テート美術館が誇るターナーコレクション、約80点が来日
会場風景より、右が《水のある風景》(1840-45)
東京・上野の国立西洋美術館で「テート美術館 ターナー展──崇高の絵画、現代美術との対話」が開幕した。会期は2027年2月21日まで。ロンドンのテート美術館は世界最大のターナー・コレクションを有しており、本展はその所蔵品から油彩画や水彩画など80点以上を紹介する大回顧展だ。
他の写真はこちら
ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(1775〜1851)は、移ろう光や大気、荒れる海や空を、ときに克明に、ときに抽象に近いかたちでとらえた英国の画家だ。会場は序章と全7章に「色彩実験」のコーナーを加えた9室で構成され、ターナーの作品群がテーマごとに、時系列に沿って並ぶ。各室にはケイティ・パターソン、オラファー・エリアソン、ヴォルフガング・ティルマンスらの現代美術作品も置かれ、時代の異なる作品を見比べながらめぐることができる。
本展の企画を担当したのは、国立西洋美術館主任研究員の新藤淳。古典と現代の作品を同じ空間に並べる構成について、新藤は記者内覧会で次のように語った。
「時代の距離をショートカットさせて作品を展示するやり方は、2000年に開館したテート・モダンが常設展示で先駆的に始めたものです。開館時には、リチャード・ロングの作品の真横にモネの《睡蓮》が掛けられ、大きな注目を集めました。制作された時代も地域もまったく違うものを並べることで、見る人のなかに思考が生まれる。本展は、その方法をこの美術館の空間でどう成り立たせるか、かたちを模索した展示です」
展覧会は東京での会期を終えたのち、大阪中之島美術館(2027年3月13日〜6月27日)へ巡回する。
暗がりを抜けて、月と日食の光へ。ターナーの画廊を再演する序章
ターナーは1804年、ロンドンの自宅に自作を見せるための画廊を開き、1822年には増改築を経て再開した。自前の画廊で作品を展示し販売する画家は、当時めずらしい存在だった。ターナーは、自作が見る人にどう受けとめられるかに細心の注意を払っており、来訪者は画廊に入る前に暗い部屋でしばらく待たされたらしい。暗がりでのひとときが視覚を研ぎ澄まし、絵に満ちる光をより鋭く感じさせると、彼は考えていた。本展の序章は、この逸話を照明を落とした展示室で、遊び心を交えて再演している。
最初に来場者を迎えるのは、ターナーが描いた月光の作品群だ。《月光、ミルバンクでの習作》(1797)は、20代前半のターナーがテムズ川の夜景を表した油彩画。月の上には、恒星と見間違えやすい木星も描き込まれている。
隣には、ターナーが日食を記録した《日食のスケッチブック》(1804)が開かれている。手早く描かれた6点の素描は、日食の始まりから太陽が覆い隠されるまでの経過を追う。ターナーは同時代の科学者たちと交流し、天文学や地質学の新しい動向にもつねに目を配っていた。
その傍らで展示されるのが、ケイティ・パターソンのインスタレーション《Totality(皆既食/全体性)》(2016)だ。月を思わせる大きな球体は1万枚の鏡面タイルで覆われ、タイルの1枚ごとに異なる日食の像が刻まれている。像の出どころは、1778年に描かれた現存最古の日食の素描から、19世紀の写真、最先端の望遠鏡がとらえた画像までと幅広い。球体はモーターで吊られてゆっくりと回り、反射光の粒を部屋中に投げかける。
