記事のポイント

    パリ・ファッションウィークのEMVは前年比59%増加したが、伸びの91%をディオールが占め、半数以上のブランドは減少した。

    ディオールの躍進にはタイの人気俳優2人が大きく貢献。ヘアメイク担当者などによる舞台裏の発信も話題を広げた。

    SNSでの話題性と実際の商品需要は必ずしも一致せず、ブランドにはショーで得た注目やコンテンツを購買につなげる戦略が求められている。

    今シーズンのパリ・ファッションウィークは、インスタグラム上で大いに沸く材料に事欠かなかった。だが、個々のブランドにとっても沸く材料が多かったかどうかは、また別の問題だ。

    レフティ(レフティ)がGlossyに共有した数字によると、アーンドメディアバリュー(EMV)の前年比の伸びのうち91%を、ディオール(Dior)1社が占めていた。同社の比較可能なサンプルに含まれるブランドの半数以上は、数字を落とした。

    EMVは59%増も、半数超のブランドが減少

    レフティ×カーラ・オットー(Lefty × Karla Otto)のデータによると、パリは2027年春シーズンに7億9580万ドル(約1193億7000万円)のEMVを生み出し、前年比59%増となった。ディオールを除くと伸び率は6.3%に下がると、レフティのローラ・ロシャ氏は述べた。

    2026年春と2027年春の両シーズンで追跡した62ブランドのうち、EMVが伸びたのは28ブランド、減少したのは34ブランドだった。変化率の中央値は11%の減少だった。

    ディオールの3億6000万ドル(約540億円)は、スキャパレリ(Schiaparelli)の6350万ドル(約95億2500万円)、シャネル(CHANEL)の5670万ドル(約85億500万円)を大きく引き離した。これにミュウミュウ(Miu Miu)の4610万ドル(約69億1500万円)、ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)の3750万ドル(約56億2500万円)が続いた。

    これらのドル建ての数字は、売上ではなく、露出の広告価値を推計したものだ。

    レフティは、2026年9月28日から10月7日にかけて、フォロワー1万人超のアカウントによるブランドに言及したインスタグラムのフィード内コンテンツを追跡し、1000インプレッションあたり100ドル(約1万5000円)のコストを適用した。この結果は、あらゆるプラットフォームやチャネルではなく、ファッションウィークのオーディエンスの一部を対象としたものだ。

    ディオールを押し上げたタイの俳優とビューティーチーム

    ディオールへの注目の多くは、2人のゲストによるものだった。タイの俳優であるオーム・コーンナパットとリンリン・クワンは、2人あわせて同メゾンのEMVの56%を生み出した。2人の露出は、席に着くよりずっと前からはじまっており、タイからの出発、フィッティング、パリでの滞在のすべてが素材になったとロシャ氏は語る。

    2人は単に投稿を増やしたわけではない。レフティの集計では、オームの投稿は前年春シーズンの26件から20件に、リンリンは24件から16件に減っている。2人のビューティーチームは共同投稿を通じて露出の拡大に貢献しており、レフティはこうした共同投稿を、投稿をはじめたアカウントの成果として計上している。

    「2人はビューティーチームと共同投稿を行い、それによって、通常はランキングに登場しないプロフィールのエンゲージメントが生まれた」とロシャ氏は語る。

    メイクアップアーティストのホームレス・メイクアップ(Homeless Makeup)は、ディオール、シャネル、スキャパレリに関連するコンテンツで、パリ全体のプロフィールランキングで3位に入った。ヘアスタイリストのサラウット・ラパは4位だった。スターたちの登場の準備を整える人々が、それ自体で重要な発信者になっていたのだ。

    「いまでは、ショーの周辺で起きるエコシステム全体がある」とカーラ・オットーのアンナ・ロス氏はGlossyに語り、フィッティング、バックステージでのインタビュー、セレブリティとの交流を例に挙げた。

    「人々は、ランウェイそのものを超えたファッションに強い関心を持っている」。

    そうした露出は、ルームサービスからショー会場への車移動までのあいだにも生まれる。ルイ・ヴィトンのショーにあわせてバンドのハイム(HAIM)を撮影したフォトグラファーのエマ・ベイルズ・ハウイーによると、ヘアメイクの様子を5分ほど撮影し、その後30分間食事やおしゃべりを楽しんでから、最後の15分で完成したルックを撮影したという。

