実話を基にしたサスペンス作品

    2012年公開の映画『アルゴ』は、ベン・アフレックが監督と主演を兼ねた、実話を基にしたサスペンス作品である。舞台は1979年、イラン革命下のテヘラン。米国大使館が占拠され、多くの職員が人質となるなか、密かに大使館を脱出しカナダ大使公邸に匿われていた6人のアメリカ人職員がいた。彼らを救出すべく、CIAの工作専門家トニー・メンデスが考案したのが、実際には存在しないSF映画『アルゴ』の製作準備という架空のストーリーだった。メンデス自身がハリウッドのプロデューサーになりすまし、6人を映画のロケハン隊員に仕立てて国外へ脱出させるという、まさに「事実は小説より奇なり」を地で行く作戦である。緊張感のある人質脱出劇として高く評価されたこの作品は、第85回アカデミー賞で作品賞・脚色賞・編集賞を含む3部門を受賞した。

    実在のトニー・メンデスは、CIAの技術局に所属し、変装や偽造文書作りを専門とする扮装の達人だった。映画はメンデスの視点を軸に、テヘランでの緊迫した交渉、ワシントンでの政治的駆け引き、そしてハリウッドでの偽映画製作という3つの舞台を並行して描き、スリリングな点も高く評価されている。

    ベン・アフレック演じるメンデスは、劇中を通してハリウッドのプロデューサーらしい飄々としたたたずまいと、CIA工作員としての冷徹さを併せ持つ人物として描かれている。その腕元を飾っていたのが、ロレックスの『ディープシー Ref.116660』だ。無骨だが存在感のあるダイバーズウォッチは、危険と隣り合わせの潜入工作を担う男の相棒として、画面の中でも十分に説得力のある存在感を放っていた。

    演者が望んだ本物のディプシー

    もっとも、この時計の選択には時計愛好家の間でしばしば指摘される問題がある。物語の舞台は1979年から1980年にかけてのテヘランだが、この『ディープシー Ref.116660』がブランドから発表されたのは2008年のことだ。

    本来であれば、当時実在していた『シードゥエラー Ref.16660』のような旧型モデルを着用させるのが時代考証としては正しい。実際、衣装、小道具部門は撮影にあたって時代に即したヴィンテージロレックスのレプリカを用意していたとも伝えられているが、最終的にアフレック自身が撮影時に現行モデル『ディープシー』着用を望んだという話が残っている。

    スパイ映画は細部のリアリティが命でありながら、主演俳優のこだわりが、結果として小さな時代錯誤を生んだというわけだ。とはいえ、この一件は逆に、ロレックスという時計がいかに俳優自身の私物として選ばれるほどの信頼を集めているかを物語るエピソードにもなっている。実際、アフレックはプライベートでも複数のロレックスを愛用していることで知られており、劇中の1本もそうしたコレクションの延長線上にあったと見ることができる。

    ロレックス『ディープシー Ref.116660』は、2008年に発表されたダイバーズウォッチの中でも屈指の防水性能を誇るモデルである。ケース径は44mmとロレックスのラインナップの中でも大振りで、5.5mmという厚みのあるドーム型サファイアクリスタルと、グレード5チタン製の裏蓋を組み合わせることで、実に3900メートルという圧倒的な防水性能を実現したのである。

    この時計は2012年の映画公開当時のものではなく、現行モデルである。 ロレックス 『ディープシー』 自動巻き(Cal.3135)、オイスタースティールケース、44mm径、235万2900円

    極限状況でも気密性を保つケース

    その心臓部にあるのが、ロレックスが特許を取得した「リングロックシステム」だ。ケース中央の高強度リングと、サファイアクリスタル、チタン製の裏蓋という異なる素材同士が、水深が増して水圧が高まるほど互いを締めつけ合う構造になっており、極限状況でも気密性を保ち続ける。

    ムーブメントは自動巻きCal.3135を搭載し、パワーリザーブは約48時間。潜水服の上からでも装着できるよう、ブレスレットには可動式のエクステンションリンクも備えられている。ブラック文字盤は2008年から2018年まで、後に登場した「D-ブルー」文字盤は2014年から2018年まで生産され、いずれも生産終了後も中古市場で根強い人気を保ち続けている。

    『アルゴ』という映画そのものが、映画という虚構を使って人命を救うという逆説的な物語であることを考えれば、劇中の腕時計に多少の時代錯誤が紛れ込んでいたとしても、それもまたひとつの味わいとして受け止められるのかもしれない。派手な宝飾時計ではなく、極限の水圧にも耐えられるタフなツールウォッチを選んだという事実自体が、危険な任務に挑む工作員のキャラクター性を雄弁に物語っている。史実に忠実であろうとする映画の中に紛れ込んだ、俳優自身のこだわりという一点の虚構、それもまた、実話とエンターテインメントの間を巧みに行き来した、この作品らしいエピソードと言えるだろう。

     

    日本ロレックス TEL:0120-929-570

    https://www.rolex.com/ja

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