2026.07.30
2026年7月4日(土)、東京外国語大学プロメテウス・ホールにおいて、TUFS Cinema イラン映画『捨てられたものたちの詩人』の上映会を開催しました。
2026年の米・イスラエルとの戦争以来、イラン情勢が連日報じられる中、本作品は報道の枠組みからは見えてこない、国内で暮らす人々の等身大の視点からイラン社会を描いています。物語の主人公は、大学に進学し詩人を志しながらも不況の影響により清掃員として働く青年であり、寒々としたテヘランの街角でゴミを収集する日々のなか、彼は年老いた詩人や婚約者を失った一人の女性と出会います。本作では、社会に漂う閉塞感や人々の残酷な人生が映し出される一方で、それらと鮮やかな対照をなす主人公の無邪気さと希望が丁寧に掬い取られています。不器用ながらも実直に生き、女性を励まそうと詩を送り続ける彼の姿は、本作の大きな見どころとなっています。
上映後のトークセッションでは、本作を読み解く鍵となるイランの映画製作の現状や、社会におけるペルシア詩の役割について、専門家による解説が行われました。
まず、本学アジア・アフリカ言語文化研究所ジュニアフェローの村山木乃実氏が、現代イランの検閲制度とその制約のなかで生まれたイラン映画について解説し、京都大学白眉センター特定助教の木下実紀氏からは、口承文化が根付くイラン社会におけるペルシア詩の機能や、劇中で引用された詩の背景が紹介されました。その後、これらの知見をさらに深める形で、司会を務めた本学アジア・アフリカ言語文化研究所准教授の後藤絵美氏が、中東全体の歴史的背景やジェンダーの視点から補足を加え、上映会を通じて多角的な視点でイラン社会の理解を深める有意義な時間となりました。
学内外から331名が来場した今回の上映会は、多くのイラン出身の方々を交えた交流の場となるとともに、映画と専門家の解説を通して世界の現実や文化の厚みに触れる、TUFS Cinemaならではの貴重な機会となりました。
参照:

上映後トークの様子

後藤准教授によるイスラームの多様性やヒジャーブに関する解説

木下実紀氏による上映後トーク。イランのタクシー運転手とのペルシア詩にまつわるエピソードなど、味わい深いお話を伺いました。

質疑応答の様子
