「うちの子にも、もっと本を読んでほしい――リビングに本棚を置き、課題図書を揃え、「本を読みなさい」と声をかける。だが、それだけで本好きな子が育つわけではない。通信教育「進研ゼミ」の「赤ペン先生」として20年以上にわたり、のべ8万枚以上の答案に向き合ってきた佐村俊恵さんは「本好きの子に育つには『最初のきっかけ』が重要」と指摘する。佐村さんの新刊『57年間、9200万人の子どもを励まし続けた 赤ペン先生のほめ方』には、歴代の赤ペン先生が培ってきた、子どもの心に火をつける声かけの極意が詰まった一冊だ。ぜひ参考にしてほしい。

    (構成/藤田美菜子、ダイヤモンド社書籍編集局)


    「本好きな子」が育つ家と、育たない家の決定的な違いとは?Photo: Adobe Stock



    自分から本好きになる子は滅多にいない

    ――本好きな子と、そうでない子の違いはどこから生まれると思いますか?


    佐村俊恵氏(以下、佐村) 私自身、読み聞かせの活動を長くさせていただいているのですが、その経験から強く感じるのは、「最初のきっかけ」がとても大切だということです。


    考えてみると当たり前なのですが、幼い子が自分で本を選んで読むわけではないですよね。お母さんやお父さんが読んであげて、それがだんだん習慣になっていく。読んでもらった本が面白かったから、もっと読みたくなる――そのサイクルができるかどうかが、最初の分かれ道だと思います。


    ですから、「うちの子は本を読まなくて……」というご相談を受けると、私はまず「読んであげる時間を作っていますか?」とお聞きしたくなるのです。最初の橋渡しは、やはり大人がしてあげる必要があると思いますね。


    ――とはいえ、毎日読み聞かせをするのは、忙しい親にはなかなか難しいですよね。


    佐村 毎日でなくてもいいんですよ。それから、おうちの中だけで何とかしようと思わなくても大丈夫です。


    私がいま伺っている小学校の子どもたちを見ていると、みんな本当に本が大好きなんです。その学校では、朝の会の前の10分から15分、みんなで本を読む時間をきちんと作っているんですね。だから、クラスのコミュニケーションの中に、自然と本の話題が出てくる。流行りのゲームと同じくらい当たり前に、本がちゃんと日常の一部になっているんです。低学年の子が、私のところに『かいけつゾロリ』を持ってきて「先生、これ面白いよ」と教えてくれるくらい。この空気感が、すごく大事だなと感じます。



    夏休みのお悩み「読書感想文」こそ、格好のきっかけ

    ――家庭でも、そういう「本が身近にある空気」をつくる工夫が大事?


    佐村 親子で一緒に本を楽しむ習慣があると素敵ですよね。


    そのきっかけとして、「読書感想文の宿題」を活用するのはよい手だと思います。「進研ゼミ」の公式インスタグラムでも発信したことがあるのですが、読書感想文は親子で一緒に取り組むと、子どもの読書への意欲もすごく高まるんですよ。


    「どの本にする? ママはこの本が面白そうだと思うけど、どう?」などと、一緒に本を選ぶのもいいですし、たとえば虫が好きなお子さんなら「昆虫を主人公にしたお話もあるよ」といった具合に、子どもの興味関心に寄せて本をすすめてあげると、読書へのハードルがぐんと下がります。


    そのうえで、読みながら「どこがドキドキした?」「この場面、どう思った? パパはハラハラしたよ」などとお互いに感想を言い合って、お子さんが感じたことを自分で文章にしていく……というやり方がおすすめです。


    子どもの感想文って、放っておくとどうしても「あらすじ」になっちゃうじゃないですか。「こういうお話でした。面白かったです」で終わってしまう。そうじゃなくて、場面場面で「ここはどう思った?」と、親が一緒に読みながらフォローしてあげると、読書の楽しみ方そのものが身につくと思います。



    本は「考える力」と「表現する力」を一緒に育てる

    ――そもそも本を読むことは、子どもにどんな力を与えるのでしょうか?


    佐村 本を読むということは、単に文字を追うだけではないんですよね。読んでいると場面がありありと浮かんでくるような、イメージを広げる力と一緒に育っていくものだと思います。集中力も必要ですし、本を通して「こんなこともあるよね」「いろんな考え方があるよね」と思考に落とし込めるお子さんは、知識だけでなく、自分で考える力、それを表現していく力もつけていかれるのかなと思います。


    もちろん、想像力があるから本を読むのか、本を読むから想像力がつくのか、というのはどちらもあるんですよ。ただ少なくとも、誰かに読んでもらったことをきっかけに読書の環境が整っていくと、そこから世界が広がっていくのは確かだな、と感じています。


    ですから、もしお子さんが「最近こんな本を読んだよ」と話してくれたら、ぜひ「どんな本だったの? 教えて!」と聞いてあげてください。そこから「もっと読みたい!」という気持ちがふくらんでいくはずです。

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