女優・唐田えりかさんの連載『面影』第15回。
昨夏の訪問以来、ずっと再び訪れたいと願っていたという五島列島で、ダンサーの菅原小春さん、そのお姉さん、ご友人と海に入り、夕陽を眺めたという唐田さん。淡々と流れる時間のなかで、唐田さんが見つけたものを綴ります。
写真は五島列島へ向かう船のなかで、写真家・阿部裕介さんに撮り下ろしていただきました。ゆるやかに、でも着実に流れる五島の時間を感じながら、お楽しみください。
7月9日 13時19分
7月9日 13時19分。私は今、飛行機に乗っている。
9日間の休みをいただき、五島列島に向かっているのだ。今日は5日目のお休み。
7月4日の仕事終わりから、7月7日までは実家に帰省していた。
この実家帰省の最終日、私は中耳炎になってしまった。
実家には愛すべき猫がいるのだが、私は重度の猫アレルギーだ。だがアレルギーよりも、やはり猫に触れたいが勝ってしまう。鼻が詰まりに詰まり、思いっきりかんでみたら全て出るのではないかと思い、勢いよくかんだ瞬間、私の左耳は盛大な音とともに破裂した。
昨日耳鼻咽喉科に行ったら、当然、中耳炎と診断された。
どうしても明日飛行機に乗らなければなりません。と、あたかも仕事かのように担当医に伝えた。「日にちずらせないんですね? 本当は飛行機は避けてほしいですが……きっと離陸着陸の瞬間すごく痛いと思うし更に悪化すると思う」と言われた。
私は過去に、航空中耳炎という飛行機に乗った際に起こる中耳炎にもなった経歴がある。
なので飛行機と中耳炎がいかに結びついているか、どれだけ痛いか、分かっていた。
だがそれよりも私は、今回の旅を選択した。
だってこの旅を、数ヵ月も前から楽しみにしていたのだ!!
そして、今に至る。
離陸の瞬間、私はとても緊張していた。
更に破裂するのではないか。病院に処方された点鼻薬をさし、鼻腔を広げ、何度も耳抜きをし、何度も何度も唾をのみながら、離陸をした。
どうやら今ちゃんと空の上を安定して飛べている。唾を飲み続け、5分に1回耳抜きをしている。ふぅ、更なる破裂は避けられた。
この調子で着陸も乗り越えたい。
よーし。どんな旅になるか、楽しむぞ。
去年の夏に魅了された五島列島
今回の五島列島の旅は、こはねえ、こはねえのお姉さんの美里さん、こはねえを通じて友人になったヒューゴの3人と共にする。
私は去年の夏、この連載の撮影で訪れた五島列島にすっかり魅了されてしまった。
五島に住む人々の、丁寧な人の繋がりや豊かな心に、東京で無意識にせかせかと過ごしていた私は、本当に癒された。
そして撮影の際に仲良くしてもらった方たちは、まさかのこはねえの古くからのお友達だった。
そのお友達のまっちゃんに「こはねえがここ数年五島に来てくれてないから連れてきてほしい!」と言われた。
大好きなこはねえと、大好きな五島列島に旅。そんな幸せなことはない! 絶対にそれを実行すると決めた去年の夏。
ついに実行された。
2ヵ月前の5月にこの計画が決まってから、私はこの日までいくつかの作品を乗り越えた。
体力的にしんどいなと思うたびに、この旅があることが頑張れる理由になった。ご褒美が待ってるんだから、ちゃんと楽しめるように頑張ろう!と。
いつからか有難いことに作品がずっと続いていた。同時に作品を縫うこともある。
変に病むことはなかったけれど、疲労が蓄積され、作品を終える度に体調を崩した。
一度ひどく体調を崩したとき、自分の身体なのに他人の身体のように感じたことがあった。心に身体が追いついていなかった。

あの日々を乗り越えて、今そう思うようになった。よかった、乗り越えることができて。
7月9日 20時
夜の20時に五島列島・福江島に到着した。
家を出発してから、約9時間後。長い移動だった。長崎空港につき、バスに乗り、フェリーに乗った。まっちゃんが迎えに来てくれた。皆んなでまっちゃんおすすめの居酒屋とカラオケに行った。
