NOT A HOTEL株式会社は2026年10月2日、社名を「NOTA株式会社」へ変更しました。続く10月5日の事業戦略発表会では、これまでの「NOT A HOTEL」に加え、住宅事業「NOT A HOUSE」、モビリティ事業「NOT A GARAGE」、街づくり事業「NOT A CITY」を展開する新たな事業体制が発表されました。住宅では、NOT A HOTELがデザインする規格住宅〈POD〉の予約受付を開始。移動では、ヘリコプターやクルーザー、クルマを利用できる新たなサービスを展開し、街づくりでは、〈帝国ホテル 東京〉の旧商業施設を約4年間にわたって活用する「NOT A MUSEUM」の計画も明らかになりました。
NOT A HOTELからNOTAへ。社名変更によって広がった事業領域と、その背景にある考え方、新たに示された事業体制についてレポートします。
※この記事は、2026年10月5日に開催された「事業戦略説明会」での発表をもとに作成しています

「日本の価値を上げる」をミッションに掲げるNOT A HOTELは、建築家やクリエイターとの協働を通じ、日本各地の風景を生かした拠点を展開してきました。2026年10月1日時点で全国10拠点を開業し、オーナー数は1,357名、累計契約高は約940億円に到達しています。
発表会の冒頭でNOTA代表取締役社長Co-CEO濵渦伸次氏(以下、濵渦氏)が語ったのは、「NOTは否定ではなく進化」という考えでした。滞在を所有できる資産へ変え、まだ広く知られていない土地を新たな目的地へと変えていく。既成概念を捉え直し、新たな選択肢をつくるというNOT A HOTELの発想を、住まい、移動、街づくりへ広げていくことが、新社名「NOTA」に込められています。新体制では、NOTAがNOT A HOTEL事業を自ら営む親会社となり、分社化した各事業は子会社として展開されることになります。
建築とクリエイティブから、新たな目的地をつくるNOT A HOTEL
新事業へと領域を広げる一方で、中核となるNOT A HOTELでは拠点開発をさらに加速させる構想です。現在開業している10拠点に加え、2030年には30拠点の発表を目指す方針が示されました。これまで重点的に開発を進めてきた関東に加え、関西、瀬戸内、沖縄、北海道にも展開していく計画です。今回発表された「Next NOT A HOTEL」では、安藤忠雄氏とヘルツォーク&ド・ムーロンによる2つの新プロジェクトが明らかになりました。あわせて、ジャン・ヌーヴェル氏率いるAteliers Jean Nouvelと進行中の〈NOT A HOTEL YAKUSHIMA〉の最新ビジュアルも公開されています。

安藤忠雄氏率いる安藤忠雄建築研究所とのプロジェクトは、近畿地方の海沿いが舞台です。豊かな自然に囲まれた半島の地形を生かしながら、斜面に沿ってヴィラを配置。直線的な構成と、円形のフォルムや水盤を組み合わせ、安藤氏が長年取り組んできたコンクリートによる建築と、海や森、光や風との関係をつくり出します。湾を挟んだ半島の先端には、海へ開かれた円形のヴィラも計画されています。

もう1つの新プロジェクトは、スイス・バーゼルを拠点とするヘルツォーク&ド・ムーロンが設計する沖縄のヴィラです。沖縄で開発事業を手がけてきたASAKAとの共同開発で、海に面した崖地に1棟を計画。海へ向かって張り出す2枚の水平スラブによって水平線への眺望を引き出し、3枚目のスラブにはインフィニティプールとテラスを設けます。建築そのものを前景化するのではなく、周囲のランドスケープを際立たせる構成が特徴です。

一方、現在すでに進行中のプロジェクトであるジャン・ヌーヴェル氏率いるAteliers Jean Nouvelによる〈NOT A HOTEL YAKUSHIMA〉は、鹿児島県・屋久島を舞台に、岩とガラスを用い、大地から立ち上がるような設計が特徴です。今回の発表では新たに最新ビジュアルが公開され、雨の影や水の響き、森の気配を建築の内部へ取り込む空間の姿が、より具体的に示されました。

