阿部進之介にインタビューを行った(撮影:永田正雄)

    【動画】阿部進之介、山田孝之らが審査員として参加! 個性豊かな“俳優”が参加するオーディション番組の予告

    同番組では、15歳以上であれば性別・国籍・所属事務所・演技経験の有無を問わない、間口の広いオーディションの裏側をリアルに捉え、応募者とパートナー双方が「俳優とは何か?」を追求する姿が映し出されていく。

    WEBザテレビジョンでは、共同で企画プロデュースを務める俳優の阿部進之介にインタビューを実施。俳優という職業の核や、“盟友”山田への思いを聞いた。

    ■「いい俳優であればあるほど、いい脚本家でもある」

    ――「THE OPEN CALL」は、応募総数1万3796人という大規模なオーディションでしたが、審査に携わってみての印象を教えてください。

    脚本ありきではなく、まず俳優がいて彼らに合わせて映画を作っていく試みなので、ずっと「いい俳優に会いたい」という目で見ていました。

    ――台本は、ト書きや句読点が一切ありませんでした。どういった狙いがあったのでしょうか?

    演技の可能性が無数にある中で、本人が何を選ぶかを見ていました。「ありがとう」という一言でも、いろいろな芝居の選択肢があります。

    でも、表面的な言い回しだけを作るのではなく、その人物がどういう人生を歩み、その瞬間にどんな気持ちを抱えているのかを考えてほしくて。そこを文字で説明してしまうと、答えを限定してしまう。

    何もない状態から自分で背景や感情の起伏を作り出せるかが試されているんです。僕は、いい俳優であればあるほど、いい脚本家でもあると思っています。

    ――「いい俳優は、いい脚本家でもある」とは?

    台本の中のやりとりを基に、相手のセリフにどう反応すれば役の気持ちを表現できるか。これを組み立てていくって、自分で脚本を書いているのと同じなんです。だからいい俳優は、脚本を読んだときに「こう変えたらもっと面白くなるんじゃないか」と芝居のアイデアを出せるのかなと思います。

    例えば「ありがとう」「ごめんね」というやりとりから、そこにいる登場人物の人間関係をいっぱい想像してみる。ト書きがないのはヒントがないっていうことだから、その分とても難しいです。だから事前に準備して、想像してくれたかどうかは、役者の芝居を見れば分かります。

    ――具体的に、どういったところでそれが分かりますか?

    その人の感情が動いているか否かを見ています。例えば相手のセリフを受けたときにノーリアクションでも、全く響いていないからの「無」なのか、響いているからこその無なのかは、違います。

    本当は小さくリアクションしているとかも。そういう細かな違いが起きるってことは、シナリオを読み解いて、相手の芝居が刺さる準備がすでにできているってことです。

    ――物語の中で、どんな感情や反応が投げ掛けられるか想像できていると。

    それに「バカ」と言われたら激しく怒る人物なら、言われた瞬間に激高する演技になります。それを見た人は「こういう言葉に強く反応するんだな」とすんなり理解できます。

    相手がいる芝居では、相手の言葉を聞いて何を感じているかが当然必要になってくるから、役作りができていれば、そうした反応は自然と豊かになっていきます。

    ■自然なアクションのためのアプローチ「考え過ぎない」

    ――撮影でも「ポーズを決め過ぎないで、自由に動いてみたい」と話されていました。その感覚はお芝居にも通じますか?

    僕は不器用なので、ポーズをかっちり決めようとすると体が硬くなってしまうんです(笑)。演技でも自分で細かく「こう見せよう」と狙いにいくと、作為が見えて不自然になるんですね。

    だから目標があったとしても直接狙いにはいかず、間接的にその結果が引き起こされるようにアプローチします。

    ――阿部さんなりの、自然なアクションのためのアプローチとは?

    転ぶシーン一つ取っても、「こういう形で転ぼう」と意識して転ぶと、「そういう格好で転ぼうとしている人」に見えます。そうではなく、人が自然にコケる状況を想像してみます。その前にどういう状況があって、どう動くべきかにフォーカスすると、結果として作為のないシーンになります。

    ただあまり瞬間の動きを考え過ぎると、僕は逆に意識が働いてしまい、硬くなってしまうので(笑)。考え過ぎないようにしています。

    ――ご自身も俳優として、多くのオーディションに参加してきました。経験も踏まえて、オーディションに臨む俳優にとって重要なことを挙げるなら?

