京都国立博物館(京都市東山区)で、京都国立博物館開館130周年記念 特別展「大狩野派」が2027年4月20日から開催されます。
2027年、京都国立博物館は開館130周年を迎えます。本展は、その節目となる年に開催される、日本最大の絵師集団「狩野派」の全容に迫る半世紀ぶりの大回顧展です。
本展では、特別展2本分の内容を「室町~桃山編」と「江戸~明治編」の2部で構成。1週間の休止日を挟み、全作品総展示替を行って、国宝、重要文化財、新発見、初公開作品、海外里帰り作品など、約150件の代表作が一挙集結。狩野派の壮大な歴史と多彩な絵師たちが織りなす400年の軌跡が余すところなく紹介されます。
郭子儀・花鳥図 狩野栄信筆 江戸時代(19世紀)
◇記者発表会速報
京都国立博物館開館130周年記念 特別展「大狩野派」
会場:京都国立博物館 平成知新館(京都府京都市東山区茶屋町527)
会期:
第1部|室町~桃山編 2027年4月20日(火)~5月30日(日)
第2部|江戸~明治編 2027年6月8日(火)~7月19日(月・祝)
※展覧会休止日:27/5/31~6/7(展示入替のため)
※会期等は諸事情により変更する場合あり
※第1部、第2部で全作品の展示替を実施
(一部の作品は、第1部、第2部会期中にも展示替が行われます)
開館時間:午前9時~午後5時30分(毎週金曜日は午後8時まで)
※入館は各閉館の30分前まで
休館日:月曜日 ※ただし5月3日(月・祝)、7月19日(月・祝)は開館
観覧料:詳細は決定次第、展覧会公式サイト等で発表予定
アクセス:
京阪電鉄「七条駅」から徒歩約7分
JR・近鉄・地下鉄「京都駅」から市バスで約10分「博物館三十三間堂前」下車すぐ
名神高速道路「京都東インター」または「京都南インター」から車で約20分
詳細は、展覧会公式サイトまたは京都国立博物館公式サイトまで。
本展の3つの注目ポイント
1 半世紀ぶりとなる「狩野派」の大回顧展
京都国立博物館ではこれまでに「室町時代の狩野派」(1996年)、「狩野永徳」(2007年)、「狩野山楽・山雪」(2013年)、「桃山時代の狩野派」(2015年)など、狩野派に光を当てた展覧会を数多く開催してきました。その実績をふまえ、開館130周年という節目の年に、狩野派400年の歴史をたどる大展覧会が開催されます。1979年に東京国立博物館で開催された「狩野派の絵画」展以来、約半世紀ぶりとなる狩野派大回顧展です。
2 国宝、重要文化財を含む約150件による空前の規模の特別展
室町時代から幕末・明治時代まで、常に時代の中心にあって絵筆をふるい続けた狩野派絵師たちの新発見、初公開、海外里帰り作品を含む代表作が一挙紹介されます。
3 会期を2部に分け、前後期で全作品総展示替を実施
400年にわたる狩野派の歴史を網羅するため、「室町~桃山編」と「江戸~明治編」の2部に分け、1週間かけて展示を一新します。特別展2本分のボリュームで、壮大な時代変遷と様式展開、綺羅星のごとき天才絵師たちによる個性の共演を見ることができます。(※会期中、一部の作品は別途展示替あり)
狩野派とは
室町時代から明治時代にかけて、常に画壇の枢軸として活躍し続けた絵画流派であり、日本の歴史上、最大の規模を誇る絵師集団です。血脈による世襲を基盤とした同族的紐帯によって強固な組織を作り上げ、流派様式の徹底と工房による集団制作を武器に膨大な需要に対応するのみならず、優れた政治的手腕を発揮して各時代の権力者の庇護を受け、幕末まで安定した勢力を保ちました。400年もの長きにわたって画壇に君臨し続けた巨大流派は、世界にも類を見ません。