「選ぶ」負担に向き合う「NOT A HOUSE」の規格住宅〈POD〉
住宅事業「NOT A HOUSE」の第一弾となるのが、規格住宅〈POD〉です。NOT A HOUSE代表取締役CEOの申 真衣氏が事業の出発点として挙げたのは、自身の住宅購入やリフォーム、住み替えの経験でした。費用の内訳が見えにくいことや、建てた後の売却・住み替えがしにくいこと。さらに、注文住宅では自由度が高い一方、多くの判断や打ち合わせが必要になり、選ぶこと自体が負担になる場合もあります。こうした住宅づくりの課題に対し、NOT A HOUSEが目指すのは、規格住宅の合理性と、NOT A HOTELで培ってきたクリエイティブやテクノロジーを組み合わせることです。

〈POD〉は、Studioタイプから3ベッドルームまでの間取りを用意。空間のつながりや家具配置までをあらかじめ設計したうえで、内装、家具、造作、外装材などに複数の選択肢を設けています。壁面収納やワークスペースなども暮らし方に合わせて選択でき、設計はNOT A HOTELの社内で行われています。
照明や空調などをタブレットやスマートフォンから操作できるスマートホーム技術も導入。販売価格は1棟6,980万円からで、オーナーには全国のNOT A HOTELに年間3泊できる有料オプションも用意されています。
〈POD〉で重視されているのは、規格化による価格や工期の合理性だけではありません。同じ設計を繰り返すことで、一棟ごとの知見を次の住宅へ還元し、品質や価格の改善につなげていくこと。さらに、同じデザインの住宅が増えることで、二次流通時にも価値を評価しやすくし、販売後を含めた住宅のライフサイクルに関わっていくことが目指されています。
点在する拠点を陸・海・空の移動でつなぐ「NOT A GARAGE」
モビリティ事業「NOT A GARAGE」では、これまで各地のNOT A HOTELを起点に、ヘリコプターやクルーザーなどのシェア販売と運航を手がけてきました。今回の発表では、個々の乗り物に加え、鉄道駅やマリーナ、ヘリポート、空港などを含む移動インフラにも取り組む方針が示されました。
NOT A GARAGE代表取締役CEOの江藤大宗氏(以下、江藤氏)は、鉄道駅、マリーナ、ヘリポート、空港などが個別に開発され、異なるモビリティ間の乗り換えに課題があると説明。移動のハブを集約し、目的地までの乗り継ぎそのものを1つのサービスとして提案していく構想を明らかにしました。トヨタやパートナー企業との協業を通じ、機体などのハードや運営に加え、インフラの開発にも取り組みます。

また、新サービスとして発表された「NOT A GARAGE CLUB」は、ヘリコプター、クルーザー、クルマを利用できるサブスクリプションプランで、2027年春からサービスの提供が開始される予定です。東京を起点とする関東圏を中心に展開し、NOT A HOTELやNOT A HOUSEの展開に合わせ、サービス地域が広げられていく計画となっています。さらに、NIGO®氏が外観からキャビンまでクリエイティブディレクションを担当するGulfstream G500〈NIGO JET〉の共同所有プランも販売が開始されました。2027年12月から成田国際空港を拠点に運航が開始される予定です。
江藤氏は、アクセスのしやすさだけではなく、その土地の魅力から目的地を選べるようにすることを目標として挙げました。既存の交通機関では訪れにくい場所への移動も含め、各地の拠点をつなぐ仕組みを整えていくとしています。
文化を起点に街をつくる「NOT A CITY」
街づくり事業を担う「NOT A CITY」が向き合うのは、変化の途上にある地域や役割を終えた建物、都市に残された未活用空間など、日本各地に存在する「余白」です。NOT A CITY代表取締役CEOには、森ビルで六本木ヒルズや麻布台ヒルズなどの都市開発に携わってきた大森みどり氏(以下、大森氏)が就任しました。
建設費の高騰などによって、従来と同じ方法で都市開発を進めることが難しくなりつつあるなか、大森氏が掲げるのが「文化から街をつくる」という考えです。経済性や利回りを組み立てた後に文化を加えるのではなく、文化そのものを街づくりの出発点に据えます。
その事例として紹介されたのが、宮崎県青島です。2022年に開業した〈NOT A HOTEL AOSHIMA〉と〈青島ビーチヴィレッジ〉に加え、レストランのリニューアルやスケートボードパークの新設などを行い、観光客やサーファー、地域の人々が利用する場として展開してきました。質疑応答では、濵渦氏が青島での取り組みを1つのモデルとして挙げ、ほかの拠点でも施設などを加えながら場所を育てていく考えを示しました。

