『鬼武者 Way of the Sword』は、PS2を代表する戦国サバイバルアクション「鬼武者」シリーズの20年越しの最新作である。なお、本レビューは発売前のPS5版 Ver.01.000.000に基づいた内容となる。
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斬撃の「バッサリ感」よりもパリィの「ネットリ感」が際立つ戦闘、あからさまに足りていない敵の種類、水増し感の強い設計、いろいろと投げっぱなしで終わるストーリー、20年というブランクはあまりにも長過ぎたのか、何か違うと思える要素が盛りだくさんである。
それでも、これまでに見たことがないほどに滑らかなパリィモーションは芸術的とすら思える仕上がりであり、複数の戦闘システムが巧みに絡み合うことで生まれる「剣豪として場を支配し、敵を圧倒する快感」は間違いなく唯一無二のものである。そして、数自体は控えめながらも、魅力あふれるボスたちとの刺激に満ちた戦いは、本作でしか味わえない強烈な体験となるだろう。
複数の要素が絡み合う「至高の剣戟アクション」
鬼武者といえば「一閃」を基調とした独自の剣戟アクションということで、まずはじめに本作最大の特徴となる戦闘システムについて語っていきたい。本作の戦闘の根幹にあるのは「一閃」「受け流し」「弾き」「見切り回避」という4つの行動である。
「鬼武者」シリーズを代表する要素である「一閃」は、敵からの攻撃がプレイヤーキャラに当たる寸前に攻撃ボタンを押すだけで強烈なカウンター斬撃を繰り出すというアクションである。タイミングとしてはかなりシビアであるが、その威力は非常に高く、大半のザコ敵は一刀のもとに斬り伏せることが可能であり、強敵でも多大なダメージを与えることができる。「一閃」は飛び道具なども含めてほぼすべての攻撃に対して発動可能であるため、プレイヤーの腕前次第で敵を一方的に蹂躙することができてしまう。相変わらず極めがいのあるアクションである。

本作では斬撃を受けた敵の身体が刃のベクトルに沿って切断される。表現手法の進化に20年分の歴史を感じざるを得ない。
「受け流し」と「弾き」はいわゆるパリィ系統のアクションであり、発動に成功すると敵の「力動」(『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』の体幹にあたるゲージ)を削ることができる。「力動」を削り切ると敵は大きな隙を晒し、強烈な一撃を見舞うことが可能となる。これが「崩し一閃」であり、通常の一閃と並んで重要なダメージソースのひとつとなる。

「受け流し」と「弾き」はタイミングがかなり緩めで、攻撃モーション中やダメージリアクション中でも発動可能という快適さ重視の設定であり、防御に徹すればそう簡単に死ぬことはない。
操作方法としては、ただガードボタンを押すと「受け流し」となり、敵の方向に左スティックを倒しながらガードボタンを押すと「弾き」となる。「受け流し」と「弾き」をどう使い分けるかについてだが、以下の2つの動画を参照してもらいたい。
「受け流し」は力動を削る効果は控えめだが、敵の体勢を崩す効果があり、攻撃の流れを断ち切ることができる。
「弾き」は力動を削る効果が大きく、敵の攻撃の流れも継続するため、連続して成功させることでより手早く敵の力動を削ることができる。
本作はリズムゲーとも形容される連続パリィアクションを基調としているのだが、敵の攻撃のリズムを継続させる「弾き」だけでなく、リズムを断つ「受け流し」というアクションを追加したことで、敵の動きを支配している感覚をより強く感じることができる。この点については巷にあふれるパリィゲーに一石を投じる素晴らしいアイデアといって良いだろう。

