ツアー復帰を果たしたボン・ジョヴィ(Bon Jovi)。2022年に声帯手術を受けたジョン・ボン・ジョヴィ(Jon Bon Jovi)は、オーストラリアのA Current Affairの新しいインタビューの中で、声を取り戻すまでの4年間を振り返っています。また現在の声の調子は「最高だよ。今夜だって問題なくステージに立って歌える」と完全復活を宣言し、「歌うことそのものに意識を集中しなくても、自然に歌えるようになったのが嬉しい」と語っています。
「地獄のような日々を経験したけど、バンドが築いてきたレガシーを妥協するわけにはいかなかったし、妥協するつもりもなかった。ステージに出てマイクを観客に向けて、歌ってもらうようなことは絶対にしたくなかったし、するつもりもなかった(笑)。40年以上にわたって自分たちが守ってきた基準を、これからも大切にしたい。最高のパフォーマンスを届けることが、僕にとって重要なんだ。
(インタビュアー:現在の歌声の調子は?)
最高だよ。今夜だって問題なくステージに立って歌える。
声を取り戻すまでに4年かかった。でも、その4年間は自分で決めたことだった。手術から2年経った時点では、まだステージに戻るつもりはなかった。周りからは“もう大丈夫だ。やろうよ”と言われていたけどね。(オーストラリア公演のプロモーターである)ポール・デインティに聞いてみればいい。彼はツアーが決まったと書かれた紙を何度も手にしていた。でも、そのたびに僕は“いや、まだ無理だ。やらない。どうしてもできないんだ”と何度も言ってきた。そして4年にわたるプロセスを経て、ようやく“よし、もう大丈夫だ”と思えたんだよ。
(インタビュアー:かなり大変な努力が必要だったんですね)
本当にそうだった。医師を信頼しなければならなかった。ただ、こういう世界に詳しくない人には想像しにくいかもしれないけど、声を専門に診る医師の中には、神様気取りの人もいるんだよ。“君を治せるのは私だけだ。私がどうするか次第なんだ”という感じでね。そういう医師たちには、心底怖さを感じていた。
そんな中、ペンシルベニア州フィラデルフィアで、ある医師を見つけたんだ。彼は引退目前でね、年配の紳士で、蝶ネクタイの上にセーターを着て、その上からジャケットを羽織っていた。彼は堂々とした雰囲気で診察室に入ってきて、こう尋ねたんだ。“私が歌手専門の医師になった理由を知っていますか?”と。僕は“いや、わかりません。ぜひ教えてください”と答えると、彼はこう言った。“私自身、歌手だったんです。問題を抱えていたのに、その原因がわからなかった。誰に頼れば自分を救ってもらえるのかもわからなかった。だから、この仕事に人生を捧げることにしたんです”。彼はその後、この分野に関する本も何冊も執筆していた。そして、“私はもうすぐ引退するんです”と話してくれた。さらに、僕の信頼を決定づけたのが、彼の次の言葉だった。“何も約束はできません”。そして、こう続けた。“私の指示をきちんと守ってください。この手術を受けることが、あなたに残された唯一の選択肢です。時間はかかるでしょうが、最終的には今より良い状態になるはずです。治療の過程を信じてください”と。あれほど心の底から“ありがとう”と思ったことはなかった。僕にとって、彼こそが求めていた人だった。
(インタビュアー:別の治療法を提案する医師はいましたか?)
もちろんいたよ。だからこそ、そう言っているんだ。大物アーティストを何人も治療してきた医師たちは、自分が救ってきたミュージシャンの名前を並べ立てたくて仕方がない。まるで神様にでもなったような口ぶりでね。“彼を救ったのは私だ”“彼女があれほど素晴らしいのは、私のおかげだ”ってね。そういう医師のところを出るときは、足が震えるほど怖かったよ。一方で、僕の声帯を診て“ちょっと、わからないですね”と言う医師もいたよ(笑)。
(インタビュアー:歌声を取り戻せないかもしれないと思ったことは?)
希望を失ったことはなかった。でも、もし“回復には4年かかります”と言われていたら、“もう十分やったよ”と引退を考えていたかもしれない。それほど長く、厳しい道のりだったんだ。少しずつ回復しているのはわかっていた。でも、それはほんの少しずつだった。ほんの数センチずつ前に進むような感じでね。“ハッピー・バースデー”すら歌えなかったんだから……。ただ、あの医師の診療所には、専属のヴォーカル・セラピストがフルタイムで勤務していて、言語聴覚士もいた。僕がこれまで診てもらったほかの声帯専門医は、診察が終わると“あとはジェーンのところへ行って”“ジョーに診てもらって”という感じだった。手術をして、その後2回ほど話をして自分の担当が終わると、それでおしまいだった。でも、僕はあの医師のもとで、3年間にわたって週4日、1日2時間のセラピーを受け続けたんだ。そして3年が経ち、そろそろ大丈夫だと思えるようになった頃、バンドのメンバーも“確実に良くなっているよ”と言ってくれた。そこで初めて、別のセラピストに切り替えたんだ。あのヴォーカル・セラピストには、本当に感謝しているよ。これ以上望めないほど、力を尽くしてくれたからね。
(インタビュアー:大勢の観客を前に、再びステージに立ったときの気持ちは?)
喜びだよ。本当に、ただただ嬉しかった。どうして嬉しいのか、説明させてほしい。今は、歌うことそのものに意識を集中しなくても、自然に歌えるようになった。だから、曲やバンド、そして観客が生み出す波動やエネルギーを、心から感じられるんだ。
正直に言うと、2019年も、そして間違いなく2022年も、歌っている間はマイクを必死に握りしめていた。“今の音程は合っているか?”“ちゃんと歌えているか?”“これで十分なのか?”ってね。そのうえで、“さあ、笑顔を見せなきゃ”“次はヒット曲を紹介しよう”“今の歌は大丈夫だったか?””本当にこれでいいのか?”と、ずっと考えていた。毎晩、そんな状態だった。そんな状態では続ける価値はなかった。(2022年4月、手術前最後のボン・ジョヴィ公演となった)ナッシュビルのステージを降りたとき、(妻の)ドロシアに“今のは、けっこう良かったんじゃないかな”と言った。そのときは、本当にそう思っていた。でも、彼女は“いや、そんなことなかった”と言ったんだよ。
(インタビュアー:現在のボン・ジョヴィのセットリストを見て、ヴォーカル面で負担が大きいから、これは歌いたくないなと思う曲はありますか?)
いや、ないよ。“Livin’ on a Prayer”は、昔からずっと同じキーで歌っているし、“Bed of Roses”も同じような感じだ。今では“Always”も“I’ll Be There for You”も“Bed of Roses”も“Livin’ on a Prayer”も、毎晩のセットリストに入っている。どれも毎晩すべて歌っているよ」
