大好きだったドラマが終わってしまいました……。今、わたしは『ミッドナイトタクシー』(NHK総合)ロスのまっただなかにいます。本作は、タクシー運転手の象子(古川琴音)が、夜の街でさまざまな事情を抱えた乗客と出会い、その人生に触れていくヒューマンドラマ。象子が30歳の誕生日を迎えたところで、物語は終着点へとたどり着きました。

    ドラマ『ミッドナイトタクシー』絶賛ロス中のライターが語る“兵藤るり脚本”の魅力。中村蒼“八雲”は今期1のメロ男子!_img0

    『ミッドナイトタクシー』1話15分・全32話 NHKオンデマンド、Prime Videoにて配信中。

    本作の脚本を担当したのは、昨年の向田邦子賞を史上最年少で受賞した兵藤るりさん。彼女は、同じく夜ドラ枠で放送されていた『わたしの一番最悪なともだち』(2023年・NHK総合)でも脚本を手がけています。兵藤さんの台詞は、いつも瑞々しい。ハッと心に残るものが多く、「ああ、この登場人物たちは、ちゃんと生きているんだな」と思わされるんです。

    リアルな会話を描こうとして、意識するからか、かえってドラマっぽい会話になっているな……と感じる脚本もあります。でも、兵藤さんが紡ぐ台詞は、リアルだけどリアルさを押し付けてこない。ただ、そこにいる人が自然と口にした言葉のように響くんです。

     

    毒キノコと普通のキノコって、どこで分かれるの?


    とくに心に残った台詞は、第30話。親を殺害するために毒キノコを探す兄妹を乗せた時の、象子の言葉です。

    「毒キノコと普通のキノコって、どこで分かれたんでしょうね。もともとは普通のキノコだったけど、毒を持つようになったのか。それとも、もともと毒を持ってたけど、必要なくなって普通のキノコになったのか」

    これは、ちまたでよく使われている“毒親”という言葉とも重なって聞こえました。この兄妹、そして象子の親も、子どもを苦しめているという点では、毒親の部類に入る。ただ、最初から毒を持っている親は存在しません。ならば、どこで枝分かれしてしまうのか––––––。

    そして、象子は「だいたい、食べて身体が拒絶しないと毒だと気づかないっていうのも、なんか不思議っていうか……」と続けます。この台詞は、さまざまな解釈ができると思います。親視点でみるならば、実際に親になってみないと、毒を持っているかどうかは分からない、とか。子ども視点でみるならば、育てられている側は、身体が拒絶するほどにならないと、苦しみの原因が自分の親であることに気づけない、とか。

     

    狙っているのかは分かりませんが、兵藤さんが紡ぐ台詞からは、このようにさまざまな解釈が生まれるんです。だからこそ、深みのある曲を聴いたあとのように、物語が終わったあともふとした瞬間に台詞の意味を考えてしまうのかもしれません。

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