「受け流し」を成功させてゲージを溜めると、刀が青い炎を纏って攻撃力が上昇する「気焔」が発動するが「弾き」ではゲージが溜まらないなど、副次効果の面でも使い分けが重要となる。
もうひとつの要素である「見切り回避」についてだが、これはいわゆるジャスト回避にあたるアクションである。力動を削る効果はないが、敵の攻撃を寸前で回避し続けて見切りゲージを溜めると高威力なカウンター攻撃である「見切り連斬」が発動する。こちらも受け流しや弾きと同じく、攻防一体のアクションである。
大半の攻撃は受け流しや弾きだけでも十分対応可能ではあるが、見切り回避には唯一の防御不可能な攻撃である「掴み攻撃」に対して強力な反撃を行うといった副次効果が存在する。また、敵の打撃技に対して見切り回避を成功させた直後に攻撃ボタンを押すと「追撃」となり、敵の力動ゲージを大きく削ることができる。つまり、敵の攻撃のタイミングだけでなく、その種類を見極めることでより有利に戦うことができるというものである。

敵の掴み攻撃に対して見切りを行い、敵を投げ飛ばす様子。
本作にいわゆるスタミナの概念はなく、いずれのアクションも発動を躊躇う必要はない。一瞬の隙をついて致命傷を与える「一閃」、敵の攻撃の流れを断ち切る「受け流し」、敵の攻撃を捌き切る「弾き」、的確な反撃機会を探る「見切り」、これら4つの要素が連続することで生じる、斬るも受けるも躱すも自由自在な万能感・無敵感は筆舌に尽くしがたいものがある。公式が謳う「至高の剣戟アクション」の名に偽りはなく、これだけでも購入する価値があると思われる。
また、上の動画のように4つの行動はキャラの向きに関係なく発動でき、攻撃を受けた方向に応じたモーションが用意されているなど、細かな部分への作り込みについても目を見張るものがある。受け流しで敵同士をぶつけるなどの変わったアクションもあり、同ジャンルの作品で嫌われがちな集団戦も楽しめる内容となっている。
そのほか、弾数が無限で扱いやすく、ザコ敵集団との戦いに非常に有用であったりと、何かと活躍の機会の多い「鬼ノ剛弓」、必要とされるゲージ量の関係から使用回数が限られるが強力な「鬼ノ武具」などのサブウェポンも充実しており、とにかくやれることが多い。

弓矢で火薬樽に火を付けて敵を爆殺したり、畳を蹴り飛ばして敵の集団を蹴散らしたりと、環境を利用した戦術も存在しており、そういった面でもやれることが多い。
特に慣れてくると弱いザコ敵の処理は弓矢で射るほうが早く、流れ作業で敵の頭を撃ち続けていると、もはやなんのゲームだかわからなくなってしまうほどに強力である。
本作には紹介しきれないほどに多くのアクションが存在するが、その中でひとつだけ、敵の攻撃を受け流すか弾いた際に稀に発生する「鍔迫り合い」については苦言を呈したい。連続パリィ系のアクションゲームでこういった類のランダム性は好ましいものではなく、鍔迫り合いが起きてからボタンを連打するだけの単調なアクションなので楽しいものでもなく、戦闘のテンポの面にも悪い影響を及ぼしているように思え、現在の形では不要に思えた。

