ー まずは、ブランド名「Hairy Mary」の由来について教えてください。

    「Hairy Mary」という名前には、いくつか理由があります。まず、面白くて、ちょっと思わせぶりで、セクシーで、少し挑発的。それに、一度聞いたら忘れられない名前でしょう? もうひとつは、ブランドをヘアアクセサリーからスタートしたので、「Hairy」という響きを入れたかったんです。

    ー ブランドコンセプトである「Funky, Folky and Fruitcake」についてはどうですか?

    あれは半分ふざけて言っているようなもの(笑)。私はブランドをあまり深刻なものにはしたくなくて。世の中には、悲しいことやつらいこと、重たい出来事がたくさんあります。だから、自分が時間をかけて何かを生み出して世の中に送り出すなら、それは楽しくて、少しおかしくて、型にはまらないものであってほしい。私は末っ子だからか、昔から目立つのが好きで、いつもエネルギー全開(笑)。このコンセプトは、そんな自分自身をそのまま表しているのかも。

    ー アイデアは、どんなときに思い浮かびますか?

    夜ですね。私は完全な夜型なので、だいたい夜10時から朝4時くらいまでが一番クリエイティブです。

    ー 朝の4時ですか!?

    そう、ときどき本当にそのくらいまで! その代わり午前中はまったく動けません(笑)。

    ー その時間は、どんなふうに過ごしているのでしょう?

    服を縫ったり、生地を自分の体に当ててピンで留めたりしながら、形を変えて試してみたり。とにかく布を触って、組み合わせて遊んでいる時間が一番クリエイティブになれる気がして、大好きなんです。私たちはその時間を「ミッドナイト・アワー」って呼んでる(笑)。

    ー それでは、服作りを始めたきっかけについて教えてください。

    もともとファッションはずっと好きでしたし、物を別の用途へ生まれ変わらせることにも興味がありました。でも、本格的にブランドを始めたのは、母が亡くなった直後でした。当時は精神的にも本当に苦しい時期だったんです。

    ー その経験が、ものづくりへ向かうきっかけになったのでしょうか?

    はい。母は私に裁縫を教えてくれた人でもありました。だから服を作ることが、彼女とつながるための大切な時間のように感じられたんです。亡くなったあと、「母が誇りに思ってくれるようなことを、自分は何かできないだろうか」と考えました。それが、このブランドを始めたきっかけです。今ではこのブランドそのものが、彼女へのオマージュのような存在になっています。

    ー ブランドの背景には、お母様との大切なストーリーがあったんですね。

    母は乳癌を患っていました。でも最後まで本当に前向きで、生命力にあふれた人だったんです。今でも私にとって、一番のインスピレーションであり続けています。それに、どんな状況でもユーモアを忘れない人でした。だから私も、このブランドではその精神を大切にしたいと思っています。深刻になりすぎず、少し肩の力を抜いて、思わず笑顔になれるようなものを作りたいと。

    ー また、癌患者とその家族を支援するチャリティ団体「Maggie’s Centre」に利益の5%を寄付しているとお伺いしました。

    そうなんです。この団体は、母が癌を患っていた時から亡くなった後まで、私たち家族を本当に支えてくれた存在でした。「Hairy Mary」は、母への追悼と、その存在を忘れないために始めたブランドでもあります。すべてのアイテムに刺繍している胸のモチーフは、その想いを象徴するものです。そこには、母への想いと、癌と向き合うすべての人への支援の気持ちを込めています。

    ー 服をデザインするときに、大切にしていることは何ですか?

    一番はサステナビリティ。私は、デザイン画を描いてから生地を買いに行くような作り方はしていません。まず出会った生地があって、その生地からインスピレーションをもらうんです。「これはトップスになるかな」「ショーツかな」「ドレスかな」と、生地と対話するように考えていく。つまり、何を作るかを決めるのは、私ではなく生地なんです。その生地が持ってきた歴史を、新しい形へ生まれ変わらせること。それが私にとってのサステナビリティであり、大切にしていることです。

    ー とても素敵ですね。

    もちろん、お客様のことも考えています。でも、それ以上に「自分が本当に着たいと思えるもの」を作ることを大事にしています。そして、それを好きだと思ってくれる人が、私の服を選んでくれるんです。だから、トレンドを追いかけることにはあまり興味がありません。もちろん他のデザイナーや今の流れを見るのは好きですが、目指しているのは流行ではなく、長く愛されるタイムレスな服です。

