
音楽活動を再始動させた古舘佑太郎(撮影・塩野 遥寿)
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俳優の古舘佑太郎(35)が、ソロミュージシャンとして10年ぶりとなるアルバム「TAYUTAU」をリリースし、注目を集めている。Netflixドラマ「ソウルメイト」への出演など俳優業を精力的にこなす傍ら、なぜ今、音楽活動を再び本格始動させたのか。2度のバンド解散を経験し、「音楽はやめようと思っていた」と語る彼が、心境の変化と未来への展望を明かした。
新アルバム「TAYUTAU」は、CD限定のボーナストラックを含む全11曲の作詞、作曲、編曲をすべて古舘自身が担当した。「たとえ1枚も売れなくても、自分だけはそれを愛せる作品にしたかった」と語る通り、そこには混じりけのない情熱が注がれている。持ち前の伸びやかな歌声で、アップテンポからバラードまでを歌い上げる今作。聴いた人からは「心にしみた」「励まされた」といった声が次々と上がっている。
その歌声と歌詞の裏には、もがき続けた日々があった。父親は日本を代表するフリーアナウンサー、古舘伊知郎。10代の頃から「お前は音楽の才能がない」と言われ続け、父子の関係は複雑だった。「“2世”って言われることを強烈に拒絶していたのに結局バンドがうまくいかなくて、情けなくて。素直になれない自分がいた」
19歳で「The SALOVERS」としてメジャーデビューを果たした際、実力で認められたことに喜びを感じたが、23歳で解散。やり場のない悔しさといらだちを抱える日々が続いた。
だが、25歳で結成したバンド「THE 2」の活動中、転機が訪れる。NHK連続テレビ小説「ひよっこ」への出演を機に、俳優業が軌道に乗り始めた。「音楽と俳優業を両立するような形になって、若気の至りで尖っていたところをやめて、もうちょっと視野を広げていきたいと思うようになりました」。
時を同じくして、父・伊知郎が「報道ステーション」のメインキャスターを降板。「肩の荷が下りたのか、気持ち悪いくらい丸くなった」という父との会話も増えていった。「今では気持ち悪いくらい仲良いです。お互い褒め合ったりとかして(笑い)」。3年前には父が初めてライブを訪れ、その後「音楽のことはわからないけど、MCだけは絶対に負けない」という愛のあるメールが届いた。
2024年、「THE 2」が解散。一度は音楽を辞めようと考えたが、仲間の勧めで2ヶ月間のアジア一人旅に出る。自分自身の弱さと向き合う中で、一つの答えにたどり着いた。「すごく自己対話をした。自分の弱さや情けなさと向き合いながら。どうせ音楽をやめるにしても“何かやり残したことないか”と思った時に、自分自身の音楽を作ることをまだしていないなと。帰ったら絶対やろうと思った」帰国後、2年の準備期間を経て完成した「TAYUTAU」はインディーズでの制作だ。「背伸びして着飾った作品で愛されても意味がない。“売れたい”という思いから解放されて作った」。
「売れたい」という執着を手放して生まれた作品は、結果として多くの人をひきつけている。同作を引っ提げて開催した京都、名古屋での単独公演は完売。20、21日には東京・下北沢の演家-SHITORAYA-東京で追加公演を開催する。年内にはチケット代を徴収せずに行う“投げ銭スタイル”の公演を47都道府県で行うツアーを開催予定だ。「アルバムが完成してからは、やっぱり多くの人に届いてほしいと思っています。今はどうすれば一人でも多くの人に聞いてもらえるか、日々考えています」。未来を語る表情は晴れやかだった。
◇古舘 佑太郎(ふるたち・ゆうたろう)1991年(平3)4月5日生まれ、東京都出身の35歳。2008年にバンド「The SALOVERS」を結成し、12年にメジャーデビュー。14年に映画「日々ロック」で俳優デビューした。