鍔迫り合いの様子。チャンバラ感を演出するためのアクションだとは思うのだが、戦闘に慣れてくるとリズムに水を差される感覚があり、そのランダム性が気持ち悪く感じてしまう。
パリィの感触はトップクラスの心地よさ
「鬼武者」といえば「バッサリ感」、「バッサリ感」といえば「鬼武者」。もはや伝説級のキャッチコピー「バッサリ感」であるが、そういったプレイフィールの面がどうなっているかというと、これがまた何とも言いがたい仕上がりである。
一閃の各モーションを作り込み過ぎというか、誤解を恐れず言ってしまうと無駄に長い。「バッサリ感」とは、プレイヤーが「自分で斬ってる感」と言い換えても良さそうだが、各モーションの長さがその感覚を阻害しているように思えてならない。
通常の一閃については比較的短いモーションであり、まだ良いほうなのだが、一度敵の攻撃を避けてからの斬撃といった流れが基本となる。自分で回避ボタンを押しているのならまだしも、プレイヤーが押しているのは攻撃ボタンだけなので、感覚に若干のズレが生じてしまい「自分で斬ってる感」が薄れてしまっているように思う。
敵の力動を削りきった際に発動する「崩し一閃」については、ただモーションが長いだけでなく、斬撃を途中で止めてもう一度力を込めて斬り裂くなど、その多くが二段モーションとなっている。こちらも攻撃ボタンを一度押すだけであるため、操作感との乖離が生じているように思える。二段モーションでないものについても、ボタンを押してから刀を振るうまでに微妙に間があるモーションが多い。崩し一閃については通常の一閃よりもさらに感覚のズレが大きく、バッサリ感とは遠い感覚を抱く。
一閃が敵に当たる寸前にボタンを押すことで群がる敵たちに次々と一閃を叩き込んでいく「連鎖一閃」も健在であり、一閃を発動させやすい攻撃をトリガーに群がる敵集団を瞬殺するという戦術性は相変わらず面白い。しかしながら、スローモーション演出と妙に長い締めの斬撃モーションなどが相まって見ているだけの時間が生じてしまい、ボタンが表示されない「QTE感」すら抱いてしまう。肝心な爽快感という点では過去作に見劣りしているように思えてならない。
迫力ある効果音や斬撃を受けて千切れ飛ぶ敵の身体など、表現手法としては申し分ない仕上がりであることから、やはり斬撃モーションと操作感にネックがあると思われる。過去作の一閃モーションは現代の水準からすればややチープに映るが、シンプルかつ目にも止まらぬ速さで実行されるせいかいろいろとごまかしが効いており、こういった違和感を抱くことはなかった。カプコンが極めてきた重みの表現が仇となったように思えた「バッサリ感」だが、一方でその表現力は「パリィアクションの心地よさ」という多大なる恩恵を与えていることもまた確かである。
何と言っても、そのパリィモーションのひとつひとつが芸術的とすら思えるほどに高いクオリティを誇る。「受け流し」によって敵の重心を崩して死に体とする様子や、「弾き」によって技を以て力の方向を変えることで攻撃を逸らす様子は何度見ても飽きることのない、惚れ惚れするほどに流麗なモーションである。しかも、それが各敵のほぼすべての攻撃に対して用意されているのだから、その尋常ならざるこだわりぶりに脱帽するばかりである。
通常のアクションゲームであれば、こういったモーションはある程度のごまかしが必要となり、そのためにモーションスピードを早めているものである。その点、本作のパリィはその作り込みの凄まじさから、どのフレームも違和感がなく、時にはスローモーション演出を入れてまでじっくりネットリと見せてくれる。

「剣術」を感じさせる流麗なモーションで敵の刺突を受け流す様子。こういったアクションの一瞬を切り出すと違和感があるものだが、本作ではほぼ破綻がない。
パリィの心地よさについては、数多あるパリィゲーのなかでもトップクラスに位置していると言ってよいだろう。しかしながら、攻撃を加えた際の快感が今ひとつで、防御の快感のほうが強いというのは「鬼武者」シリーズとしてはどうなのか、という疑問は拭えない。なんというか「バッサリ感」よりも「ネットリ感」のほうが強いというべき現状にあり、期待していた内容と違っていたというのが正直な感想である。
キャラ強化などのRPG要素は必要最低限、遊びの幅の狭さについては否定できない
以上のように、本作はアクションの多様性とモーションのクオリティに全力が注がれているのだが、その結果として犠牲となった要素も少なくない。
まず、メインとなる武器は一振りの刀のみである。シリーズ過去作は刀のみならず、直剣や薙刀、槍、大槌から鞭や蛇腹剣、アサルトライフルまで多種多様に取り揃えられていた。お気に入りの武器に集めた赤魂(経験値)を注ぎ込んでいく体験は本作では味わうことができない。

各地で取得できる素材を消費して「装束」「刀」「篭手」のそれぞれを強化していくことが可能だが、ジワジワと各種のパラメータが上がるだけで大きな変化をもたらすことはない。

各装備の見た目を切り替える機能はあるが、性能面での変化はない。
敵の攻撃モーションのひとつひとつに「一閃」「受け流し」「弾き」など複数のアクションに対する専用モーションを用意する必要があり、ひとつ武器を増やすだけで地獄の作業量となってしまうため、当然と言えば当然であるが、シリーズファンとしては寂しさが拭いきれない。
また、本作ではキャラクターの強化要素としてスキルツリーが採用されているが、カスタマイズの幅はかなり狭く、ビルドの検討などスキルツリーに期待される楽しみ方は望めない。というよりも、スキルツリーが採用された理由として、本作はとにかくやれるアクションが多いので、習熟のための導線としての役割が大きいのだと思われる。

