窓に「本屋」「詩」と手書きした紙が張ってあるから、すぐに分かった。少々古めかしいビルの2階に、今年4月オープンしたのが「詩をはじめる本屋 蒼枯」だ。

     扉を開けると、約10坪の開放的な空間が広がり、アンティークな棚や台にお行儀よく本が並んでいた。詩集専門かな?いや違う。詩集以外の本も少なくないもよう。

    「図書館詩集」「漫画詩 さざなみ」と同じ平台に、イランの民話をもとにした絵本「ごきぶりねえさん どこいくの?」やユニークな単語集「翻訳できない世界のことば」があるというふうに。

    「詩をメインにした古本屋です。詩は1行の言葉を読んで、そこから飛躍して思い至ることがいろいろあるでしょう? そうした飛躍は、ほかの本にもあると思うんです」

     店主の青海賢(あおみ・すぐる)さんは、そう答えてから、「詩と社会」「詩と女性」「詩と写真」などと、大きくテーマ分けをして並べていると話した。「自分が詩で感じたことをベースに、他のジャンルのものを引っ張ってくるみたいな」とも。

    古本と新本が共存。合計約3000冊 詩をメインに絵本や写真集も

     なるほど。控えめな手書きペーパーがところどころに散見する。「目の眩んだ者たちの国家」の横に「(詩と社会)ひとりの語り口から社会の姿を見ようとする」、「本が生まれるいちばん側で」の前に「(詩と仕事)人が手を動かし、そのやることを生み出す営み」……。詩を起点に、棚があちらこちらへ枝を伸ばしているかのよう。その枝には古本と新本が共存。合計3000冊と見た。

     なぜこの店を?

    「高校のころから日記をつけ、その後は小説も書いていたんですが」と。メーカーに勤務していたが、住まいのあった駒込に、古本・新本が交ざる書店「青いカバ」があり、引かれたのが独立への一里塚。

     退職し、西荻窪の「古書 音羽館」で3年半修業。多忙で小説を書くことはおろか読むのも困難な時期があった。アルバイトの先輩に「詩だったら短い時間で読める」と吉岡実を薦められた。読んでみたら、「すっと降りてくるものがあった」。自分でも詩作を始め、古本+新本+詩という開業の方向が決まったのだという。

    「店名にした『蒼枯』は、私が好きな古びた趣を表す言葉です。辞書をめくって見つけました」ともゆるっと話してくれた。

    ◆中野区東中野1-56-5 ホシノビル2階/JR中央線・総武線東中野駅西口(南側)からすぐ/午後1~8時(金曜午後10時まで、土・日曜正午から)、月曜休み

    ウチの推し本

    「遠浅」シキジサオリ 自主制作写真集2300円

     川辺や白鷺(しらさぎ)のいる光景など町の断片を撮った写真が12枚収納されている。

    「僕は彼女の写真が好きなんです。店で写真のフェアをやるときに、SNSを見て応募して来てくれたのをきっかけに知り合いました。写真って、撮影者自身の持つイメージを投影するものだと思うんですが、彼女の写真は彼女の気持ちを強く表さないと僕は思う。だから好きなのかもしれません」

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