    ー 初めて「Hairy Mary」を見つけた時は、どこか懐かしさもあり、今の気分でもあるブランドだと思いました。身につけると
    ポジティブな気分になれますし。

    そう感じてもらえたなら、本当にうれしいです。サイズ感や実用性を完璧に追求したいタイプでもないんです。それよりも、「Hairy Mary」の服を着ている人を見て、誰かの心を動かせること。その驚きや楽しさのほうが、私にはずっと大切なんです。

    ー モノづくりをする上で、大切にしていることはなんですか?

    私は、どこか懐かしさを感じさせるものや、人に喜びを与えられるものを作りたいと思っています。人生は深刻なことが多すぎますよね。だから、私が時間やエネルギーを使うなら、人を笑顔にできるものにしたい。子どもの頃の感覚や遊び心も、とても大切にしています。

    ー アップサイクル素材にこだわったモノづくりをしているところも魅力的です。

    できる限りアップサイクル素材だけを使うようにしています。新しく使うものがあるとすれば、縫い糸くらいですね。私は、ファッション業界のサステナビリティの欠如に加担したくないんです。何かを作るなら、長く愛されて、きちんとストーリーのあるものを作りたい。ただ新しいものを大量に生産することには、あまり魅力を感じません。

    ー テーブルクロスや時計、シルバーの金具まで、すべてセカンドハンドのものを使っているんですね。

    古い生地には、それぞれの歴史があります。そこに新しい命を吹き込み、また誰かが身につけることで、その物語が続いていく。私はそこに大きな意味があると思っています。

    ー ロンドンのカルチャーからは、何か影響を受けていますか?

    はい、とても! 特に最近ソーホーに移ってきてからは、この街のパンクで荒々しい空気にますます惹かれるようになりました。ヴィヴィアン・ウエストウッドをはじめ、ロンドンには反骨精神のあるカルチャーが根付いていて、その存在は私にとって大きなインスピレーションです。もちろん、今の世界やイギリスにはさまざまな問題があります。でも、ロンドンにはどこか反抗的で自由なエネルギーがあって、人々の着こなしにもいつも刺激を受けています。

    ー 「Hairy Mary」はどのアイテムもどこかエッジが効いていて、それが感じられます。

    スコットランドの伝統も大好きなんですが、それをロンドンらしく再解釈するのが好きなんです。たとえばキルトにスタッズやレザーを合わせたり、パンクの要素を加えたり。街を歩く人たちのスタイルや、この街のカルチャーそのものが、私のものづくりに大きな影響を与えています。

    ー ブランドを通して、どんなメッセージを届けたいですか?

    ファッションって、ときどきすごく真面目になりすぎることがありますよね。でも私は、「人生は短いんだから、もっと楽しもうよ」と伝えたい。母が亡くなったことで、自分はこれから何をして生きていきたいのかを、じっくり考える時間ができました。そんな時間を持てる人ばかりではないので、ある意味では恵みでもあり、同時に悲しみでもあったと思います。だからこそ、このブランドを始めることができました。

    ー そうだったんですね。

    本当にありがたいことに、ブランドは自然な形で少しずつ広がっていって、今もこうして続けられています。それは私にとって、とても幸せなことです。

    ー 最後に、今後の展望について聞かせてください。
    私は、あまり先のことを決めすぎないタイプ(笑)。その日その日を楽しみながら進んでいきたいと思っています。今の一番の目標は、このソーホーのショップを育てること。ここをただ服を売る場所やショールームにするのではなく、誰でも気軽に立ち寄れて、イベントが開かれたり、人が自然と集まったりする場所にしたい。

    ー 今後のイベント情報や新しいプロダクトを見るのが楽しみです!

    私が目指しているのは、「Hairy Mary」の世界観そのものを体験してもらえる場所をつくること。そして、服だけではなく、ちょっとふざけた雑誌が置いてあったり、不思議なガラケーが並んでいたり、ただ遊びに来て、のんびり過ごせたり。ここを訪れることで、服だけではなく、「Hairy Mary」のライフスタイルそのものを感じてもらえるような空間にしていきたいと思っています。

     

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