「吹き飛ばされた際の受け身」など最初からあっても良さそうなアクションもスキル化されているが、連鎖一閃の回数が増えた際などスキル習得の喜びがないわけではない。
よって、本作におけるプレイヤーキャラの特徴づけは「一閃の威力上昇」「各種ゲージの増加量+」などのパッシブ効果を付与する装備品「御守」に頼ることになる。しかしながら、いずれもパラメータが多少上昇するのみで、アクション性に何か大きな変化をもたらすような効果は存在していないようだ。本作の戦闘システム上、敵の攻撃のタイミングを覚えることが最重要であり、多少パラメータが上がったところで……といった側面もあり、こちらもやや影が薄い要素となってしまっている。

御守は3段階の強化が可能であり、効果量は10%から20%程度とそれなりに高いはずなのだが、敵の攻撃を見極めないことには勝負にならないので、効果を強く感じる場面はあまり多くなかった。
以上のとおり、メインとなる武器は一振りの刀のみ、スキルツリーはアクション習熟の導線、武具の強化やアクセサリでの個性付けは今ひとつという構成から、自分なりのビルドを楽しむといった遊び方はできず、本作においてキャラクターの強化はおまけ程度の要素だと言える。
唯一、個性を出せそうなのが、複数用意された「鬼ノ武具」である。しかし、必要とされるゲージ量の関係から発動の機会は少なめで、ボス戦の際には一閃や受け流し、弾きに夢中になっているうちに存在を忘れてしまうなど、個人的にはそれほど目立たない要素となってしまっていた。パリィゲーは得てしてそうなりがちではあるが、キャラ強化方面の幅の狭さについては否定できない状況にある。

本作は体力回復アイテムの所持数に強めな制限が設けられているが、最初に手に入る鬼ノ武具「双刀」には回復効果があるので、保険として温存しておくが結局使わず撃破、といったパターンが多かった。
敵の種類不足は明らかながら、作り込まれた各ボス戦は最大の魅力
そして、狂気的なまでに作り込まれたモーションは「敵の多様性」というアクションゲームとして最重要な部分にも暗い影を落としてしまっている。
本作でも過去作と同じく「幻魔」と呼ばれる怪物たちを相手取ることになるのだが、とにかくやれることが多いアクションと凝りに凝ったモーションが合わさったことによる当然の帰結というべきか、敵の種類の少なさは近年稀に見るレベルにあり、 クリアまでのプレイ時間目安である20時間に到底見合わない状況にある。
特にザコ敵については、決して多くはないボス敵よりも種類が少ないという状況にあり、序盤から中盤あたりのマップと終盤のマップとを比較してもほとんど顔ぶれが変わらない。ただ種類が少ないだけでなく、斬り結ぶことがほぼ不可能なタイプも複数存在しており、戦闘システムとして楽しめるザコ敵は本当に数えるほどである。
ボス敵についても、ザコ敵ほどではないながら種類が少なく、使い回しやマイナーチェンジが悪目立ちしている。序盤のボス「百穢」を例に挙げると、「百穢【強化】」というバリエーションが存在しているだけでなく、普通にプレイしていると通常版と強化版の合計で5回以上は戦うことになる。「百穢」は作中でも特に再戦の機会が多いボスであるが、他のボス敵たちも多かれ少なかれ似た状況にあり、それどころか全ボス中で再戦がないボスの方が珍しいというのが本作の現状である。

