12月には『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』の公開を控え、いま再び大きな注目を集めるMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)。大一番へ向けた重要な1作として『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』が、7月31日から公開中だ。
前作『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(21)で、世界中の人々の記憶から消えることを選んだピーター・パーカー(トム・ホランド)のその後を描く本作は、ハルクの登場などで話題を集めているが、なかでも注目したいのが、マーベルでも異色のヒーロー“パニッシャー”の存在だ。
家族を殺された哀しみを背負うアンチヒーロー、パニッシャー
髑髏が描かれた漆黒のスーツを身に纏い、悪を罰するヴィジランテのパニッシャーことフランク・キャッスルは、1974年の「アメイジング・スパイダーマン #129」でコミック初登場。身勝手な正義を振りかざす狂人として描かれると、その後、大人向けシリーズ「マーベルプレビュー」の主役に抜擢。マフィアに家族を殺され、復讐に燃える元海兵隊員というオリジンが与えられ、自身のコミックスが作られる存在となっていく。
妻子を殺されたFBI捜査官が復讐の鬼と化す(『パニッシャー』)[c] Lions Gate/courtesy Everett Collection
聖職者を目指していたが人々の罪を赦すことができずに神学校をドロップアウトし、軍人に。しかし、妻と2人の子どもを殺されてしまうと、特殊部隊時代のスキルを活かし犯罪が横行するニューヨークで私刑執行人として暗躍するように…というダークな設定を持つ。
ヒーローものとは思えないウルトラバイオレンスが炸裂した(『パニッシャー:ウォー・ゾーン』)[c]Lions Gate/Courtesy Everett Collection
彼を正統派ヒーローたちと隔てているのが、情け容赦のなさだ。キャラクターが生まれた70年代は映画のジャンルでもダークヒーローが一般化し始めた時期。パニッシャーも怒りを滾らせながら銃器で躊躇なく敵を撃ち殺すなど、一線を超えたバイオレンスを悪人にお見舞いする“絶対殺すマン”。コミックスではまだまだ新鮮だったヒーロー像は、正統派と対極の存在として輝きを放った。
三度にわたる映画化の歴史をプレイバック!
初のセルフタイトルコミックシリーズ「パニッシャー」が1986年からスタートすると、人気に乗じて映画化。1989年には80年代アクションスターの一人、ドルフ・ラングレン主演の『パニッシャー』が制作される。
【写真を見る】ドルフ・ラングレンら歴代名優が演じてきた最凶のアンチヒーローとは?(『パニッシャー(1989)』)[c] New World/courtesy Everett Collection
キャッスルが刑事だったことからマフィアの恨みを買い、家族を殺されてしまうという設定のマイナーチェンジを交えつつ、パニッシャーの復讐劇を描いている本作。ガンアクションはもちろん、マフィアの利権を狙う忍者のようなヤクザとの対決といったユニークな描写もあり、80年代アクションらしさも感じられる1作だ。
自主制作の短編まで作ってしまったトーマス・ジェーン(『パニッシャー』)[c] Lions Gate/courtesy Everett Collection
それから25年の時を経て再度映画化されたのが『パニッシャー』(04)。FBIの囮捜査によって暗黒街を牛耳るセイント(ジョン・トラヴォルタ)の次男が死亡すると、現場に出ていたFBI捜査官のキャッスル(トーマス・ジェーン)の家族が皆殺しにされ、復讐の鬼パニッシャーになっていくという内容だ。
人間臭さを押し出したテイストは不評を集めることとなったが、主演を務めたジェーンのパニッシャー愛は本物で、その後、2012年に自主制作の映画『The Punisher: Dirty Laundry』を発表。10分ほどの短編だが、パニッシャーらしさが凝縮された名作としてファンの間で好評を博した。
レイ・スティーヴンソンの強面とキャラがマッチしている(『パニッシャー:ウォー・ゾーン』)[c]Lions Gate/Courtesy Everett Collection
一方、このジェーンが抜けたことにより『パニッシャー』の続編計画は頓挫したが、2008年に『パニッシャー:ウォー・ゾーン』としてレイ・スティーヴンソン主演で三度目の実写化。これまでの作品のようなオリジンではなく、パニッシャーがビリー・ルソッティ(ドミニク・ウェスト)率いる巨大な犯罪組織に罰を与えた際に、囮捜査官を殺したことを知り、善悪の狭間で葛藤するという内容だ。
これまでの映画化のなかでも群を抜いて過激な暴力描写が繰り広げられ、生首が転がり、顔が破裂し、人が串刺しに…とやりたい放題。ゆうに100を超える死体の山が築き上げられる、アメコミヒーローとは思えない1作になった。
