画像提供:株式会社イサミコーポレーション
創業100年以上の歴史を持つ足袋メーカー、イサミコーポレーションが、新ブランド『ISAMI(イサミ)』を立ち上げ、ニット素材を用いた新感覚のフットウエア『The Knit Tabi(ザ ニット タビ)』を発売した。
伝統の象徴を織り続けてきた企業が、なぜ異分野の素材と製法に挑んだのか。『ISAMI』を率いる専務取締役の土屋海斗氏に、伝統を未来へ解き放つためのものづくりの背景を伺った。
「着物を着る人すら履いていない」——足袋産業の知られざる現実
2021年、土屋さんは「足袋事業をどうにかしてほしい」との依頼を受け、異業種からイサミコーポレーションへ入社した。1907年の創業以来、同社の核であり続けた足袋事業。しかし、その現場で彼が目の当たりにしたのは、想像以上に厳しい現実だった。
多くが選んでいたのは、数百円で手に入る海外製の安価なストレッチ足袋。高級な着物を売るための「おまけ」として扱われることさえあったという。
「いろいろやってみて分かったのは、着物を着る人たちでさえもきちんとした足袋を履いていないという事実だったんです。このまま従来の岡足袋を作り続けていても、実際に履く人がいなくなれば、100年以上培ってきた足袋づくりの技術も、文化の中から失われてしまう。そう感じたんです」
呉服業界からの転換。目指したのは「靴下と足袋の“中間”」
新たな挑戦を決意したISAMIがまず下した大きな決断は、「呉服相手の商売に依存しない」ことだった。ターゲットを、これまで足袋とは縁遠かった現代の生活者にシフトし、まったく新しいフットウエアの開発へと舵を切る。
目指したのは、「靴下でもなく、従来の足袋でもない」プロダクトだ。その着想の背景には、両者の特性への深い理解があった。靴下は手軽だが、歩行時に力が分散しやすい。一方、足袋は親指が独立した構造と甲をしっかり支える縫製により、地面を掴むように力を伝えられる。しかし、伝統的な足袋は伸縮性のない綿素材を用いるため、夕方になると足がむくんで窮屈に感じるという側面もあった。
ISAMIが求めたのは、靴下のような快適さと、足袋ならではの機能性を両立させる「中間点」だった。