まったく異なる敵同士でも一部の攻撃モーションが共通していたりという不満もある。
序盤のボス敵との再戦については、そのときには解放されていなかったアクションを駆使することでいくらかの新鮮さを持って戦うことができる。しかし、各ボスはチェックポイントメニューからいつでも再戦可能である。その仕様もあって、再戦の機会にありがたみを感じることのないなか、ストーリーの進行に伴って何度も何度も同じボス敵と戦わざるを得ない状況となる。やはり敵の種類不足は、本作の明確な弱点である。
その代わりといってはなんだが、ひとつひとつのボス戦は深く作り込まれており、かなりのクオリティを誇る。ただ各種のモーションとパリィ時のリアクションが美しいだけでなく、ほとんどすべてのボスにいわゆる第二形態が用意されていたり、予想もつかない攻撃方法に驚いたりと刺激に満ちている。
大半の攻撃はいずれも予備動作がしっかりした素直なモーションであり、パリィの判定が緩いこともあって、理不尽に思う攻撃もほとんどない。各ボスはその特徴を活かした多彩極まる攻撃方法を有しており、各種の攻撃への対処方法を閃いた瞬間のハッとする感覚や、一閃のタイミングを覚えた際の爽快感なども含めて、とにかく戦っていて心地が良い。

普通に防ぐのは難しいが特定の方法で簡単に発動を止められる大技など、ギミックについても凝った内容となっている。
マイナーチェンジを登場させるにしても趣向が凝らされており、通常時とは一味も二味も異なる戦いとなる。また、複数体で再登場するタイプのボスもいくつか存在しているのだが、その際には専用の攻撃とその対応方法が多数用意されているなど、明確な数の不足をどうにか補えそうなくらいの工夫が施されている。ほぼすべてのボス戦が二度、三度倒しただけでは到底味わい尽くせないほどに作り込まれた内容となっており、種類不足が弱点であることはたしかである一方、ボス自体の品質は間違いなく本作最大の魅力であると言える。

ボス敵が複数で登場した際には「連鎖一閃」が猛威を振るうことになり、数的不利がそれほど苦にならない。パリィゲーで嫌われがちな複数ボスへの答えはここにあったのかと、20年越しの再発見である。
ボス戦の難易度についてだが、いわゆる易しいにあたる「活劇」と通常の難易度にあたる「剣戟」のうち、剣戟を選んだ筆者の場合、どのボス敵も死亡回数は多くて3回程度、初見で撃破も多数といった状況であった。筆者が、死にゲーや高難易度ゲーを数多くプレイしてきたということも影響しているかもしれないが、開発陣の「死にゲーではない」の言葉通り、難易度自体は通常のアクションゲームといった調整となっているようだ。

どんなに強そうなボス敵も防御に徹すればそう簡単に死ぬことがないため、敵の動きを見る時間を多く取れるという点も難易度の低下につながっていると思われる。
それでも一部の強敵にはそれなりの苦戦を強いられ、3回の死亡後の再戦でこちらの体力が底をつく寸前というギリギリな状態での勝利もあった。運が味方したこともあって結果としては3回の死亡であったが、 終盤のボス敵たちはさらに手強く、初見時には死にゲーのような絶望感が顔をのぞかせるものもあった。しかし、そのように苦戦したボスたちも本編クリア後に再戦機能で戦ってみると、意外にあっさりと撃破できるようになっていた。たしかな熟達を感じられ、個人的には非常にうまく調整された難易度になっているように思う。
重要視されているかと思いきや、いろいろと投げっぱなしで終わるストーリー
本作では、主人公「宮本武蔵」が幻魔たちとの戦いを通じて己の「剣の道」を追求するというストーリーが展開される。しかしながら、本作の物語は因縁としては何も終わっておらず、宿敵との決着なども含めて「第一部完」といった塩梅であり、消化不良感が強い。

「終わりよければすべてよし」というが、終わっていないのはそれ以前の問題である。
クリアまでに20時間程度と費やした時間の分、徒労感も大きい。ストーリーとしても間延びしていた感覚があり、同じプレイ時間でももっときちんと終わらせることが十分可能だったように思える。また、本作のストーリーの特徴として胸糞の悪い展開がやけに多い。そういった展開を入れるにしても気分が晴れる展開とセットであってほしいものだが、そのあたりも解消しないままであるため、最悪にモヤモヤとした気分のままの「完」であった。

