アラスカの奥地で、一人の退役軍人と元偵察犬に待ち受ける運命とは――?ブラッド・ピットの主演最新作『ハート・オブ・ビースト』(9月25日公開)は、大自然の中での過酷なサバイバル、人間と犬の熱い絆を描き、アクションと感動が究極に溶け合い、忘れがたい後味を残す。監督を務めたのは、ピットとは2014年の『フューリー』以来、2度目のタッグとなるデヴィッド・エアー。撮影現場でのピットとの関係や、犬を演出した秘話など、単独インタビューで語ってくれた。
「ブラッドが特に重視するのは、演じるキャラクターが“とりつかれている”もの」
「共同プロデューサーであるオリヴィア・ハミルトンから本作の脚本を受け取ったのは、何年も前のことです。その時点で、主人公のジェームズを演じる俳優として真っ先に頭に浮かんだのが、ブラッド・ピットでした。そこで彼に脚本を送ると、とても気に入ってくれて、ジェームズを演じたいとの返事をもらい、なんと言うべきか…“運命”を感じましたね」。
本作の監督を務めたデヴィッド・エアー[c]EVERETT/AFLO
『ハート・オブ・ビースト』の企画の始まりを、デヴィッド・エアー監督は、そう振り返る。エアーといえば、ピットを主演に迎えた『フューリー』のほかにも『スーサイド・スクワッド』(16)などアクションが見どころとなる作風を持ち味にする監督。最近は『ビーキーパー』(24)、『ワーキングマン』(25)と、ジェイソン・ステイサムの主演作を手掛けている。そのステイサムの仕事ぶりを、エアー監督は「建築家」「画家」、あるいは「職人」に近いと例えていた。ではピットは、監督の目にどのように映ったのか?
「ブラッドは、メソッドアクター(自身の経験や感情も利用し、役になりきる)に近い役作りをするタイプですが、同時に理性もはたらかせて演技します。彼が特に重視するのは、演じるキャラクターが“とりつかれている”もの。内に潜むゴースト(幽霊)を突き詰め、そのうえでディテールや動作に真実味を求めます。『なぜこう動くのか』『これにはどんな意味があるのか』を掘り下げて演じてくれます。今回は、森でのサバイバル術、火の起こし方、負傷時の応急処置、片手での作業、地図を使ったナビゲーションなど、ジェームズが持ち得るスキルを数多く習得し、撮影に臨んでいました。つまり、深い真実を基盤にしたアプローチです。ブラッドには“俳優のなかの俳優”という形容詞がぴったりですね」。
ジャーマン・シェパードのオーディンも主人公といって過言ではない[c]2026 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
『ハート・オブ・ビースト』の主人公は、ピットが演じるジェームズだけではない。従軍時代から任務を共にしてきた、ジャーマン・シェパードのオーディンだ。彼らは全編、ほぼ出ずっぱり。そのオーディンを任せた犬について、エアー監督に詳しく語ってもらった。
「オーディンは、4匹の犬に演じてもらいました。メインはウーバー(Uber)という名前で、ほかの3匹は彼の息子たちです。ウーバーは、深みのある表情も見せてくれる天才犬。あとは走るのが得意、泳ぐのが得意など特徴を見極め、その都度、“適任者”を選んだのです。理想の動きを細かいステップに分解し、一つ一つの動作をトレーニングしました。犬も疲れますから、その状態に気を配り、遊び感覚で楽しんで取り込ませることも大事。ある犬が疲れたら、『じゃあここは、ホンドー(ウーバーの息子)の出番だ』と交代させるわけです。ブラッドも早い段階からドッグトレーナーと一緒に犬たちに慣れていきました。なかでもウーバーとは、たっぷり時間をかけて心を通わせていましたね。映像から伝わる彼らの絆は、本物なんですよ。ただなんだかんだ言っても犬ですから、カメラを回している間、ブラッドといい雰囲気になっても、ふらっと気まぐれで離れてしまったりもする。『言うとおりに演技しないと、エージェントに連絡するぞ』と注意しても、犬には意味がない(笑)。逆にウーバーの驚くべき行動で“魔法”のような映像が撮れたりと、おもしろい現場ではありました」。
【写真を見る】ブラピ×犬、種を超えた強い絆が尊い!過酷な自然での撮影で“魔法”のような映像も[c]2026 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
ちなみにエアー監督の人生では、犬との深いつながりはあったのだろうか?その関係性も今回の演出に役立ったのではないか。
「実はジャーマン・シェパードを飼ったことがあります。ニーナという名前で、12歳まで生きたのですが、最後は安楽死させることになってしまい…。彼女はとても賢く、深い絆を育んだので、今回のウーバーとの仕事でもその経験が役立ちました。斜に構えてみたり、生意気な面もありつつ、愛情深いなど、ジャーマン・シェパードの性格は複雑で、そこを私も理解できていたのは、ニーナのおかげです」。
一方でオーディンは軍の偵察犬という設定のため、専門家からアドバイスを受け、リアリティを追求したという。
「アフガニスタンやイラクといった戦地で、軍用犬と活動した軍事アドバイザーの協力を仰ぎました。さらに軍用犬のハンドラーに、犬との関係性や信頼感の築き方を教えてもらいました。戦地に行く犬は檻で輸送されるのではなく、兵士たちと家族のように生活しながら移動するんです。そして過酷な戦地での経験を乗り越えて帰国したあとも、犬たちは兵士の家族のペットとして余生を過ごす。そんな事実も、本作の演出に生かされましたね」。
