経済学者のヨーゼフ・シュンペーターが唱えたような「新結合」、あるいは岡本太郎の「対極主義」のようなものでしょうか。これまで出会わなかったもの同士がぶつかって、スパークする。VUILDでいえば、伝統産業や地域の歴史や文脈に、ぼくたちの技術を導入してみることが、たぶんイノベーションなのだと思います。

    ディスラプションは、連続した歴史をいったん切断して、まったく違うものがゼロから立ち上がるということです。例えば、建設業や林業などは成熟した産業領域で、長い時間軸のなかで脈々と積み重ねてきた歴史や文化をもつ、本来なら破壊しようのないものです。

    ですが、それをある種リセットして新しくできあがっていったのが、モダニズムや近代建築です。ぼくは、その途絶えてしまった日本の歴史や文脈を再接続して、さらに豊かな世界にしていきたい。

    もとよりあるものとの新結合は、いったん破壊して更地にしてしまった場所でゼロから生み出すよりも、多くの制約が生まれます。それこそ、いまは職人不足、建設費の高騰、そもそも資材が手に入らないリスクといった制約も抱えている。

    しかし、VUILDにはその制約を取り払う技術があり、さらにクリエイティブに昇華する力もあります。例えば、福島ユナイテッドFCの循環型木造スタジアム構想では、鉄骨を使ったほうが楽だけれど、構造材は福島県産の木材でつくる。こうした数ある設計・施工上の制約をデザインに転換していく、建築としても非常にチャレンジングな大規模プロジェクトです。

    さらには、地域参加によって地域のシンボルをつくる。公共性の高いサッカースタジアムという場所で、自分たちがこれまで取り組んでいたアプローチによって、地域の再生の象徴を生み出すプロジェクトでもあります。そうした意味で、これまでのVUILDの集大成でもあるプロジェクトです。

    考えたことが実現する社会に

    ──「WIRED Innovation Awards」のタグラインは「この革新は、未来のシアワセのために」です。秋吉さんご自身が幸せを感じるのは、どのような瞬間で、それを続けることで社会にどのようなインパクトを与えていきたいと考えていますか。

    皆と同じように振る舞うのが、ぼくにはすごくストレスなんです。気持ちよくない環境は自分で変えたいし、こうしたいと思うものは変えていきたい。変えたいと構想したことを、つくることによって実現する。それによって、自分自身も更新されていく──。その手触りを感じられた瞬間に、幸せを感じます。だから、ずっと自分でものをつくり続けているし、天職なんだと思っています。

    そして、つくることで生きて、生きることでまたつくりたくなるという循環を社会にもつくっていきたい。「『いきる』と『つくる』がめぐる社会へ」をVUILDのフィロソフィーにしているのも、それ自体が生命的で、幸福な活動だと思っているからです。

    いま、何かを「つくること」の是非が社会的に問われている時代でもあると思います。だけれど、人間の創造性をみんなが発揮してつくることが、人やさまざまなものの幸福、再生へと転じていく。そういう世界をつくりたいと思っています。

    秋吉浩気|KOKI AKIYOSHI

    秋吉浩気|KOKI AKIYOSHI
    建築家、VUILD代表取締役CEO。1988年、大阪府生まれ。芝浦工業大学工学部建築学科卒業。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科在学中の2013年、3D木材加工機「ShopBot」の販売を始め、15年に修士課程修了。17年にVUILDを創業し、「建築の民主化」を掲げる。19年竣工の「まれびとの家」でUnder 35 Architects exhibition Gold Medal賞、20年にグッドデザイン金賞を受賞。25年に「学ぶ、学び舎」でiF DESIGN AWARDのゴールド。著書に『メタアーキテクト──次世代のための建築』など。

    Photograph: Yu Utsumi

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