「黒魂」を吸収することでその場の過去を見ることができるという設定から、プレイヤーが介入する余地のない過去の惨劇をじっくりと見せられ続けることになる。
初代「鬼武者」も似通った展開があったように記憶しているのだが、当然ながらそれ自体は魅力になりえない。また、本作の終わり方はいろいろと投げっぱなしではあるものの一応の「完」であるらしく、過去作のように次につながりそうな感じもあまりしない。
ゲームとしてのテンポを犠牲にしてまでイベントシーンがごく頻繁に挿入される点や、やけに長尺なムービーの数々、過剰なまでに作り込まれた表情なども考慮すると、本作の物語は強いこだわりを持って制作されていたはずである。過去作はそこまでストーリー重視な構成ではなかったが、本作は違うと思っていただけに打ち切りめいた終わり方には愕然としてしまった。なんとかキレイに終わらせるべきであったと言うほかなく、できる限り早期のアップデートやDLCなどにより本当の意味で完結することを願ってやまない。
終わり方とは別の問題として、「二刀流」「生涯無敗」「魅力あふれる剣士たちとの邂逅」「巌流島の決闘」など、「宮本武蔵」と聞いて想像する要素はほとんど存在しておらず、主人公を「宮本武蔵」に据える必要があったのか? という疑問も浮かんできてしまった。しかしながら、同じく実在の人物がモデルとなっていた過去作の主人公たちについても史実や逸話に基づいた展開は思い浮かばず、そもそも戦国武将が現代フランスにタイムスリップしたりするシリーズなので、「鬼武者」はそういうもの、気にするだけ損といったところだろうか。

史実っぽいイベントはゲーム開始直後の吉岡一門との死闘くらいだろうか。ここで二刀流が活躍したという説もあった気がするが、特にそういった展開もなく、作中の二刀流要素はごくわずかであった。
水増し感が強く、あまりにも味気がない京都の街
ストーリーがそういった現状にあるため、各マップを攻略する過程に面白みを見出したいところだが、そのマップデザインも褒められない状況にある。本作は「ワイドリニア」を謳う京都の街を中心としつつ、ストーリー上の要所では寺や要塞など、独立したステージクリア型のマップを攻略するといった構造が採用されている。
ワイドリニアなマップの各地では幻魔が群れをなしており、素材の入った宝箱や「狛犬」などの収集要素が散りばめられており、各地のNPCからはサブイベントを請け負うことができ、探索中に時折ランダムイベントが発生するなど、オープンワールドを思わせる要素が一通り詰め込まれている。
しかしながら、このオープンワールドっぽい要素がまたかなり困った出来栄えである。まず京都の街は見た目としてのバリエーションに乏しく、今ひとつ代わり映えのしない空間が広がっている。そして、先述のとおり敵の種類があまりにも少ないせいで敵との邂逅は早い段階で単なる作業となり、キャラの強化要素の不備から赤魂(経験値)は余りがちとなり、素材収集もそれほど楽しいものではない。たまに発生するランダムイベントも「人が幻魔に襲われているから助ける」といった内容以外は存在せず、虚無感すら覚えてしまった。

街なので各地には生きている人たちが配置されている。しかし、ただそこに置かれているだけといった形でなんのリアクションもなく、ハリボテ感が強い。

幻魔の配置箇所についてはほぼ固定されているが、人々が生活する通りのすぐ側で堂々と幻魔が人を食っていたりと、絵的にも違和感を覚えざるを得ない。
頼みの綱となる各サブイベントはごく短い会話に始まり、マーカーが示す先で幻魔を倒し、NPCのもとに戻って報告して完了という内容ばかりで、選択肢や展開の分岐があるわけでもなく、ひどく味気ない内容となってしまっている。なかには「風景画を参照しながらの宝探し」「各地に隠れている敵を見つけて矢で射抜く」といった内容のサブイベントも存在するが、ひたすらに面倒なだけで楽しめるものではない。