【第1部 室町~桃山編】での展示構成および作品紹介
会期:2027年4月20日(火)~5月30日(日)
狩野正信まさのぶが室町幕府御用絵師となったことに端を発する狩野派は、その子元信の代になって漢画にやまと絵の様式も取り入れ、幅広い主題を手掛けました。さらに、多数の門人を擁した工房を主宰し、集団制作で膨大な需要に対応するのみならず、優れた政治的手腕を発揮して権力者たちの庇護を受け、激動の時代を潜り抜けます。第1部では始祖正信からはじまり、元信もとのぶ、永徳えいとくら室町~桃山期に活躍した絵師たちが紹介されます。
狩野正信(1434~1530)
狩野派の原点 室町幕府御用絵師
室町幕府8代将軍足利義政に取り立てられ、御用絵師となった狩野派の始祖。足利義政、義尚、日野富子らを顧客に持ち、彼らの要望で宋・元の中国絵画を手本にした作品や肖像画、仏画などを手がけました。従来の水墨画から抜けだした万人受けする明快な画風を創出し、狩野派の土台を築きました。
国宝 周茂叔愛蓮図 狩野正信筆 室町時代(15世紀) 福岡・九州国立博物館
正信の作品としては唯一の国宝であり、東山文化の絵画を代表する名品。蓮をこよなく愛した中国・北宋時代の儒学者・周茂叔しゅうもしゅく(1017-73)を描いています。図様の類似する中国絵画の模本の存在から、正信が足利将軍家所蔵の南宋院体画などに学んで制作したものと考えられます。
狩野元信(1477?~1559)
漢画×やまと絵で狩野派スタイルを確立
宋元の中国絵画を土台に、真・行・草の画体を確立。さらに、やまと絵の要素をも取り入れてレパートリーを拡大し、それを門弟たちに徹底的に学習させることで、質の安定した作品を大量生産する仕組みを作り上げました。また、始祖正信の人脈を拡大し、経営基盤を盤石にした狩野派随一の経営者と言えるでしょう。これにより狩野派は、他の追随を許さない一大流派組織への階段を駆け上がりました。
重要文化財 四季花鳥図屏風 狩野元信筆 天文19年(1550)頃 兵庫・白鶴美術館
奈良・興福寺の僧が元信に描かせた作品。漢画とやまと絵の双方の要素を取り入れた様式は、桃山期に隆盛を誇る金碧花鳥図の基盤となりました。この和漢融合こそは狩野派が大きく飛躍した要因であり、大仙院の「四季花鳥図」と双璧をなす元信の代表作です。
狩野永徳(1543~90)
織田信長、豊臣秀吉に愛された絵師
幼少期から祖父元信の薫陶を受けた天才絵師。元信が築き上げた組織体制のもとで、安土城・聚楽第・大坂城など数々の城郭や御殿に障壁画を揮毫。晩年は「恠恠奇奇かいかいきき」と評された鬼気迫る大画面方式を創出しました。時代の寵児となった永徳は、相次ぐ大規模な障壁画の制作依頼に追われ、48歳で急逝します。それらのほとんどは失われてしまいましたが、永徳が体現した桃山時代様式は一時代を画し、後世にも多大な影響を与えました。狩野派絵師中、最多となる4件の国宝指定作品があります。
国宝 洛中洛外図屏風 狩野永徳筆 永禄8年(1565) 山形・米沢市上杉博物館
永徳というと、豪快で力強い画風のイメージが先行しますが、若い頃は細やかな描写が得意であったと伝えられています。本作は、まさに後者の真骨頂と言えるでしょう。発注主は室町幕府13代将軍足利義輝と目されますが、その没後織田信長の手に渡り、信長から越後の上杉謙信に贈られました。画中には2,485人もの人々が活写されています。永徳23歳の作。
狩野内膳ないぜん(1570~1616)
豊臣家に仕えた風俗画の名手
