜこの 2人はそんなに睨み合っていたんでしょう 会社の重役である大川原氏の信用を一心に 受けたいばかりに睨み合ったとしてもその ために人殺しまではしないでしょうもっと 他に同機がなければなりません大体今度の 殺人では同機が不明なのです姫田が生前 漏らしたことから秘密者のの線が出てい ますがこの方はいくら調べてもそれらしい 筋が出てこないのです姫田がそういう結社 に関係していたとか結社の恨みを買ってい たという気配は少しもないんですところが 今日先生のお話で大川夫人というものが 浮かび上がってきました姫だと村越は夫人 の信を得たい一心で激しい争いとなり ついに殺人を犯すことになってしまったの ではないでしょうかしかしそうすると矛盾 しますね例の表に現れている日は7月が 1番多くだんだん減っているんですこに9 月の半ばから事件残った11月初めまでは たった1度合ってるだけですもしそれが 姫田が何か失敗でもして夫人の信用を失っ たためだと考えますと村越は競争相手の 姫田がダメになったんですからもう殺す 必要などなくなるわけです負けていた姫田 が殺されるなどどうもおかしいです ねそこがこの事件の面白いところだよその 矛盾が矛盾でなくなる時この真相が分かる だろうともかくあれだけ睨み合っていた 村越にはもう少し目をつけてるべきだね
しかし村越にはありいがある君はこのアバ に隙間を見つけたんだねそうです隙間が あるかもしれないと考えついたのです種田 富というおばあさんはどの非常に強い老眼 です調べによると でも度々人違いをして笑われているくらい です芝居見物ではおそらく舞台を見るのに 都合のいい眼鏡をかけていたでしょうから 廊下であった人の顔ははっきり見えなかっ たのではないかとふと今気がついたのです この点をすぐに確かめてみましょうそれに 廊下ですれ違った時あめに声をかけたのは 村越の方だったとおばあさんは言ってき ましたもし村越が偽のアバを作ろうとすれ ば種田富があのの歌舞伎剤行くことを あらかじめ知っていたんでしょうそこで 自分の心安い友達で自分によく似た男に 頼んで自分の代わりに歌舞伎座行って もらい廊下で種田に声をかけさせ一言二言 喋ってもらうという手ですもちろん前もっ てその友人に種だ富の顔を見せて覚えて もらえばいいわけですそれには多少の変装 も必要ですし声も似せなければなりません そうことのできる人が村越の周にいなかっ たとは言いきれませんからね私の調べた 姫田の友人たちはみ大勢の人に顔を見られ ている確実なありばかりです村越のように 種田のおばあさん1人の証言によって ありいがあるという人は他にありません そういう点から見ると村越はもっと調べて みなければならないと思い ます明地探偵は大きく頷いたその狙いは 面白いねびこしてみたらどうかしら毎日 毎日朝から晩まであくまで村越をつけ回し てみるんだもし彼が犯人なら案早く尻尾を 出すかもしれないよ美行ですかお手のもの ですなこいつ面白くなってきたよしダの ようにくっついて離れませんよ私は美行が 大好きなんですこれからもう一度種田富に あってしっかり確かめてから村越の尾を 始めます何かあったらしますよではこれで 失礼し ます美浦刑事は水に離された魚のように 勢いを盛り返していいと立ち上がった刑事 が帰っていくと小林少年が部屋に入ってき てテーブルの上を片付け始めた明地探偵は それを見るとニコニコしながら少年に 話しかけた君今の話を聞いていただろう どう 思う先生はまるで別のことを考えて いらっしゃるのででしょいや必ずしもう そうではないよでも尾行なんかで解決する ような事件だったら先生がこんなに乗り気 におりになるはずがないです から2人は顔を見合わせて笑った小林少年
には先生の目の色や唇の動きでその心の中 が分かるのだった必ずしもそうではないと いうことは一方ではそうだよということを しているの だだがそれがどういうことであるかは小林 少年にも分からない先生だけが知っている ことなのだその秘密が今に分かってくるの だと思うと少年の方はっと赤くなり胸が ワクワクしてくるのだっ た秘密の 告白やはりその頃大川はは授業のことで 大阪に行くことになっていた無論武彦は その音もめられていた明日は出発という 前夜のことである武彦が図書室で調べ物し ていると不にゆみ子夫人が入ってき た商時さんあなたに少しみったお話があり ますのそれであなたにお願いがあるのよ急 に病気になった様子をして明日の音もよし ていただきたいのうちにいて私の話を聞い ていただきたいのです武彦はドキンとした 母や姉のように思っている夫人から親しく