【写真】King Gnu「GO GHOST」場面カット

     過去のアニメシリーズとの多くの相違点が指摘されるなかで、King Gnuによるオープニングテーマ「GO GHOST」は、冒頭わずか10秒程度の民族的なコーラスによって、これは紛れもなく『攻殻機動隊』であることを強く視聴者に印象づけた。『攻殻機動隊』の音楽において伝家の宝刀である民族的な要素をいきなりチラつかせ、間髪入れずKing Gnuらしい独創性あふれる音楽へと引き込んでいく手法は、オープニングテーマとして実に見事で、彼らなりの『攻殻機動隊』への愛を感じた。

    ■川井憲次が生んだ『攻殻機動隊』の神秘性
     『攻殻機動隊』は、1995年に押井守監督の映画『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』で初めて映像化された。原作の根底に流れるフィロソフィーが全面に押し出された作風は実に押井らしく、2004年に公開された『イノセンス』では人気キャラクターであるバトーをメインに、ハードボイルドタッチで重厚に描かれた。押井版のサウンドトラックは『機動警察パトレイバー』の音楽でも知られる川井憲次が担当。なかでも「謡I – Making of Cyborg」などが有名だ。能や雅楽で使われる太鼓や鈴の音色をメインにしたトラック。民謡歌手たちが歌う、まるで太古から歌い継がれてきたかのような民族的なメロディとハーモニー。そして日本語と英語で綴られたスピリチュアルな歌詞。近未来を舞台にした世界観とはミスマッチとも思えるその音楽が、劇中で草薙素子が光学迷彩をまとって高層ビル群に消えてゆくシーンを、実に神秘的で神聖さのあるものへと昇華させた。これによって『攻殻機動隊』=民族音楽といったイメージが、世界的に印象づけられたと言っていい。

     2002年から放送された、神山健治監督による『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』シリーズでは、サイバー犯罪に立ち向かう公安9課の活躍にスポットが当てられ、いわゆる刑事ドラマのようなスリリングなタッチで描かれた。サウンドトラックは、大友克洋が総監督を務めた映画『MEMORIES』への参加や『カウボーイビバップ』シリーズを手がけてその名を轟かせていた菅野よう子が担当。主題歌はロシア人シンガーソングライターのOrigaが抜擢され、作詞とボーカルを担当した。Origaによるロシア語と英語が混在した作詞は独特で、ロシア語という耳慣れない言語の中で突然飛び出してくる耳慣れた英語にハッとさせられる。またファルセットで歌い上げる浮遊感あふれるボーカルは実に神々しく、菅野によるキャッチーなメロディーともあいまって、視聴者に強烈なインパクトを残した。押井版で印象づけられた神秘性はそのままに、民族色は無国籍なものへと進化。そこへ近未来感とも親和性の高い打ち込みのビートやバンドサウンドも加わり、未体験のスリリングな物語へと視聴者を導き、「rise」や「player」など“神曲”と呼ばれる楽曲が生み出された。

     2015年には、黄瀬和哉が監督、冲方丁の脚本による『攻殻機動隊 ARISE』シリーズが公開され、公安9課が発足するまでの前日譚を軽快なテンポ感で描いて話題を集めた。サウンドトラックはコーネリアスが手がけ、オープニングテーマである「GHOST IN THE SHELL ARISE」は、『攻殻機動隊』アニメが生まれた1990年代のクラブシーンを席巻したジャンルの一つである“アンビエントハウス”をベースに、バリの民族音であるガムランを再構成したような実験的なサウンドによって、『攻殻機動隊』音楽の歴史に新たな衝撃を加えた。『攻殻機動隊 ARISE ALTERNATIVE ARCHITECTURE』オープニングテーマ「あなたを保つもの」、映画『攻殻機動隊 新劇場版』主題歌「まだうごく」には、草薙素子役を演じる坂本真綾がボーカルで参加。エモーショナルでありながら温度感が一定に保たれた坂本のボーカルは、体がサイボーグ化されていくなかでの魂(ゴースト)の在りかを問うていく、『攻殻機動隊』シリーズ共通のテーマと通じたものを感じさせ、そのなかで揺らぐ様子がうかがえる。

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