    「ヘアメイクが長引いて、結局5分しか撮影できないことも多い!」と彼女は語る。ハウイーはフィルムで撮影し、翌日の午後までに画像を納品することをめざしており、ショーのあとにも、その登場に関するコンテンツをもう一巡生み出している。

    リセール市場に表れた製品需要のシグナル

    製品への需要を示す兆候もある。ファッションファイル(Fashionphile)の2026年リセールレポートによると、ジョナサン・アンダーソンが手がけたディオールの「ブックトート」が2026年1月に店頭に並んだ際、同バッグの検索数は前年比133%増加した。

    ブルーミングデールズ(Bloomingdale’s)のファッションディレクターであるデビッド・ティールボイル氏は2026年10月上旬、Glossyに対し、アンダーソンのアクセサリー、とりわけ「レディ ディオール」と「サドル」バッグの解釈が「とてつもない好奇心」を呼んでいると語った。

    シャネルのEMVの合計ははるかに小さかったが、その一方でマチュー・ブレイジーのデザインには強い需要がある。

    ファッションファイルはシャネルをもっとも検索されたブランドに挙げ、いくつかのバッグについては小売価格を上回る価格を売り手に支払ったと報告しており、その上乗せ幅は「アーバン・エッセンシャル」で15%、「スープリッシモ」と「アーキタイプ・トート」でそれぞれ13%だった。これらの数字はファッションファイルの買取価格を示すもので、その後に買い物客が支払った価格ではない。

    「まさに熱狂状態だ」と、ティールボイル氏は、ブレイジーが手がけるシャネルへの店頭での反響について語った。

    これらは、最新のショーに起因する売上ではなく、すでに販売されている製品から得られたシグナルだ。しかし、顧客がどのアイテムを探し求め、どのアイテムにプレミアムがつくのかという、ファッションウィークのランキングとあわせて評価できるより具体的な材料をブランドに与えてくれる。

    ショー後も使えるコンテンツをどう撮るか

    ファッションウィークのコンテンツの活用法を計画しているブランドに向けて、グロースエージェンシーのシーン・スタジオズ(Scène Studios)の創業者兼CEOであるアシュリー・ミュンチ氏は、最初の注目の盛り上がりの先にも機会があるとみている。

    ホテル、リッツ・パリの中庭で行われたラジャンス(L’Agence)のプレゼンテーションで、ミュンチ氏は、モデルたちがプラットフォームの上に立ち、そのまわりをゲストが動き回るという、リシー(ショー後に服を間近で確認する場)に近い光景を目にした。この演出によって、来場者はシルエット全体や生地、ディテールを複数のアングルからじっくり撮影することができた。

    ミュンチ氏によると、自分ならそうした画像を製品に焦点を当てた広告に使い、イベントを広く捉えた映像はコレクションの紹介に使えるという。これはあくまで同氏が提案するアプローチであり、ラジャンスのキャンペーン成果を報告したものではない。

    「もっとも美しいエディトリアル画像が、コンバージョンにつながる画像だとは限らない」と同氏は語る。

    同氏のチームは、名前を明かさないあるクライアントのために、シンプルで、顔が写らないことも多いポーズを繰り返し使っているが、それはテストでほかの構図を上回る成果を上げてきたからだ。同氏は、ブランドはそうした知見をイベントの計画に取り入れ、ゲストが去ったあとにも使える素材を撮影すべきだと主張する。

    「すでに強力な有料メディア戦略を持つブランドであれば、イベントがはじまる前の段階で、どのクリエイティブフォーマット、アングル、製品の見せ方がコンバージョンにつながっているかを把握しているはずだ」と同氏は語る。

    「チームは明確なショットリストを持って現地に入り、よりエディトリアルで雰囲気のあるコンテンツとあわせて、実績のあるフォーマットを撮影できる」。

    [原文:Luxury Briefing: Dior drove Paris Fashion Week’s record buzz]

    Zofia Zwieglinska(翻訳、編集:藏西隆介)

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