こう言われると喜びよりも恐ろしさの方が 先に立ったので あるたけひこはけち小五郎に妙な日付と 時間の書いてある髪を渡され主人夫婦の その日の行動を調べたからだその結果は もう数日前に明地探偵に報告してある明地 探偵は日付の表の出所やその調査の意味を 何も打ち明けなかっただがそれは姫田事件 に関する調査であることは武彦にもすぐ 分かっ た姫田五郎を変死事件に大川原夫妻の名出 てきたこと事に母のように思っている夫人 の名を聞いた時武彦はどんなに驚いたこと だろうしかも調べた結果は夫人がその日の その時間にほとんど外出していたという 事実が分かったのだだがそれが何を意味 するかはまるで検討もつかなかった武彦の 頭の中ではそれがたちに姫だと結びついて はこないの だだが大川原夫妻は何か秘密を持っている のだ明智先生は何でもないことを調べたり するはずがないそんな無意味なことをする 人ではない武彦の悩みはひしに複雑なもの となっていたのである武彦はまっすぐに 夫人を見ながら思い切って答えたはいでは おっしゃる通りにいたします頭痛でもする ことにして医者へ行ってまいり ます武彦はその夜付近の医者の診察を受け たうまく医者を騙すと早くからとこにも 折り込ん だ大川嵐が出発するとその夜武彦は夫人に 言われた通り感の夫人の部屋上がっていっ た会たちはもうすっかり寝てしまって主人 のいない家の中は静まり返っている武彦は
胸をドキドキさせながら無々描写のような 足取りで絨毯を敷き詰めた廊下を夫人の 部屋の前までたどり着いたそして部屋の ドアをそっと叩いたすると待っていたよう にドアが開いて夫人が現れた夫人は手まで で竹彦を招きれると自分は深深とした安楽 椅子に腰を下ろしながらもう1つの一子を 手で差した武彦はおどおどする気持ちを顔 に表す前としてできるだけゆったりと夫人 に向い合って腰かけ た正司さんあなた私に何かお話があるので はありませんかそのことでわざわざ大阪 行きを引き止めしましたの主人がいては ゆっくりお話しすることができませんから ね夫人の口は静かで穏やかだった武彦は 夫人の顔を見つめたまま黙ってい た菊に何かお聞きになったでしょう私知っ ておりますよ私がいつどこへ行ったかと いうようなことをお尋ねになったって聞く は白場しましたのそれでそのことについて 直接あなたの口からお聞きしたいの です聞くというのはゆみ子夫人好きの 小遣いであるた彦は自分の顔が青くなるの をはっきりと感じていた ゆみ子夫人はみんな知っていたの だ武彦の脇の下から冷たい汗がたらたらと 流れ出したはい確かに聞きました武彦は もうごまかすようなことはしなかったここ まで来たら真実を告げる他はないと決心し た1人で悩んでるよりいいにつけ悪につけ はっきりさせてしまう方がさっぱりして いると自分に言い聞かせながら思い切って いっ たなぜだか分かりませんが明智小五郎さん に頼まれたのです奥様には内緒でそっと 調べてくれと言ってそうでしょうそう だろうと思っていましたそれでその日付は いつだか覚えていらっしゃいます かゆみ子夫人の目は優しかった怒ってる 様子は少しも見えないかと言ってうえてる ような様子もない竹彦はほっとすると同時 に急に大胆になった 奥さんがこんなに平気でいるのは何もして いないからだなやはり明け先生の 思い過ごしだったのかな何してもはっきり 言ってよかったあんなに心配することは なかったん だた彦は真中こうつぶやくと今度は逆に 構成を取ろうとし た僕も空では覚えていませんですが ちょっと待ってくださいことによるとメモ をまだ持ってるかも分かりません からはポケット探って大事にしまっておい たうを取り出して渡し たゆみ子夫人はそれを受け取ると一行一義
を何か思い出すような目つきで丹念に見て いった武彦はその顔をじっと見守っただが 夫人の表情は少しも変わらないやがて夫人 は髪から目をあげると国を貸し げわかりません一体こんな日付と時間を どこから割り出したのかしら あなたにはお分かりになっ ていえ僕にも分かりません明先生は何も 打ち明けてくれないのです しかししかしじゃああなたに何かお考えが ある の夫人の目にじっと見つめられて竹彦は ちょっとたじろいだいえ僕は奥様が誰かと 外でお会いになって日付けと時間ではない かと想像したのですが夫人の目がかかにを 含んだ誰かって言うとだがそこまではた彦 にも答えられなかった姫だという声が心の 底でふと頭を持ち上げそうになったがすぐ に慌ててそれを打ち消した私そんなことは しませんよあけさんは何か思い違いをし てらっしゃるのですわ私はよく画質します 旦那様がお出かけのルスには大抵私も 