3

「釣りバカ日誌〜新入社員 浜崎伝助」(テレビ東京系)で共演した西田敏行さんからコメディエンヌとしてお墨付きをもらい、シリアスな役どころからコメディセンスを発揮したユニークなキャラまで幅広く演じている広瀬アリスさん。連続テレビ小説「わろてんか」(NHK)、主演映画「巫女っちゃけん。」(グ・スーヨン監督)、「探偵が早すぎる」(日本テレビ系)など話題作に次々に出演。10月2日(金)に主演映画「沖晴くんの涙を殺して」(矢崎仁司監督)の全国公開が控えている。(この記事は全3回の中編。前編は記事下のリンクからご覧になれます)
■制服を着て学園ドラマに出たかった

私と同世代の役者さんたちって、(学校の)制服を着て恋愛要素もある学園ものに出演されている方が多くて。私もそういう王道にすごく憧れていたんですけど、その頃私は『釣りバカ日誌〜』と朝ドラをやっていますという感じで。
何か思い描いていた芸能生活とは正直違っていました。私も学園ものをやりたかったし、恋愛もののヒロインになりたかったんです(笑)。制服を着て恋愛映画がめちゃめちゃやりたかった。キラキラしたかったんです(笑)。
でも、『釣りバカ日誌〜』で西田さんにコメディエンヌの素養があると言っていただけて、それが今、強みになっているので、振り返ると、本当に贅沢(ぜいたく)なお仕事をずっとさせてもらっているなあって思います。
現場で一番年下みたいな中で、先輩方のめちゃめちゃすごい姿を間近で見ることができて、20代は本当に幸せだったなって。コメディが強みみたいなものになったのは、西田さんからコメディエンヌと言っていただいたおかげで、その後の朝ドラに繋(つな)がるので本当に良かったと思っています」
2017年、連続テレビ小説「わろてんか」(NHK)に出演。このドラマは、吉本興業の創業者吉本せいさんがモデル。明治後期から第二次世界大戦終了直後の大阪を舞台に、寄席経営に挑む姿を描く。
広瀬さんは、ヒロイン・てん(葵わかな)の夫、藤吉(松坂桃李)の芸人仲間で、藤吉に思いを寄せるリリコ役。コメディセンスを発揮し、演技の幅の広さが高く評価され話題に。
「『わろてんか』はヒロインオーディションを受けて落ちたんですけど、リリコ役で出ることになって。『釣りバカ日誌〜』と『わろてんか』に関しては、今でも芸人さんから『すごい』って言っていただくことがあって、それは本当にありがたいです」
――リリコさんは、娘義太夫から映画女優に転身、そして四郎(松尾諭)と夫婦漫才、さまざまな顔を持つ印象的なキャラでしたね
「そうですね。いろいろな顔を見せる役どころだったので、たくさん覚えることがあって大変でした。関西弁の役も初めてだったので苦労しました。
印象的だったのは奇抜な衣装と髪型。最初は着物に浴衣っぽいショートパンツを合わせた姿で、遠くから見ても一目でリリコと分かるスタイルでした。衣装がどんどん変わっていく、アップグレードしていくようになったので、めちゃめちゃ楽しかったです。
(四郎と)漫才コンビを組んでからは派手なワンピースを着るようになって。ウィッグもどんどん変化して目まぐるしく外見を変えていくのが楽しくて、ワクワクしながらイメチェンしていました(笑)」
――義太夫節、映画女優、歌、漫才などいろいろあって大変だったでしょうね
「そうなんです。漫才は、1個だと聞いていたのですが、3、4個やったんじゃないかな。結局そのネタの打ち合わせも練習も全部やらなきゃいけなかったので、本来は男女別々だったメイク室を松尾さんと一緒にしてもらって、隣でメイクしながらずっと練習したりしていました。
関西弁にも苦労しました。『それじゃあ癖がありすぎて違う』と言われたり、まずは時代をどこに合わせるのかというところから始まって。
見ている人が見やすいんだったら、現代のイントネーションなんじゃないかみたいな感じになって、そこから一文字ずつアクセントを自分で書いてというところからなんです、私の作業は。全部自分で書いて確認して慣れていくしかないので。
それで何となくできたら、読みながら音合わせをして動画を撮ってもらって、それで覚えるみたいな感じで、ずっと聞きながら練習していました」
――テンポが良くて面白かったですよね。リリコさんが出てくると、今度は何をやってくれるんだろうって楽しみでした
「芸人さんの役だとある程度自由が利くので面白かったです。関西弁は口に出していると馴染んでくるんです。それも踏まえてアドリブをやってみても松尾さんは絶対に打ち返してくれるし、途中からこんな言葉選びが合っているのかわからなかったですけど、好き放題やらせてもらっていました(笑)」
――声に張りがあって通るので義太夫節も聞き心地が良かったです
「ありがとうございます。一番大変でした。あれは何だったんでしょう?いまだによくわかってないです。『今の良かったよ』って言われても、何回やってもわからなかった。難しいなあって悩みながらやっていました」
――凜々しくて画になっていると思いました。放送は毎日ご覧になっていたのですか?
「オンエアは、すべては見られなかったです。朝メイク中に流れているということはありましたけど、休みの時も大体東京に帰ってほかの仕事をしていたので見られませんでした。
朝ドラは、大阪で撮影だったので、東京から行く時も帰りも新幹線の時間もあるし、結構大変でした。例えば、1時スタートだと、朝5時か6時に起きて新幹線に乗らないと間に合わないので結構ハードだったんです」
――でも、朝ドラ出演はご家族も喜ばれたでしょうね
「すごく喜んでくれました。特におじいちゃん、おばあちゃん世代は朝ドラというと本当に楽しみにしてくれていました。地方に撮影で行ってもよく言われます。私にとって大きなステップアップになりました。正直これで流れが変わらなかったら、思い切ってやめようと思っていたので良かったです。
朝ドラに出たことで仕事が増えて、自分のコンプレックスみたいなものを受け入れられるようになったというか、自分を認めてあげられるようになりましたし、多分自信がついたんだと思います」
■上海国際映画祭に参加!初の海外映画祭は…

