ヤスパー・トロン・ニールセン/「ロイヤル コペンハーゲン」クリエイティブディレクター

    夥しい美しきものに戸惑い、やがて着想源に。

    「ファッションデザインは商品そのものだけでなく、背景にある物語を伝えることに長けています。テーブルウェアでも、その視点を大切にしたい」と語るのは、ロイヤル コペンハーゲンのクリエイティブディレクター、ヤスパー・ニールセン。

    バーバリーやジバンシイなどで経験を重ねた彼はいま、250年以上の歴史を持つ陶磁器ブランドの舵取りを任されている。異色の転身に映るが、本人には自然な流れだったという。

    「私は25年近くデンマークを離れて暮らしましたが、毎日ロイヤル コペンハーゲンのうつわを使っていました。世界のどこにいても故郷の一部を持ち歩いているような感覚でしたね」

    だからこそオファーに迷いはなかった。しかし、就任後に向き合ったアーカイブの存在は想像以上に大きかったという。

    「初めて見た時は圧倒されました。『何という世界に飛び込んでしまったんだろう』と(笑)。美しいものがあまりにも多くて、自分に何ができるのかわからなかった。でも長く向き合ううちに、それが無限のインスピレーションの源になりました。過去を振り返ることが、未来を示してくれる」

    扱うものは異なるが、制作工程には共通点も多い。アイデアを出し、リサーチをして、スケッチを描き、プロトタイプを作って製品へ落とし込んでいく。一方で決定的な違いもあった。

    「ファッションは1〜2年で消費されていくことが多いですが、ここで作るものは違う。人々が生涯使い続け、子どもや孫の世代にまで受け継がれていく。デンマークでは多くの人にロイヤル コペンハーゲンにまつわる記憶や物語がある。コレクターも多く、プロダクトへの感情的な結びつきが深いんです」

    就任以来取り組むのは、デザインを生み出すことだけではなく、ブランドの歴史を現代へどう接続するかという挑戦だ。

    「250年前に生まれたデザインには重みがある。それをどう新しく見せるのか。いまのライフスタイルに合う機能を加えながら、DNAは守る。バランスを常に意識しています」

    今回、新たに発表したカスタマイズサービス「テーラードヘリテージ」も、その思想から生まれた。色、文字などを組み合わせ、自分だけの一品を仕立てることができるこのコレクションは、ブランドの価値観を再解釈したものだ。

    「人々はもう大きな食器セットを揃えようとはしません。毎日使いたいと思える、自分のための一点を選ぶ時代です。ファッションでいう“Be Yourself”の流れに近いですね」

    彼がロイヤル コペンハーゲンで挑んでいるのは、新しいうつわを作ることだけではない。受け継がれてきた価値を現代の暮らしの言葉で語り直し、人々一人ひとりの物語と結びつけること。ラグジュアリーファッションの世界で培った経験を持つ彼だからこそ、その役割が担えるのかもしれない。

    10種のフルレースデザインと4色のカラーから選べる各アイテムに、イニシャルやシグネチャーエンブレムを施すことのできるカスタマイズサービス「テーラード ヘリテージ」が登場。日本では東京・新丸ビル店ほか催事で注文でき、納期は約3~6カ月を予定する。¥148,500~

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