出かけます買い物もありますし芝居や音楽 会お友達を訪問することだってあります 旦那様は1月のうち半分はお出かけになる でしょうですから私もそれくらいは外出し ていますこの日付は月にたった3回か4回 でしょうそれくらいは私の外出の人を ぶつかるのは当たり前ですわですからもし この日付の時間に私がいなかったとしても それは偶然の一致なのです私は毎月これら の何倍も外出してるんですもの 武彦は黙って聞いてい たそうね私自身がこの日のことを 思い出せるといいんだけれど古いことは いくら私自身でも分かりません無理ですわ でも1番後の10月とかのことは覚えてい ます確かお昼過ぎから赤坂の矢上美容院へ 行って頭と顔を直してもらってから夕方 まで話し込んでいました浜さんは私の古い お友達なんですそれでよく話が会います の武彦は夫人がその美容院に誰かを呼んだ のではないかと思っただがそんなことは 調べればすぐに分かることだと気がつい た明智さんは一体何を考えていらっしゃる のでしょうねあの方には私もおめにかかり たいと思っていますのよ一度ゆっくりお 会いできない かしら武彦は明地探偵が何を考えているの か少しも分からなかったが明けのやること に無駄のないこともよく分かっていただが この夫人の静かな態度を当たりにしてみる と明地探偵がとんでもない間違いをして いるような気がしてくるのだった武彦は 2人の間に板になったような気がして黙っ
て俯いたと夫人は武彦の心の中をさしたの か務めて明るい口調で言っ たあなたは明智さんの頼みだからお調べに なったのでしょけれども本当は私のことも 心配していてくださったのです ねでもちっとも心配することありませんの よ明智さんの頭の中では姫田さんが崖から 落ちた事件とこの日表とが結びついている かもしれませんが私には何の覚えもないの ですご心配なさることはありません私は あなたの考えていらっしゃることは何でも よくわかりますのよ私はあなたよりも2つ くらいしか年上でありませんが気持ちは まるで母親のようなつもりなのです最初 あなたがここへいらっしゃった時から私は あなたのことがなんだか他人のような気が しませんでした弟か子供のように思われる のです私は両親に死に分かれてからは長い ことずっと1人でしたここへ来てからも 旦那様と2人っきりでしょうそのため人が 懐かしいのね私って本当はとてもり屋なの かもしれません姫田さんや村越さんたちは よく遊びに来て私を楽しませてください ましたでも2人ともいっつも私のそばにい てくださるわけではないしそれにただの 遊び友達で気持ちを打ち上げることなんか できませんでしたそこへ行くとあなたは 同じうちに一緒に寝起きしているんです から兄弟や親子と同じですですからあなた もそのつもりで何でも私に相談ください私 も私にできることならどんなことでもして あげるつもりでいるのです から竹彦は夢でも見ているような気がした 彼は夫人が自分の本当の姉か母のような気 がして胸が詰まるのを覚えた ああ僕は何という恐ろしいことを考えてい たんだろうたえ一時でもこんな優しい夫人 のことを姫田事件に関係があるんじゃない かなどと疑ったりして申し訳のないこと だった武彦は心から後悔したそしてこの 夫人のためなら自分の命を捧げても惜しく はないと思っ た
全10夜にわけて
江戸川乱歩の少年探偵団シリーズより『白い羽根の謎』をお届けいたします。原作は、天地茂さん、夏樹陽子さんの出演で「美女シリーズ・エマニエルの美女」としても好評を得た「化人幻戯」。先に児童向けリライトされ、ポプラ社様から少年探偵団シリーズの一部として刊行されたものを出典といたしました。(とはいえ少年探偵は一切登場しませんが・・・)
世代性別を問わず、子どもの頃、学校の図書室で読まれた方もいらっしゃるかもしれません。朗読していて子供の頃に想像した景色があざやかによみがえって来た気がしました。
よろしければ、ご感想のコメントやチャンネル登録を頂けると大変うれしいです。
次回もどうぞよろしくお願いいたします。
【素朴なTwitter】https://twitter.com/jun_mizunoki
※作品の中に、現代においては一部不適切な表現がありますが、作品が創作された時代背景を考慮して、原作のままといたしました。ご了承の上ご視聴願います。
写真:「PAKUTASO」さま https://www.pakutaso.com/
「PhotoAC」さま https://www.photo-ac.com/
#江戸川乱歩 #少年探偵団 #白い羽根の謎 #明智小五郎 #化人幻戯 #朗読