本編のストーリーも「あっちに幻魔が出たから倒してこい」が連続するため、メインもサブも含め、全編にわたって強いお使い感に苛まれることになる。

収集要素の狛犬。最初のうちは意外に個性的な狛犬たちとの出会いを楽しんでいたが、ストーリー進行に応じて探索済みの場所にも次々と追加されるため、次第に面倒な作業となってしまった。
さらに悪いことに、本作のファストトラベル機能はいつでも使えるわけではない。しかも決して多くはない各地のチェックポイント間を移動するだけである。探索やサブイベント進行のために入り組んだエリアを攻略したあと、最寄りのチェックポイントへと歩いて帰る際には「これは何の時間?」といった疑問が浮かんでならなかった。
先述のとおり、ランダムイベントもひどく味気ないものであることから、移動自体に楽しみを見出すことも難しい。本作には指定した場所へ光の玉が誘導してくれるというナビ機能が存在しているため、道に迷うことが少ないのは幸いだが、そのせいで余計に作業感を覚えやすいという側面もあり、ただただ無心でマーカー位置を目指すだけの時間が多くなりがちである。

賛否はあれど「不便を楽しむ」という狙いのあった同社の『ドラゴンズドグマ 2』などとは違い、移動自体に何か狙いがあるわけでもなさそうなので、ただ歩くだけの時間を多く取る理由がわからない。

ナビ機能が入り組んだ場所に対応しきれず、「目的地周辺に到着した」と表示されてからがわからないという、どこかで聞いたような状況になってしまうことも。
ワイドリニアなマップでの体験は水増しというより、水そのもの。何の味もしないままにひたすらに同じ場所を行ったり来たりするばかりで、率直に言ってひどく退屈であった。今どきの作品として完全リニアなゲームデザインとするのが躊躇われたのは理解できるのだが、本作の「ワイドリニア」を謳うマップデザインは取って付けたようにしか思えない。いっそのこと過去作と同じく最初から最後まで完全リニアな構造を取り、短めの一周を何度もプレイする形式のほうが印象が良かったのではないだろうか。
それでは、もう一方のステージクリア型のマップのほうはどうかと言うと、こちらもまた評価が難しい状況にある。散々述べてきたとおり、敵の種類の少なさが最大の問題となるが、マップギミックとしても回避不能なスリップダメージをプレイヤーのみに与えるエリア、やたらと多い遠方からの狙撃、とってつけたようなパズルなど、面白みを感じられないものばかりが目立つ。ごく一部のマップではホラーな演出とちょっとした謎解き要素、派手な仕掛けなどが相まってそれなりに楽しめたのだが、明確な特色があるのはそのマップだけであった。

弾数無限の「鬼ノ剛弓」や弾き返し、一閃など対応策も多いので他作品ほどストレスは溜まらないが、遠方から狙撃されるエリアがやけに多い。
マップの大半は流れ作業でザコ敵を蹴散らしながら面白みに欠けるエリアをひたすらに進むという状況が続く。最奥に待ち受けるボス戦が素晴らしい出来栄えであるだけに「もうボス戦だけでいいのでは」といった疑問すら浮かんでしまう。ボス撃破後についても、一部のサブイベント進行のためにクリア済みのマップを再度探索する場合もあり、どうにも水増し感が拭えない。すべてのサブイベントをこなすなど、だいたい遊び尽くすタイプのプレイを行った筆者はクリアまでに25時間程度を費やしたが、楽しめた時間はずっとずっと少なかったように思う。
ただし、諸々の検証も兼ねて本編クリア後に再び始めからプレイし、累計で35時間以上は遊んでいる筆者の場合、エラーによる強制終了などは一度も起こることはなく、フレームドロップによるカクつきを感じることすらなく、動作自体は非常に安定していたことは記しておきたい。
「至高の剣戟アクション」の名に偽りはなく、敵と斬り結ぶ快感は唯一無二とも言える輝きを放っている。しかしながら、敵を斬り捨てる快感である「バッサリ感」は行方知れずとなっており、あからさまに足りていない敵の種類、 取って付けたような探索要素、打ち切りとしか言いようのないストーリーと数多くの明確な欠点を抱えている。とはいえ、パリィ重視の剣戟アクションとしてはボス敵との戦いは史上最高峰とも言えるほどの魅力があり、ストーリーやボス戦以外の体験をかなり割り切ってプレイすることができれば、素晴らしい体験が待ち受けていることもまた確かである。
