大河ドラマ「豊臣兄弟!」の制作統括を務める松川博敬チーフプロデューサーにインタビューしました。1年間の放送の3分の2が終わり、いよいよ終盤のヤマ場を迎えるドラマ。これまでの放送に対する反応や手ごたえ、今後の見どころについて伺いました。(聞き手・「美術展ナビ」編集長 岡部匡志)

    直線的で分かりやすい構成が各世代で評価

    ――中盤を終え、終盤に入った大河ドラマ「豊臣兄弟!」。放送への反応はいかがでしょうか。
    松川さん 第27回の「本能寺の変」以降、視聴者の熱量がとりわけ上昇しました。特に子ども世代の皆さんが熱心に視聴してくださっている傾向が顕著で、これに引っ張られて親の世代、あるいは祖父母の世代も見る機会が増えているようです。歴史ドラマに初めて触れる機会として、子ども世代には特に見てほしかったので、狙い通りになっていると思います。

    ――視聴者からはどんな声が届いていますか。
    松川さん 子どもさんたちからはとにかく「面白い」。歴史の詳しい知識がなくても入り込みやすく、夢中になれると。高齢層からも「筋が追いやすい」「納得して見られる」という声が多いです。直線的で分かりやすい物語構成が評価されているようです。

    「待ってました!」の場面は見せる

    ――思い切ったフィクションの導入やストーリーの省略を織り交ぜる一方、大河ドラマファンが「これを待っていました」と楽しみにしている名場面はしっかり登場している印象があります。

    松川さん 信長(小栗旬)の「敦盛」や墨俣の一夜城、光秀(要潤)の「敵は本能寺にあり」などですね。最新の歴史研究を踏まえて様々なアレンジは施しつつ、みなさんが期待している場面はなるべく見せたいと考えています。

    新しい楽しみ方が受け入れられる

    ――思い切ったストーリー構成に踏み込む理由は。

    松川さん 歴史を再現するだけではなく、エンターテインメントとしてのドラマ性を最も重視しているからです。放送を通じて、そうしたスタンスへの理解が進んできたと思います。お子さんたちの熱狂が私たちの励みになっています。通説の変更では、「神君は伊賀越えしなかった」も反響が大きかったですが、好意的な反応が多かったです。史実としても確たる史料があまりないエピソードということもありますが、視聴者がドラマの新しい楽しみ方を受け入れてくださっていると感じました。

    家康の背景、しっかり描く

    ――ここ最近の放送は見せ場が次々と訪れる怒涛の展開です。

    松川さん 勝家(山口馬木也)と市(宮﨑あおい)の死を描いた前回の第33回は、秀長(小一郎)の秀吉の「2馬力」体制が確立するという点でも節目になりました。これまで温度差があった兄弟が同じ方向を向き、物語の進行を後押ししていくことになります。千利休(宗易/吉岡秀隆)の登場も大きいです。彼が立場を超えて本質的なヒントをあたえ、兄弟をサポートしていきます。ただし今作では、利休は過度に政治的に動く人物とはしていません。

    今度の日曜日(9月6日)の第34回は、家康を「最強のライバル」として描くかなり異色の回です。羽柴勢との全面戦争を前に、家康の背景をしっかり理解してもらう必要があると考えたからです。続く35回は小牧・長久手の戦いがダイナミックに描かれます。ぜひ楽しみにしてください。

    山田さんの秀次はぴったり

    ――これからストーリーは兄弟の天下一統を描いていきます。みどころを教えてください。

    松川さん キーマンのひとりは豊臣秀次(山田涼介)です。第40回前後から存在感が一気に高まります。豊臣家の次代を担う「プリンス」としての性格と、兄弟の確執をつくりだし、豊臣ファミリーの歯車を徐々に狂わせていく異質なキャラクターになります。気高さと鋭さを兼ね備える点で、山田涼介さんは秀次にぴったりと考えて起用しました。山田さんに大いに注目してほしいです。

    濃厚な人間ドラマでますます盛り上がります

    ――秀吉の後半生というと、どうしても暗黒面に囚われていくイメージが強く、秀長(小一郎)との関係性がどうなっていくのも気になります。

    松川さん 後半の兄弟関係は破綻や暗い対立ではなく、立場の変化によるズレとして描かれる面が多いです。秀吉は単なる暴君であるとか、狂気の人物ということではなく、最高権力者という立場に置かれることによるプレッシャーや、迷いによってもたらされる変化として表現されています。兄弟の確執も描かれていきますが、完全な断絶ではなく、不完全ながらもお互いの理解や歩み寄りもあり、前半とがらりと変わるということはないと思います。

    ――天下一統への流れが加速していくと、合戦といったスペクタクルな見せ場は少なくなってきます。視聴者にどうアピールするのでしょうか。

    松川さん 確かに激しい戦いの場面は減りますが、それ以上に濃厚な人間ドラマが展開され、ますます面白くなります。八津さんの見事な手腕が発揮されており、これまで以上に毎週、ドキドキハラハラの連続になります。

    最終回はどうなる?

    ――ちょっと気が早いですが、最終回はどうなるのか気になります。

    松川さん これから脚本が出来上がってくる段階なので、確たることは私も言えませんが(笑)、主人公不在の最終回ということはありません。最終回のどこかで秀長が亡くなり、その後に残された人たちの行く末が描かれると思います。これまで、ドラマに爪痕を残した人たちはしっかりと決着を付けてきました。

    常に死ぬまでを描くということではありませんが、秀吉や茶々(井上和)、慶(吉岡里帆)、家康、利家(大東駿介)ら物語で育ててきた主要なキャラクターについては、丁寧に締めくくる構成になるのではないかと思います。

    松川制作統括

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