
村井國夫さん(C)日刊ゲンダイ
【死ぬまでにやりたいこれだけのこと】
村井國夫さん(81歳/俳優)
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時代劇から映画、舞台などあらゆるジャンルで活躍し、今年で俳優生活60年を迎えた村井國夫さん。夫人で女優の音無美紀子さんとのおしどりぶりでも知られる。死ぬまでにやってみたいことは意外にも「料理」だという。なぜ?
この年になるといろんな欲望がなくなってきますね。でも、一つだけと言われたら料理をやってみたい。今まで何もやっていないし、できないですからね。かみさんが全部やってくれるから。作ってみたいのはパスタかな。
かみさんが作ってくれるものは何でもおいしいですよ。結婚しようとなった時に、彼女が最初に習いに行ったのが料理でした。赤坂に今はなき龍村という料亭がありましてね。そこに。かつお節の一番だしの取り方から本格的に習って、それは今でも続けています。
薬膳料理やイタリア料理とかもね。風吹ジュンさんがいろんな人を集めて、先生を呼んでやっている料理教室にも行っています。そこには芸能界のそうそうたる女優さんもやってくるんです。韓国料理、中華料理、フレンチとかをみんなで集まって勉強している。
■食事はずっとかみさん任せ。台所の荒いものは続けているけど
僕は彼女が何でも作ってくれるから元気でいられると思っています。肉と魚と野菜が多めでバランスもいいですよ。ただね、彼女はいつもたくさん作る。それで怒ったりしてね(笑)。粗食、小食の勧めというのが昔からあるわけで、うちは多食だよっていつも言うんです。
そんな中でも僕が好きなのはイタリア料理。素材を生かしたものが好きですね。それでせめてパスタを作れるようになりたいと思っているわけですよ。一昨日出たのがトマトを使った冷製パスタのカッペリーニ。とてもおいしかったけど、どうやって作るのかな(笑)。
ただね、7年前に心筋梗塞で倒れてから、これまでやってくれた彼女のことを考え、心を入れ替えて、台所の洗い物は僕が全部やるようにしています。作ってもらっているだけでもありがたいのに、彼女はお芝居の仕事も多い。体のことを気遣ってやらないといけないからね。友だちが来た時にそんな僕を見てビックリしています。台所に立つと「國夫さん、どこへ行くの?」なんて言われる。「台所で洗い物」と言うと、「人は変わるもんだね」なんて冷やかされて。でも、これからも続けるつもりです。
行ってみたいのはイタリア料理が好きだからイタリアです。これまでに行ったのはミラノとかローマの北の方。だから南のナポリとか。できればベネチアも。南のアマルフィには奥さんの日本人オペラ歌手の友人がいる。クルーズも楽しみながらだったら最高じゃないですか。
もう一度かみさんを連れて行きたいのはチェ・ゲバラの仕事で出かけたキューバです。行くにはメキシコを経由して、飛行機の関係で1泊しなきゃいけない。日数がかかるのがね。それに今は国情的にも入りにくいのはあるけど。
食べ物は卵料理とか肉料理とか手が込んでいるものはなくて、大したことないけど、葉巻が好きなのでそこが魅力です。心臓で倒れて吸っちゃいけないと言われて葉巻はやめましたけど。
中南米やキューバの音楽も好きです。レストランに入るとギターを弾く人が必ず2、3人いて歌ってくれる。それが素晴らしくよかった。ラム酒もあるし、観光するのがとても楽しい国です。
国内は芝居の旅でほとんど行きました。旅公演の時にチラッといろんな場所を見て回った。思い出すのは瀬戸内の鞆の浦かな。福山(広島)の瀬戸内海の半島の先端にある街です。宮崎駿監督の「崖の上のポニョ」の舞台にもなりました。
10年くらい前、旅の途中で休みがあったので足を延ばしてみました。古い町並みが昔のまま残っていて静か。階段のある海岸の港、常夜灯がともる風情とかがそのまま残っている。食もまた素晴らしいです。
■仲間がだんだん減って寂しい
最近感じるのは仲間が少なくなったこと。寂しいですね。僕は俳優座養成所の15期生。「花の15期生」なんて言われ、ミーハーなのが多かったけど(笑)、みんな活躍した仲間たちです。夏八木勲、地井武男、高橋長英、小野武彦、前田吟、高島彩のお父さんの竜崎勝に浜畑賢吉、津坂匡章(秋野太作)……。彩さんにフジテレビで会った時、こんなに立派になってと思ったら涙が出ました。
原田芳雄さんは14期だけど、いろいろあって15期に降りてきた。でも養成所では飛び抜けた存在でした。特別な人。お葬式に行ってお顔を見たら痩せててね、本当に悲しかった。
女性は栗原小巻を筆頭に1期遅れて卒業した太地喜和子もいた。喜和子も優秀だったね。
■俳優座養成所「花の15期生」、もう一度みんなで集まりたい」
5年以上前かな、最後にみんなで集まろうというので、その時は14期と15期で合同で集まったんです。14期には吉田日出子とか串田和美、佐藤信とかいて。あの時は楽しかったですね。
今も小野、高橋とはしょっちゅう会います。小野は近所に住んでいるから。あいつは酔っぱらいでね。もう一杯って言ってから6杯か7杯飲む。うちに来たら帰らないんです(笑)。
そういう時にみんなでもう一回会いたいななんて話になります。もう一回集まりたいですね。
7月31日と8月1日の2日間「私の下町−母の写真−」という朗読劇をやります。原作は福田善之さんです。養成所を卒業して「上海バンスキング」を書いた斎藤憐という劇作家がいますが、斎藤さんはその弟子。斎藤さんには僕もかわいがってもらった。何か因縁を感じます。福田さんが昭和をたくましく生きた母親の思い出をお書きになっていて、それを日本橋の方々が応援してくれて下町情緒が残る場所、舞台でやる。そこでやるからこそ意味がある朗読劇だと思います。 ▽朗読劇「私の下町−母の写真−」(原作・福田善之、演出・大西一郎、出演・春風ひとみ、村井國夫ほか、日本橋社会教育会館8階ホール)
(聞き手=峯田淳)
