東京ステーションギャラリー(東京都千代田区)で「水滸伝」が9月19日から開催されます。
中国四大奇書の一つとされる「水滸伝」は、北宋時代末期、12世紀の史実をもとに成立しました。小説の内容は、徽宗皇帝の治世を舞台に、腐敗した政権に不満を抱いた宋江率いる108人の豪傑が梁山泊に集うというものです。日本に伝わった「水滸伝」は江戸時代に一大ブームを巻き起こし、オリジナルとは違った新たな物語や表現が生み出されていきました。曲亭馬琴は葛飾北斎の挿絵で「新編水滸画伝」を出版、さらにその日本版ともいえる『南総里見八犬伝』を著し、その後多くの翻案作品も生まれました。また、歌川国芳が描いた豪傑たちの錦絵は、彼の出世作としてよく知られています。現代でも、小説や漫画、ドラマ、ゲームなど、多彩なメディアで「水滸伝」のイメージが親しまれているといえるでしょう。
本展では「水滸伝」に着想を得た作品とともに、物語が生まれた時代背景や世界観が、美術と資料を通して紹介されます。北宋〜清の多彩な中国美術、および江戸〜現代にいたるまでの日本美術を多角的に展観し、「水滸伝」の奥深い魅力に迫ります。
水滸伝
会場:東京ステーションギャラリー(東京都千代田区丸の内1-9-1)
会期:2026年9月19日(土)~11月8日(日)
※会期中、一部作品の展示替えを実施
開館時間:10:00~18:00(全曜日~20:00)
※入館は閉館30分前まで
休館日:月曜日(ただし9/21、10/12、11/2は開館)、10/13(火)
入館料:一般1,600円、高校・大学生1,100円、中学生以下無料
※障がい者手帳等持参の方は、一般1,100円、高校・大学生900円[ともに介添者1名は無料] ※当日券はオンラインチケットおよび東京ステーションギャラリー1階でも販売
アクセス:JR東京駅丸の内北口改札前
詳細は、東京ステーションギャラリー公式サイトまで。
第1章 梁山泊へようこそ
中国で生まれた物語「水滸伝」は、日本に伝わり、長く愛されてきました。その世界を鮮やかに描き出したのが、江戸時代後期の浮世絵師・歌川国芳です。国芳の出世作「通俗水滸伝豪傑百八人之一人(壱人)」では、豪放な好漢たちが、筋骨たくましい姿で画面いっぱいに躍動しています。この連作は現在74枚が確認されており、東京ステーションギャラリーではそのすべてが一挙公開されます。国芳が描いた“梁山泊の世界”を、存分に楽しんでみてはいかがでしょうか。
★作品保護のため照度を下げて展示されます。
歌川国芳《通俗水滸伝豪傑百八人之一人 花和尚魯知深初名魯達》江戸時代(19世紀)、個人蔵
歌川国芳《通俗水滸伝豪傑百八人之一個 九紋龍史進 跳澗虎陳達》江戸時代(19世紀)、個人蔵
第2章 豪傑たちの生きた時代
「水滸伝」の舞台となった北宋時代の末期は、都市経済と文化が大きく栄えた時代でした。その繁栄を象徴する作品が、都・開封の賑わいを描いた重要文化財、趙浙《清明上河図》です。燕文貴《江山楼観図》や、宮廷で珍重された汝窯《青磁水仙盆》、さらに黄庭堅、米芾、蘇軾の書など、北宋文化を代表する名品の数々が紹介されます。
しかし、華やかな都市文化の裏では、重税や格差に苦しむ人々も多く、社会には不安が広がっていました。「水滸伝」の豪傑たちが生まれた背景には、こうした矛盾を抱えた時代の姿があります。本章では、繁栄と不穏が交錯する北宋時代末期の世界を、宮廷文化と文物を通してたどります。
【展示期間(予定):*1=9/19~10/2、*2=10/3~10/25、*3=10/14~11/8】
重要文化財 趙浙《清明上河図》(部分)、明時代・万暦5年(1577)、林原美術館【会期中場面替えあり】
《青磁 水仙盆》汝窯、北宋時代(11世紀末~12世紀初)、大阪市立東洋陶磁美術館(住友グループ寄贈/安宅コレクション)、写真:六田知弘