    「選ばれよう」と思わないことですね。相手の求めているものを探って、それで選ばれようとすると、相手を見上げてしまうというか…自分軸がブレてしまうと思います。

    以前ある方が話していて共感したのですが、「この脚本ならこういう演技ができます。面白いですよね?」と提案するつもりで臨んだほうがいいと思うんです。

    ――対等に提案しにいくと。

    ある程度察する勘は必要ですが、同じ土俵に立って「こっちのほうが面白いよ」という姿勢で来てくれるほうが、個性も魅力もはっきりと伝わります。

    ■「SHOGUN 将軍」など海外撮影作品にも出演「進め方が大きく違いました」

    ――そして「SHOGUN 将軍」など海外の現場を経験したことで、作品作りへの視点に変化はありましたか?

    何もかもが経験なんですが…撮影の進め方が大きく違いました。北米だと「そこOK? じゃあとりあえずやってみよう」で、もうカメラを回していく現場が多くて。

    テイクも何度も繰り返す前提で、動くからこそ分かる課題も出てくるんだから、それを潰していけばいいというスタイルです。よっぽど衣装が汚れたりするようなシーンでない限り、トライ&エラーですね。

    ――日本はその正反対、つまり事前の擦り合わせを重ねていくのでしょうか。

    やっぱり、石橋をたたくというか…ディスカッションやテストで固めた上で本番にいきますね。どちらにも良さがあるから、両方のいい部分を組み合わせたハイブリッドなやり方ができたら、もっと面白い現場になるんじゃないかと感じています。

    ――これまでにも一緒に作品を作ってきた山田孝之さんについてもお聞きします。プロデューサーとしての山田さんはどういう存在ですか?

    何をするにしても、核心を突いてくれる人。課題とか今やるべきこととか、要点をつかむのがすごく早くて。ミーティングでも彼がいてくれると本当に「こうだからこう」くらいのシンプルな議論で終わります。僕らを導いてくれるいいパートナーです。

    ――では、俳優としての山田さんにはどういった刺激を受けてきましたか?

    20代で初めて共演したときからもう、僕がやっていない試みをやっているような人だったから、何でも聞きました。僕自身もいっぱい模索していたタイミングだったので、「何であのセリフが出たの?」「あれってアドリブなの?」みたいな小さなことから。

    すぐ「そうだよ」みたいに明確な返事をくれるから、そこからも掘り下げていくことができて。彼と組むと、発見は多かったですね。

    ■阿部が俳優として生きる人たちに伝えたいこと

    ――「俳優とは何か?」が「THE OPEN CALL」のテーマでもあります。阿部さんから、俳優として生きる人たちに伝えたいことは?

    一つ言えるのは、「俳優を目指しています」って言ってしまったら、俳優じゃなくなるんです。山田もよく同じことを言うんですが…。「俳優です」って言い切れないのは、言い訳というか、自信を持てない要素や弱さがあるんだと思います。言い切れば、自然とプライドや力もついてくる。

    オーディションだって、選ぶほうが偉いなんてことは全然ないです。勘違いしている人は多いけど。演技を作るのはプロデューサーにはできないし、俳優がいなければ作品は成立しません。

    だから僕もプロデュースする側にいても対等に接したいし、「こんな魅力的な芝居を作れますよ」ってスタンスで来てほしいです。

    ――阿部さんは俳優歴20年以上になりますが、自信を持てたのはいつ頃からでしたか?

    演技を始めたのも早かったですが、その頃から1人の俳優でいるつもりでした。まだほとんど作品に出ていなかった頃からですが、そこは一貫していましたね。

    そもそも、もう芝居をやっている身なわけですから。「俳優を目指しています」と思ったことは一度もなかったし、そうやってどの現場でも、これからも同じ仲間として作品を作っていきたいですね。

    ◆取材・文=大宮高史

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