こうしたリジェネラティブ・テクノロジーはその計算力によって、ニュートンの時代の科学革命に匹敵するインパクトをこれからもたらすはずです。

    3.物理的/実質的

    物理的(フィジカル)な現実と実質的(バーチャル)な現実が重ね合わさる「ミラーワールドを実現する技術(Designing for Mirror World)」もリジェネラティブ・テクノロジーとして期待しています。

    ミラーワールドは単に産業用デジタルツインの話だけではありません。人間の生成力を高めてくれる、人間のためのリジェネラティブ・テクノロジーになり得ます。これも、計算力が飛躍的に伸びることで社会に実装されていくでしょう。

    ぼく自身は脳の多様性(ニューロダイバーシティ)で言うと映像(イメージ)記憶が不得意で、具象よりも抽象が得意なアファンタジアなのですが、そうすると人の顔を覚えられなかったり、過去の自伝的記憶を忘れがちだったりします。

    いまやスマートグラスが市場にどんどん投入されてきていて、搭載されたAIで通訳から道案内から会話のアドバイスまで、物理世界を拡張するさまざまなユースケースが実装されてきました。人の顔を見たときに、その人の名前と前回会った場所、一緒に食べた食事などがスマートグラスに表示されるようになったら即購入したいとぼくは思っています。間違いなく、自分の脳の働きを補助し、ウェルビーイングを高めてくれると期待しているからです。

    4.単一的/多元的

    次に、「多元性を促す設計(Designing for Plularity)」を挙げたいと思います。普遍的な技術であるかのように振る舞いながら、ある特定の文化や宇宙観を反映した価値観を一元的に押しつけるのではなく、多様な社会や生き方が育まれる契機となるような、多元的な技術のあり方を実現するのが、リジェネラティブ・テクノロジーだといえます。

    たとえばデジタル民主主義の領域でいま議論されているクアドラティック投票(Quadratic Voting)という技術は、投票者が複数の論点に対して自らの選好の強度をストレートに反映できるように設計された投票制度です。従来の一人1票でイエス/ノーを選ばなければならない投票のやり方ではなく、イメージするなら一人100票をもって、自分が大事だと思うAには50票、次に大切なBには20票といったように、票に重みづけをしていくことで、より多様で複雑な民意をそのまま反映できるようになる、というわけです。

    また、先ほどのスマートグラスの例のように、一人ひとりの脳の多様性が可視化され、相互理解と多元的な社会実装が進んでいくための技術にも期待できます。日本科学未来館の「老いパーク」や、ベストセラー『認知症世界の歩き方』の体験型展示など、異なる環世界を理解するための拡張現実的な技術はますますそろってくるでしょう。あるいは、動植物のコミュニケーションを言語モデルで翻訳できるようになれば、それはマルチスピーシーズな社会の基盤(インフラ)となるはずです。

    5.制御的/創造的

    あらゆるものが計算可能となり、物理世界に情報が重ね合わさった時代に、リジェネラティブ・テクノロジーは単なるツールではなく、動的な生態系的存在として、環境や社会、人間からのインプットに応じて自己を更新していく進化可能な構造をもつのが理想です。

    サイバネティックなフィードバックループに取り込まれてひたすら最適化とパーソナライゼーションが繰り返されるだけでなく、身体をもったぼくたち人間や植物や動物が新たな「〝意味の生成の場〟に参加できるような設計(Designing for Poietic)」が求められるのです。

    Share.

    Comments are closed.