2026/10/17 16:00

    yutori / L→R 豊田太一(Ba.)、浦山蓮(Dr.&Cho.)、佐藤古都子(Vo.&Gt.)、内田郁也(Gt.&Cho.)

    誰しもが抱える弱さや葛藤を、ありのままに音楽へと昇華してきたロックバンド、yutori。結成から5年半、メジャーデビューから1年半を経て、その表現は少しずつ変化している。自分の感情を吐き出すための音楽から、弱さを抱えた誰かに寄り添う音楽へ。けれど、彼らが伝えたいのは、強くなることでも、弱さを克服することでもない。「弱いままでいい」という言葉の奥には、どんな思いがあるのだろうか。最新曲「秘密」やTVアニメ『朱色の仮面』のエンディングテーマ「声」の制作エピソードを交えながら、4人それぞれが抱く“弱さ”への思いと、バンドの“イマ”に迫った。

    yutoriの“イマ”が込められたシングル

    INTERVIEW : yutori

    yutori

    インタビュー・文:坂井彩花
    撮影 : 作永裕範

    蓮と私が捉えている“弱さ”って、たぶん別もの

    ──結成から5年半、メジャーデビューから1年半経ちましたが、活動初期と比べてバンドが変わってきているように感じますか。

    浦山蓮(以下、浦山):そうですね。最初にバンドを組んだときは、誰もその先を見ていなかったというか。「1曲だけレコーディングしてみよう」で始まって、右も左もわからない状態だったので、少しずつ自分自身を楽曲に落としこむ方法がわかってきたように感じます。最初の頃は、後先を考えずに弾けるだけ弾いていましたね(笑)。海外アーティストの音楽を聴くなかで、隙間の考えかたの違いに気がついて、心地いいフレーズを叩く意識へシフトしました。

    佐藤古都子(以下、佐藤):私も歌詞の書きかたが、だいぶ変わった気がします。最近では、詩として言葉だけでも意味があって、いろんな解釈ができるような歌詞を書きたいと思っています。

    内田郁也(以下、内田)2人とも「こういう表現をしたいから、こういうアプローチにする」っていうのが、すごく曲に出るようになってきたよね。

    豊田太一(以下、豊田):バンドを始めたころは、ただ弱さを曝け出している曲が多かったというか。楽曲を感情の捌け口にしている側面が強かった気がするけど、今では“弱さ”を認めつつ、周りに「それでもいいんだよ」と声をかけている感じがします。

    内田:それぞれ別の方向で、自分の色を確立していってるよね。(佐藤)古都子の曲は、弱い部分は弱い表現、強い部分は強い表現みたいに、歌詞の意味を強調するように演奏の強弱を合わせるイメージ。逆に(浦山)蓮は「言いたいことを隠したい」って気持ちの表れなのか、弱い部分で強い表現をしたり、強い部分で弱い表現をしたりすることが意外と多いですね。歌詞と曲調がアンマッチなんだけど、結果的に上手く混ざっていて、感情が揺れる楽曲になってて、メジャー手前くらいから、ふたりとも各々の個性が強く出てきた印象があります。

    ──他にも変わったところはありますか。

    内田:ちゃんとゴールを見定めて、制作を進めるようになりました。ある程度は「ここに行きたい」と方向を定めて、そこに向かってアレンジをしていくことができるようになったというか。昔はとりあえず思いつくものを入れて、ガチャガチャしながら作っていたので、最初に想像していたものと違う楽曲になることもあったんですけど、最近は「こういうふうにしたかった。しかも、アクセントが入って想像以上になったね!」みたいなことが増えた気がします。

    豊田:思い描いていたものを、その通りに作れるようになったよね。僕個人としては、音楽や楽器のルーツを掘ったことで、ベースの役割を見つめ直せて、レコーディングもリハーサルも一段と楽しくなりました。AメロとBメロの間を繋いでみたり、オブリガードみたいなフレーズを差し込んでみたり、吸収したことを昇華できるとワクワクしますね。

    佐藤古都子(Vo.&Gt.)


    浦山蓮(Dr.&Cho.)

    ──yutoriを表すキーワードのひとつである“弱さ”との向き合いかたも変化してきましたか。

    浦山:そうですね。数年間で変わってきた気がします。

    佐藤:そもそもyutoriが「弱さを肯定する」という個性を持ち始めたのが、ここ数年なので。気づいたら、そうなっていたというか。

    浦山:ライブや制作を経て、自分たちの強みがたまたまそれだった。なんなら最近は、「弱いままでいい」と思うようになりました。いろんなところでライブをするなかで、手の届く範囲に誰かがいるような感覚を作れていて、自分の弱さを投影した楽曲が誰かに届いている実感が、そういうマインドに繋がっていった感じがします。

    佐藤:私も「弱いままでいい」と思ってますね。“弱さ”を認識してどうするかは、聴き手側、yutoriを好いてくれている方が判断すること。私たちは「弱いままでいい」と言っていますけど、別に「強くなるな」とも「強くなれ」とも言ってないんです。私たち4人も、yutoriを好いてくれている方々も、いつかはいなくなるので。変わろうが変わらなかろうが、どうでもいいというか。私たち4人と聴いてくれているあなたがいることに、意味があると思っています。

    ──先ほど「“弱さ”を認識してどうするかは聴き手に委ねる」といった話もありましたが、そもそもyutoriにとって“弱さ”とは、どういうものでしょうか。

    佐藤:たぶん各々で少しずつ違うと思うんですけど、私は“一般的な弱さ”だと思っています。本当に思っていることを言えなかったり、自己否定してしまったり。よくある“弱い”があるから、人は「自分の存在意義ってなんだろう」と考えてしまうのだと思っています。

    浦山:好きも嫌いも素直に言えないことを、“弱さ”だと思っていますね。古都子の曲も俺の曲も自分の信念は書いているんですけど、それを言葉にするまでに時間がかかるというか。一発では出てこないのが、yutoriの“弱さ”であり強みでもある。

    佐藤:蓮と私が捉えている“弱さ”って、たぶん別ものだよね。だからこそ、いろんなジャンルの弱さがyutoriには揃ってる。

    豊田太一(Ba.)


    内田郁也(Gt.&Cho.)

    自分の“弱さ”としっかり向き合ってきたバンドだから

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