また、大森氏はNOT A CITYが対象とする「文化」について、美術館やアートに限定するものではなく、日々の生活、デザイン、ファッション、映画なども含まれると説明しました。こうした文化が街に根づき、育つ空間を、東京だけでなく日本各地に広げていく方針です。
都市での事業としては、三菱地所と進める〈JAPA VALLEY TOKYO〉が、2027年春に有楽町駅前で開業予定となっています。NIGO®氏とファレル・ウィリアムス氏が手がけるアート・商業・ホスピタリティの複合空間で、日本酒を中心に、日本の食やファッション文化を組み合わせた観光拠点を目指す計画です。
〈帝国ホテル〉の旧商業施設を約4年間活用する「NOT A MUSEUM」
NOT A CITYから今回新たに発表された「NOT A MUSEUM」は、建て替えを控えた既存施設と、その間に残された時間そのものを活用するプロジェクトです。舞台となるのは、2024年3月に営業を終了した〈帝国ホテルプラザ 東京〉。〈帝国ホテル 東京 タワー館〉の建て替えに伴う解体まで、1階の一部店舗を除く1〜4階、約2,000坪を活用します。事業期間は2027年夏から2031年3月までの約4年間です。NOT A CITYと協働するのは、設計事務所DAIKEI MILLSを中心に、都市の遊休施設などを時限的に活用してきたSKWAT。NOT A CITYとSKWATが企画・プロデュース・運営を担い、空間設計はDAIKEI MILLSとNOT A HOTEL ARCHITECTSが手がけます。

コンセプトは「CULTURE, IN THE MAKING.」。アート、ブック、音楽、ファッション、シネマなどが交わり、試され、変化していく。その過程そのものを体験するカルチャーの複合空間として計画されています。濵渦氏とSKWATの関係は、約5年前に進めていた〈NOT A HOTEL ASAKUSA〉のプロジェクトまで遡ります。質疑応答で濵渦氏は、「NOT A HOTELが目指してきたのは富裕層向けの建築をつくることそのものではなく、日本に50年、100年以上残るアートピースのような建築をつくること」だと述べ、この考えと、デザインの蓄積を文化として残そうとするSKWATの活動が重なり、今回の協働へとつながったとのことです。

左から申 真衣氏、濵渦伸次氏、江藤大宗氏、大森みどり氏 Photo: TEAM TECTURE MAG
「NOT A」の考えを、複数の事業へ
NOT A HOTELで新たな目的地をつくり、NOT A HOUSEで日常の住まいへ広げ、NOT A GARAGEがその間をつなぐ。そして、NOT A CITYが都市や地方に新たな場所をつくる。
一見すると異なる4つの事業について、濵渦氏は発表会の最後に「全ては1つにつながっています。この体験全体を構築し、作り上げていくことがNOTAです」と語りました。NOT A HOTELから始まった「NOT」の発想を、住宅、移動、街づくりへ。泊まる、暮らす、移動する。それぞれの体験を個別に捉えるのではなく、1つにつなげていくことがNOTAが目指す姿です。
特記なき画像:©︎NOTA