戦国武将・荒木村重家臣の子として生まれるも、荒木家滅亡により流浪の末に狩野派に入門。絵師の道は本意でなかったようですが、画才に恵まれ、秀吉のお抱え絵師として豊臣家の繁栄を寿ぐような作品も制作しました。大坂夏の陣(1615年)で豊臣家が滅亡した翌年に、後を追うように内膳も没しています。
重要文化財 南蛮屏風 狩野内膳筆 桃山時代(16~17世紀) 兵庫・神戸市立博物館
内膳の落款がある南蛮屏風は5件の現存が知られていますが、本作はとりわけ優れた出来映えを示し、近世に数多く制作された南蛮屏風の中でも傑出した名品です。スペインやポルトガルとの交易の様子を、緻密な描写と色鮮やかな彩色で描き、栄華を極めた豊臣の世をいまに伝えています。
【第2部 江戸~明治編】での展示構成および作品紹介
会期:2027年6月8日(火)~7月19日(月・祝)
諸派並び立った江戸時代にあっても、狩野派は初学者の教育機関として機能し、また時には狩野派への反発が新たな表現を生む刺激となるなど、その存在意義は中~近世の絵画史全体を包摂するものであったと言っても過言ではありません。第2部では狩野探幽たんゆうにはじまる江戸狩野、京狩野の三雪、異色の狩野派絵師久隅守景くすみもりかげ・英一蝶はなぶさいっちょう、幕末から明治の動乱期を生きた河鍋暁斎かわなべきょうさい・狩野芳崖ほうがい・橋本雅邦はしもとがほうらの代表作を紹介。第1部、第2部を通じて狩野派が日本美術史上に果たした役割を検証します。
狩野探幽(1602~74)
桃山から江戸へ 新時代の狩野派様式を創出
豊臣から徳川へ時代が移りゆく中、永徳が創出した豪壮華麗な桃山時代様式から、探幽が打ち出した新機軸=瀟洒端麗な様式へ、狩野派も大転換を果たします。探幽は、幕府に仕える奥絵師・表絵師はもとより、各藩絵師にまで及ぶ江戸狩野絵師たちの総帥であり、明治時代には、岡倉天心(1863~1913)をして、「画壇の家康」と言わしめた最重要絵師です。
重要文化財 松に孔雀図壁貼付・襖 狩野探幽筆 寛永3年(1626) 京都市(元離宮二条城事務所)
寛永3年(1626)、後水尾天皇の二条城行幸にあたって、行幸御殿新築と二の丸御殿の大改修などが行われ、狩野派はその内部を飾る障壁画の制作を担います。現存1,000面を超える障壁画は、狩野一族の血縁に基づく序列に応じて割り振られ、若干25歳の探幽が一門を率いて完成させました。永徳の大画方式を土台にしつつも、余白を活かし、横へ横へと伸長する画面構成に、後の探幽様式の一端が垣間見られます。
八尾狐図 狩野探幽筆 寛永14年(1637) 京都国立博物館
三代将軍家光が、夢の中に出てきた狐を描かせた作品です。この狐は、家光が深く尊崇していた祖父家康の使いであったらしく、8本の尾をもつ不思議な姿をしていたといいます。夢から覚めた家光はこれを探幽に描かせ、江戸城内にあった紅葉山東照宮に納めたようです。探幽は、家光のいわば手となってその夢を視覚化したのでした。狩野派絵師と将軍家がいかに密接な関係にあったかをうかがい知ることができる貴重な作品です。2015年に発見され初公開された作品で、その後、京都国立博物館が令和5年度に購入しました。
狩野山雪さんせつ(1590~1651)
京狩野の異才
「世俗を離れ、俗人との接触を避け、ただ絵画にのみ没入することを好んだ」と伝えられる山雪。巨匠永徳が没した年に生を受けた山雪は、16歳で京狩野の祖山楽に師事。画才を認められ、山楽の娘婿として京狩野家第二代となります。儒学者と交流を持ち、古典を研究するなど学究肌であった山雪が生み出す幾何学的な造形美は、時代様式に基づきながらも、他の追随を許さない独自の造形感覚を示しています。
重要文化財 雪汀水禽図屏風 狩野山雪筆 江戸時代(17世紀)
