『新感染 ファイナル・エクスプレス』(16)やNetflixオリジナルシリーズ「地獄が呼んでいる」「寄生獣 -ザ・グレイ-」などで知られるヨン・サンホ監督が長年構想を温めてきた『顔 -かお-』(8月28日公開)。40年前に失踪した母ヨンヒの白骨遺体を発見されたことをきっかけに、主人公のドンファンが顔さえ知らない母の人生をたどっていくサスペンス・ミステリーだ。来日したヨン・サンホ監督と、主人公ドンファンとその父親ヨンギュの一人二役に扮した主演のパク・ジョンミンに、本作誕生の背景や低予算、インディペンデントな制作環境に挑んだ裏側などを語ってもらった。
『顔 -かお-』で3度目のタッグを組むヨン・サンホ監督とパク・ジョンミン撮影/興梠真穂
「市場に好まれるような作品ばかり撮っているのではないか? という渇きのようなものがありました」(ヨン・サンホ監督)
――監督の作品はエンターテインメント色の強い大作が多いイメージですが、なぜ今回『顔 -かお-』を製作しようと思ったのでしょうか?
ヨン・サンホ監督「最初に『顔 -かお-』の脚本を書いたのは随分前のことで、ちょうど『我は神なり』を作っていた時でした。次の作品として、インディペンデントのアニメ映画を構想していました。『ソウル・ステーション/パンデミック』と『顔 -かお-』の2本が候補だったのですが、周りから『社会的な作品が続いているから次はジャンルものをやってみては?』と言われて『ソウル・ステーション/パンデミック』を撮ることにしたのです。それが自然と『新感染 ファイナル・エクスプレス』につながっていき、『新感染 ファイナル・エクスプレス』が予想外のヒットを記録したので、その後長い間、実写の大作が続きました。『顔 -かお-』を映画化するのは難しいのでは、と思いながら、漫画というかたちで執筆を続けていました」
『新感染 ファイナル・エクスプレス』より前から温めてきた企画がいよいよ実写映画化[c] 2025 WOWPOINT, ALL RIGHTS RESERVED.
――そして2018年に「顔」のグラフィックノベルが韓国で発売されました。
ヨン・サンホ監督「いろんな作品を撮っているうちに時間が経ちましたが、自分のなかに、市場に好まれるような作品ばかり撮っているのではないか? という渇きのようなものがありました。当時、私は黒沢清監督やエドワード・ヤン監督などアジアの巨匠の作品をたくさん観ていました。ちょうど、その頃『ガス人間』の脚本を書いていたのですが、監督を探している時に片山慎三監督を紹介してもらいました。片山監督の『岬の兄妹』を観たら、低予算ながらもすばらしい作品に仕上がっていて、嫉妬のようなものを覚えたのです。『自分にも、このような低予算の作品が作れるのだろうか?』と考えるきっかけになりました。『顔 -かお-』は出資を受けず自主制作のような形で作ろうと思い、妻に相談したところ、快く『10年間頑張ってお金を稼いできたのだから、好きなようにしたらどう?」と言ってくれて。妻の許可が下りた翌日すぐに、パク・ジョンミンに電話をしたら、彼はなにを思ってか『いいですね』と即答してくれたのです(笑)。その後、製作はスピーディに進みました」
――パク・ジョンミンさんは、その電話を受けた時、どう思ったのでしょう?
パク・ジョンミンは一人二役で、息子ドンファンと父ヨンギュを演じる[c] 2025 WOWPOINT, ALL RIGHTS RESERVED.
パク・ジョンミン「監督と仕事をするのはいつも楽しいのですが、短期間で撮れるチャンスを与えてもらえて、とにかくおもしろそうだなと思いました。かなり前に、グラフィックノベルの単行本をプレゼントしてもらって、それを読んだらすごく良かったのを覚えていたので、すぐに引き受けることにしました。監督からは最初、息子のドンファン役をオファーしてもらったのですが、息子だけではなく若き日の父親役も演じたらおもしろそうと思い、父親役も僕に演じさせてもらえませんか?と提案したところ、監督もそうしようと言ってくださり、一人二役という形で参加することが決まりました」
――そうだったんですね。
パク・ジョンミン「より正確にお伝えすると、若き頃の父親役は誰を念頭に置いていらっしゃるんですか?と質問したところ、監督は僕の質問の意図をすぐに把握されて、『一人二役も考えているよ』と答えたのです」