2018年、映画「食べる女」(生野慈朗監督)に出演。この作品は、「食べる」と「性」をテーマに年齢も職業も性格も違う8人の女たちの日常を描く群像劇。
料理をこよなく愛する雑文筆家のトン子こと餅月敦子(小泉今日子)の家には、恋や人生に迷える女たちが夜な夜な集まってくる。トン子を担当する編集者で男を寄せつけないドドこと小麦田圭子(沢尻エリカ)、ドドの飲み仲間であるドラマ制作会社の白子多実子(前田敦子)、求められると断れない古着屋店員の本津あかり(広瀬アリス)、いけない魅力を振りまくごはんやの女将・鴨舌美冬(鈴木京香)ら、年齢も職業も価値観もバラバラだったが…。
「私は基本皆さんにあまりお会いしてなくて、お店に行った時に何人か会うぐらい。男の人と消えちゃっていなくなるし(笑)。だから舞台挨拶で皆さんと会えた時は嬉(うれ)しかったです」
――広瀬さんは、この作品で第21回上海国際映画祭に参加されましたが、いかがでした?
「初めて海外の映画祭に行ったのですが、体調を崩してしまって。行って崩したんじゃなくて、体調を崩した状態で行ったので、着いた日は1日ゆっくりさせてもらって。その次の日のお昼ぐらいから取材が入っていて、舞台挨拶もあったんですけど、海外の映画好きの人って結構コアな見方をするんだと思ってめちゃめちゃ楽しかった。
『あのシーンの現場はどうだったんですか?』って質問されたりして、作品を純粋に見てくれているんだ、映画はこうやってみんなで楽しめるんだなって嬉しくなりました。海外の映画祭は、自分が出ている映画を世界の人に伝えるいい機会なので、貴重な経験でした」
2018年、「探偵が早すぎる」(日本テレビ系)に滝藤賢一さんとW主演。このドラマは、事件を未然に防ぐ探偵・千曲川光(滝藤賢一)が、父親の遺産5兆円を突如相続することになり、親族から命を狙われることになった女子大生・十川一華(広瀬アリス)を守る様を描いたもの。
「滝藤さんとは初共演でしたけど、とてもフレンドリーな方で楽しかったです。コメディ要素がいっぱいあって、表情も中身もコロコロ変わっていくのが面白かった。20代は本当にいろんな役をやらせていただいて、役の幅も広がった感じがします」
■巫女さん姿で悪態ついて走って暴れて

2018年、映画「巫女っちゃけん。」(グ・スーヨン監督)に主演。この作品は、将来の夢や希望を持たないアルバイト巫女(みこ)の主人公が、神社に現れたひとりの少年と出会い、成長していく様を描いたもの。
広瀬さん演じる主人公・しわすは、幼い頃に母親(飯島直子)が家を出て行ったことが原因で何かと父(リリー・フランキー)に反発し、悪態ばかりつきながら、父が宮司をしている神社で巫女のバイトをしている。
就職が決まれば巫女は辞めるつもりだが、やりたいことや夢があるわけでもない。ある日の夜、社殿に隠れていた5歳の少年・健太(山口太幹)を見つける。健太は一切口をきかない。数日後、母親が迎えにくるが、殴られてあざをつくった健太が再び神社に戻ってきて…という展開。
広瀬さんは、可愛らしいルックスに似合わない態度で口も悪い主人公を熱演。いやいやながら実家の神社を手伝っていたしわすが、健太との出会いによって成長していく様を繊細にかつ大胆に体現。
撮影の1週間前から福岡県福津市の宮地嶽神社に入り、舞や所作を教えてもらい、巫女さんの生活を体験させてもらったという。
「由緒ある神社で所作などを教えていただいて、その頃は自分でちゃんと巫女さんの格好もできたんですけど、さすがに今はもう覚えてないです」
――ご自身でご覧になって巫女さんの姿はいかがでした?
「顔が濃いって思いました(笑)。結構あの姿で走ったりしていたので、着崩れちゃって。ちゃんと着られていたのかどうかわからないですけど」
――主演というプレッシャーはありました?
「昔は主演のプレッシャーがありましたけど、今は自分のことを主演だと思ってやっていないので、あまり感じてないです。私は性格的に引っ張っていくようなタイプじゃないので、
みんなで一緒に作品を作っているという意識です。
監督から指示があった時に、『了解です、1回やってみます』ってやってみて、どうだったのか話し合うという感じで。こういう捉え方あるんだという引き出しにもなる。
あくまでも自分はそういうスタンスでやっているというだけなので、一概に正解だとか、間違っているみたいなものは全くない。『正解ってないのが正解だよね。みんなでやってみよう』みたいな感じです」
2019年には、「アナザースカイII」(日本テレビ系)でMCに初挑戦。大河ドラマ「どうする家康」(NHK)、「366日」(フジテレビ系)、「全領域異常解決室」(フジテレビ系)など話題作出演が続く。次回は撮影エピソード、10月2日(金)に公開される主演映画「沖晴くんの涙を殺して」も紹介。(津島令子)
ヘアメイク:会川敦子
スタイリスト:椎名倉平
衣装提供 リブニット:LITTLE SUZIE(リトルスージー)
デニム:Japan Blue Jeans(ジャパン ブルー ジーンズ)