仇英(款)《九成宮図》(部分)、明時代(16世紀)、大阪市立美術館(阿部コレクション)【会期中場面替えあり】
重要文化財 米芾《草書帖》北宋時代・紹聖4年(1097)~元符2年(1099)、大阪市立美術館(武居巧氏寄贈)【展示期間(予定):10/3~10/25】
第3章 武侠伝説・水滸伝の誕生と流行
「水滸伝」はフィクションですが、そのルーツには徽宗朝で起きた宋江の反乱(1121年)があります。史実では盗賊として記録された宋江一味も、宋末元初に龔開が「宋江三十六賛」で義勇を称えたように、次第に“義”を重んじる英雄として語られることとなりました。
本章では、美麗な挿画を備えた120回本の『忠義水滸全伝』(明時代末)をはじめ、パラレルワールド的世界を描く『新刻繍像批評金瓶梅』(明時代末)、さらに中国で描かれた水滸伝群像を日本の絵師が模写した作品などが展示されます。水滸伝がどのように生まれ、広まり、多層的なイメージを帯びていったのかを見ることができます。
夢英《十八体篆書碑》北宋時代・太平興国9年/雍熙元年(984)以後、台東区立書道博物館
『忠義水滸全伝』明時代末(17世紀)、東京大学東洋文化研究所【会期中ページ替えあり】
第4章 拡張する英雄像
17世紀に『水滸伝』が日本にもたらされると、18・19世紀には翻訳や翻案が次々と刊行され、大きな流行を生みました。その図像表現の先駆けとして挙げられるのが、曲亭馬琴作・葛飾北斎画『新編水滸画伝』にみられる、北斎ならではの大胆な構図と迫真の人物描写です。歌川国芳も、先行する図様を踏まえつつ独自の創意を加え、多彩な水滸伝世界を描き出しました。「水滸伝」のイメージは歌舞伎、狂画や、遊女を豪傑になぞらえた錦絵、さらには双六や半纏にまで広がり、江戸の人々の日常へ深く浸透していきます。さらに「水滸伝」の英雄像は、馬琴の『南総里見八犬伝』を生み、日本独自の英雄像へと姿を変えながら、鮮やかに拡張していきました。
歌川国芳《狂画水滸伝豪傑一百八人 十番続之内壱》江戸時代・文政10年(1827)頃、個人蔵
曲亭馬琴作・葛飾北斎画『新編水滸画伝』初編 巻之十、江戸時代・文化4年(1807)刊、浦上蒼穹堂
卍斎田蝶《水滸伝浪切張順刺子半纏》 江戸時代(19世紀)、其角堂コレクション
第5章 忠義のゆくえ
「水滸伝」は現代にいたるまで読み継がれ、文学や美術だけでなく、映画、ドラマ、漫画、ゲームなど多様なメディアで新たな解釈が重ねられてきました。梁山泊の豪傑たちは、時代ごとに異なる姿で描かれ、「水滸伝」という言葉自体も豊かな広がりをみせています。本章では、小説を彩った挿絵や漫画原画、白髪一雄のアクション・ペインティング、連続ドラマ「北方謙三 水滸伝」の衣裳、小林勇輝のパフォーマンスなどが紹介されます。これらの資料を通して、「水滸伝」が現代日本の文化・芸術の中でどのように展開し、忠義や抵抗といった主題がどのように変容してきたのか、そのゆくえを探ります。
さいとう・たかを《『水滸伝』原画》©さいとう・たかを/さいとう・プロダクション
中国で誕生し、時空を超えて日本の江戸文化、そして現代の多彩なメディアへと受け継がれてきた「水滸伝」。本展では、その豪快で魅力あふれる108人の豪傑たちが織りなす梁山泊の物語を体感できる、さまざまな作品が一堂に集結。美術や工芸、浮世絵から、現代の漫画やドラマまで、国や時代を越えて多様に表現されてきたその物語世界を、心ゆくまで体感できる貴重な機会になりそうです。ぜひ、本展で『水滸伝』の圧倒的な魅力に触れてみてはいかがでしょうか。(美術展ナビ)
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