垂直に切り立つ岩、水平方向へと伸びる松の枝、ジグザグに飛翔する千鳥の群れなど、幾何学的な造形美が際立ちます。画面は金箔・金砂子・野毛などで装飾され、うねる波は絵具を盛り上げて立体的に表されています。工芸品とも呼び得るような華やかな作品で、山雪の真骨頂を示す代表作であると同時に、近世の花鳥画の極北に位置する名品です。
英一蝶(1652~1724)
当世風俗を活写した粋人
伊勢亀山藩の侍医の子として京都に生まれ、幼い頃に江戸に出て狩野安信やすのぶに入門、やがて風俗画家として江戸の都市風俗を活写するようになりました。松尾芭蕉に師事して俳諧を嗜むなど諸芸に通じ、吉原の幇間(太鼓持ち)として大名などに重用されますが、幕府に睨まれ47歳の時に三宅島に配流されてしまいます。流人生活の間も絵画の制作を続け、11年後に赦免されて江戸へ戻ると、ますます精力的に制作活動を展開しました。そんな波乱万丈の人生も、一蝶の魅力と言えるでしょう。
重要文化財 布晒舞図 英一蝶筆 江戸時代(17世紀) 埼玉・遠山記念館
風俗画の名手として江戸っ子から愛された一蝶の代表作。長い晒を巧みに操りながら舞う役者の姿が、躍動感豊かに表現されています。興に乗って思わず膝を乗り出すような囃子の様子も臨場感に富み、小画面ながら一蝶の人物画の魅力が凝縮されています。
狩野栄信ながのぶ(1775~1828)
新たな狩野派様式を確立
狩野派の奥絵師四家のうち、木挽町こびきちょう狩野家の第8代。新旧のさまざまな絵画を幅広く学習することで、江戸狩野の様式に新風を吹き込みました。その新様式は次世代へと継承され、江戸時代後期の狩野派様式の基盤となります。卓越した画技と持ち前の器用さで、木挽町狩野家の黄金時代を築いた最重要画家の一人です。
郭子儀・花鳥図 狩野栄信筆 江戸時代(19世紀)
唐の武将郭子儀かくしぎは安史の乱で功を成し、子宝にも恵まれたことから、長寿や子孫繁栄を寓意する吉祥画題として好まれました。鮮烈な群青の背景表現は、当時輸入されて間もない清時代の絵画から取り入れたと考えられています。一橋徳川家に伝来した、栄信の代表作です。
橋本雅邦(1835~1908)
近代日本画への架け橋
木挽町狩野家第10代の狩野雅信門下で、狩野芳崖と同門。幕末維新の混乱期には困窮しますが、岡倉天心とフェノロサに見出され、日本美術院の設立にも加わって日本画の革新運動を進めました。東京美術学校が開校するとその教授となり、横山大観・下村観山ら後進の育成に尽力し、狩野派のDNAを近代へと繋ぐ役割を果たしました。
重要文化財 龍虎図屏風 橋本雅邦筆 明治28年(1895) 東京・静嘉堂文庫美術館(公財)静嘉堂/DNPartcom
水墨画の伝統的な主題である龍虎図を、狩野派の画法を基礎に置きつつ、西洋画から学んだ奥行き表現や陰影表現などを取り入れることで、新たな主題として再生させました。第4回内国勧業博覧会に出品するも、そのあまりの斬新さに当時は評価を得られず受賞を逃しますが、昭和30年(1955)、明治期における日本画革新の記念碑的作品として、近代絵画で初めて重要文化財に指定されました。
教科書や美術全集で誰もが一度は目にしたことのある名作が一堂に会する本展は、まさに日本美術史の真髄に触れることができる空前絶後の機会です。会期は「室町~桃山編」と「江戸~明治編」の2部に分かれ、全作品が総入れ替え。特別展2本分の大規模展となっています。まさに一期一会のプレミア展で、時代を創出したレジェンド絵師たちの競演を通して、ぜひ日本の美の系譜を肌で感じてみてはいかがでしょうか。(美術展ナビ)
